大学院に進学するときの「奨学金制度」活用法

2012(平成24)年3月に卒業予定の大学生の就職内定率は59.9%(厚生労働省発表、2011(同23)年10月1日現在)で、依然として大変厳しい状況です。
そのような状況のなか、理科系学部の学生の大学院進学者に加えて、薬剤師を目指す薬学部は6年制となり、法曹界を目指す法学部生は法科大学院へ進学、そして就職希望から大学院進学へ方向転換する学生など、大学が4年間で終わらない学生が増加しています。保護者の収入が伸びないなかで、大学4年間の教育費は準備したものの予定外の大学院の費用まで出せないという家庭は多いのではないでしょうか。
そこで、今回は大学院進学者のための奨学金制度の活用について考えてみたいと思います。

代表的な独立行政法人日本学生支援機構の「奨学金制度」は、大学院進学者も対象としていて、学部生と同様「第一種奨学金(無利子)」と「第二種奨学金(有利子)」があります。
いくつか学部生の奨学金制度とは異なる点があるので挙げてみます。

第一には、「家計基準が本人の収入である」点。
学部生の家計基準は「家計支持者(父母、父母がいない場合は代わって家計を支えている人)の収入金額」ですが、大学院生の場合は、「本人の収入金額合計(含配偶者の収入。ただし定職収入がある場合に限る)」。つまり学部生の奨学金は保護者の収入金額合計によって採用が左右されていたのに対して、大学院生は、本人の収入が基準となります。具体的には第一種で年収374万円、第二種で年収536万円。一旦社会人になってから大学院に進学する人は別ですが、大学4年生から大学院進学を考えている場合は、ほぼ全員が家計基準をクリアできるでしょう。

第二の相違点は、「貸与月額が学部生の制度よりも多い」点。
学部生の奨学金制度では国公立・私立、自宅・自宅外などの区分に分かれていますが、大学院生の制度はその区別はなく、貸与月額は第一種では5万円または8万8,000円、第二種は5万円、8万円、10万円、13万円、15万円の中からの選択制(法科大学院は増額あり)です。いずれの種別でも、学部生の制度に比べて多額の貸与を受けることができます。
この二つの相違点から、日本学生支援機構の奨学金制度は、「大学院に進学する時点で保護者の手を離れる」ということを前提として設定されていると読み取ることができそうですね。
とはいえ、奨学金が将来返還しなければならない≪借金≫であることに変わりはなく、大学院を卒業したからといって、必ず就職できるとは限りません。

そこで、第三の相違点の「返還免除」の制度の活用を考えてみましょう。
卒業後教育の職に就いた場合の「奨学金返還特別免除」の制度は、現在在学中の大学院生に対しても廃止されています。
代わりに創設されたのが、「特に優れた業績による返還免除」の制度。
対象は「第一種」の奨学金の貸与を受けた大学院生です。専攻する分野で顕著な成果やめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価することになっています。2010(平成22)年度の実績では、修士課程の学生で第一種の奨学金貸与終了者の約3割の学生が、全額または半額免除の認定を受けています。
まず第一種の奨学金の貸与を受け、大学院に進学して専攻分野について真剣に取り組めば、「返還免除」の認定を受けて≪借金≫を減額する道は開かれているのです。

一方、日本学生支援機構以外の奨学金についてはどうでしょうか。
各大学は近年、大学独自の奨学金制度を充実させている傾向にあります。特に私立大学は、少子化によって学生が減少するなか、優秀な学生を獲得する手段として奨学金制度を利用する傾向にあります。大学院に関しても同様の傾向が見られます。
民間企業が出資して財団を設立した奨学金制度もあります。経済環境が厳しいなかで奨学金制度の存続は難しいところですが、将来の日本経済の担い手への投資の一つと考えて、特に大学院生に対する募集はまだ多く存在しています。
大学独自の制度、民間の財団による制度、どちらも「給付型」の奨学金制度が主流なのは、学生・保護者にとって魅力的です。どちらも定員が限られてはいますが、まずこの制度を利用できるか検討するのがよいでしょう。

日本学生支援機構の制度も含めて、これらの奨学金制度は、進学予定の大学院をとおして応募することになります。募集時期は大変短い期間に設定されていることが多いので、今からきちんと情報を収集しておきましょう。


プロフィール


宮里惠子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー。生命保険をはじめ、教育費関連や住宅ローンについて雑誌・新聞・Webで執筆。地域に根をはるFPを目指して、横浜市北部エリアで活動している。若い世代に対する消費者教育の必要性を強く感じている。

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