エピソード記憶で効率的な学習を!!

身体を動かすことが記憶の定着を促進する

この時期、受験を控えたご家庭では、何かと落ち着かない日々を送られていることと思います。受験までの日数が少なくなってくると、少しでも多く勉強しようとして、机に座っている時間が長くなってしまいますね。しかし、座ったままで長時間勉強していると、集中力が切れてしまったり、ダラダラと惰性で勉強を続けてしまったりと、効率が悪くなってしまいます。そこで今回は、マンネリ化しがちな勉強に少し変化を加え、かつ学習効果を上げる勉強法をご紹介します。

最初に、人間の記憶についてお話しします。人間の記憶には『意味記憶』と『エピソード記憶』という大きく2つの種類があります。『意味記憶』というのは、覚えようとして知識を吸収すること、つまり、本を読んだりして得た知識のことです。一般的な勉強は、この『意味記憶』に相当します。『意味記憶』には、本人の「これを覚えよう」という意志が働いていることが特徴的です。
次に『エピソード記憶』ですが、これは≪体験したことを覚えている記憶≫のことで、特に覚えようという意識がなくても、自然に覚えている記憶のことです。たとえば、「小学校の運動会で、お母さんと交わした会話を覚えている」「昔、遊園地に行った時に、そこで初めて知り合って遊んだ友達と、どんな話をしたかを覚えている」というようなことは、覚えようとする意志がないにも関わらず、自然に記憶されていることです。皆さんもこういう体験はあるのではないでしょうか。

そして、この『エピソード記憶』の大きな特徴に≪忘れにくい≫ということが挙げられます。簡単に言うと、一生懸命覚えようとして得た記憶=『意味記憶』より、体験によって得た記憶 =『エピソード記憶』のほうが脳の中により長く残りやすいということなのです。要するに≪非日常で覚えた記憶は忘れにくい≫ということですね。これをうまく利用すると、勉強がはかどり、覚えることも多いことがあります。これを、次にアドバイスしましょう。



勉強にエピソード記憶の要素を取り入れよう

勉強は基本的に『意味記憶』です。しかし、『エピソード記憶』の要素をうまく勉強に取り入れることで、マンネリ化を防ぎ、かつ、勉強の成果をより高めることが期待できます。

では具体的にどんな工夫ができるのか、いくつかご紹介しましょう。まず、胸の前で、手と手を合わせます。そのまま両手に力を入れて押し合う瞬間に、歴史の年号のように覚えたいものを、声に出して言ってみます。この時、なるべく大きな声で言うと効果的です。歴史の年号を覚える時には、必ずこの動作をしてみます。そうすることで、手と手を合わせて力を入れた時には歴史の年号を言っていた、という記憶が刻まれ、机に座ったままで覚えるより、深く記憶に残ることになるのです。
ストレッチをしながら、英単語のように暗記したいものを覚えるのもよいでしょう。足を開いて、前屈する際に単語を言ってみる、というように、動作をする時に覚えようとする単語を言ってみてください。立ったままでの前屈(足を閉じた場合と開いた場合)、座った状態での前屈(片足を前に出した状態、両足を開いた状態)といろいろバリエーションをつけてください。これも、ストレッチをする時には、英単語を覚えていた、という記憶が残るように、ストレッチの時には、必ず英単語を口で言ってみる、という習慣をつけるとよいでしょう。
その他、単純に部屋の中をゆっくりと歩き回りながら暗記してもよいですし、階段の昇り降りをしながら覚えてもよいでしょう。身体を動かすことで、長く机に座っていてマンネリ化していた脳の状態を活性化し、リフレッシュできるだけでなく、深い記憶を残すことが期待できるのです。

今回は、『エピソード記憶』を例にとって、根をつめた勉強時の、運動とリンクした効果的な学習法についてお話ししました。ぜひ、ご家庭でもいろいろ工夫して、身体を動かしながらの学習を取り入れてみてください。


プロフィール

深代千之

深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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