絵日記・日記 書くテーマの見つけ方、表現を膨らませるためには?
- 学習
初めて絵日記や日記に取り組む1年生や、まだ、思ったことを文章にすることが難しい低学年向けに、書くテーマの見つけ方、表現のバリエーションの増やし方、膨らませ方などをアドバイスしたいと思います。
(赤ペン先生 吉田)
1.「書くことが何もない」
絵日記や日記に限らず、作文などがなかなか書けない子どもが言いがちなことは、「何も書くことがない。何も思わなかった」ということです。大人は、「何でもあったことや思ったことをそのまま書けばいいじゃない」と簡単に言えますが、文章を書くことに慣れていない子どもにとっては、それがなかなかできないのです。やはり、最初は、書けるように導いていく必要があります。
では、どのような声かけをすればよいのでしょうか。
2.生活の場面を切り取り、具体的に子どもに質問していく
日常生活の中で、毎日、特記すべきイベントがあるわけではないので、子どもが「何もない」というのは、あながち間違ってはいません。「何か特別なことを上手に書かなければいけない」と思い込んでいる可能性もあります。まずは、「書く」ことのハードルを下げることから始めましょう。
ありきたりの日常生活の中のささいなことに、実は、書く材料はたくさん潜んでいます。生活の一場面をおうちのかたが切り取り、提示することによって、それが書くテーマになることを子どもに気付かせるのです。「何だ、こんなことを書けばいいのか」ということに気が付けば、子どもの発想はどんどん広がっていきます。
たとえば、「今日は、朝顔の花がいくつ咲いていたかな?」「それは何色だったかな?」「大きさはどのくらいだった?」「その花を見てどう思ったかな?」などと、一つずつ、子どもに具体的な質問をしていきます。すると、子どもは、見たままのことや思ったことを答えていくでしょう。「小さい虫がいた!」などと、聞いたこと以外の言葉も飛び出してくるかもしれません。それも含めて、子どもの口から出てきたその答えをそのまま文字にするように促します。
意外と子どもは、聞かれたことをヒントにして、違うことに発想を飛ばし、まったく別のことを書くこともあります。それは、それで大成功です。書きたいことが頭に浮かぶことが大切なのです。
元来、子どもは観察力にもたけていて、《子どもならでは》の視点を持っています。その力を存分に発揮させましょう。
子どもに問いかける時は、子どもが好きなことや興味がありそうなことを選ぶことをおすすめします。興味がないことや書きたくない内容について聞いても言葉はなかなか出てきません。
それでもうまくいかない場合は、究極、次のような日記が書けます。
今日、ぼくは、日記を書く時、「何もなかったから書けない。」とお母さんに言いました。お母さんは、「何もないことはないでしょう。何でもいいから書けばいいよ。」と言いました。ぼくは、いろいろ思い出してみたけれど、やっぱり書くことがありませんでした。お母さんに「やっぱりない。」と言ったら、お母さんは、「しかたがないわね。明日は何か見つけて書こうね。」と言いました。ぼくも、「そうしよう。」と思いました。
何もなければないで、なかったことにフォーカスを当てて、その時の会話や様子などを詳しく書けば立派な日記になります。ポイントは、「焦点を絞って、詳しく書く」ことです。
これに、「書けない」と言った時お母さんがどんな表情をしたか、その時、自分はどう思ったか、なども書き加えていくと、ぐんとレベルアップしていきます。
よくありがちな、「朝起きて、ご飯を食べた。宿題をした。昼ご飯を食べた。おいしかった。……」のように、時系列に行動を書いた日記と比べてはいかがでしょう。子どもらしさもあり、愉快ではありませんか。
そして、書けた時は、たくさんたくさんほめてあげてください。自信を付けて、書くことは面白いと思えるようになると、ますます子どもは乗ってきます。
3.文章を書く時の3つのポイント
次の3つのことは、私が小学生の時に教えてもらったことです。
(1)「うれしい」「楽しい」「悲しい」などのような言葉を使わないで書く。
(2)その場にいない人にも情景が目に浮かぶように書く。
(3)自分の体験を具体的に書く。
(1)は、「うれしい」などの言葉を使わなくても、読んだ人が、「作者はうれしいんだな」ということがわかるような表現で書く、(3)は、誰が書いても同じになるような文章ではなく、自分にしか書けない文章を書くということです。
ハードルが高いように思えますが、(2)と(3)については、先述した、《親子の会話の日記》はそれを満たしています。実際の親子の会話を具体的に入れることで、オリジナリティーに富んだ日記になり、ほほ笑ましい親子の情景も目に浮かんできます。
(1)については、次で、表現のバリエーションの増やし方をご紹介します。
4.子どもの気持ちと言葉を一致させる体験を重ねる
私の知人の元小学校の先生から、こんな授業の話を聞いたことがあります。
まず、先生が黒板に、「どきどきする、すかっとする、うちょうてんになる、心がおどる、はらはらする、ひやひやする」などのような、いろいろな気持ちを表す言葉をたくさん書きます。次に、クラス全員が、それぞれ今の自分の気持ちに合った言葉を選んで、そこに自分の名前を書いた紙を、マグネットで貼り付けていくという授業です。
自分では思いつかないような言葉でも、選ぶことはできます。自分の気持ちに合った言葉を選ぶので、気持ちと言葉が一致します。日頃、発表が苦手で自分の考えを言えない子どもでも、意思表示ができるので、授業は盛り上がり、どの子も、いきいきと目を輝かせていたそうです。
ご家庭でも、このように、おうちのかたが気持ちを表す言葉を例に挙げて、お子さまに今の気持ちに合った言葉を選ばせてみてはいかがでしょう。ゲーム感覚で、どれを選ぶか当てっこするのもいいですね。気持ちと言葉の一致を実感することによって、徐々に気持ちを表す言葉のバリエーションが増えていきます。
また、こんな授業もしたそうです。
「思わずガッツポーズをしました」「みんなでおなかをかかえて大笑いしました」「試合に負けて涙がポロポロ出てきました」などのような短文を先生が黒板に書いて、どんな気持ちが伝わるかを考えさせる授業です。「うれしい」「楽しい」「悲しい」などの言葉を使わなくても、様子を詳しく書くことで、それらの気持ちを伝えられることを子どもは学びます。
そして、次は実践です。自分のことに置き換え、そういった言葉を使わないで文を書かせます。繰り返し書かせることで、どの子も表現の幅が見違えるほど広がっていったそうです。
ご家庭でも、ぜひ、お試しください。
まとめ & 実践 TIPS
子どもは、生まれた時から模倣しながら成長していきます。文章を書くことも同じです。最初は、《まね》から始めてよいと思います。(小説を書き写すことをずっと続けていたら、自分も小説を書けるようになって作家になったという話も聞いたことがあります)。
お手本になるような、同年代の子どもが書いた日記や作文を読ませたり、読み聞かせたりするのもいいですね。
そして、何より大切なことは、お子さまの《心を動かす》ことです。おうちのかたの体験を生かして、お子さまの体験を広げていってあげてください。みずみずしい感性が育っていくことでしょう。それが、豊かな表現力にもつながっていくように思います。
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