公園なら安全とは限らない!?子どもだけで遊ぶ時の防犯上の注意点は?/小学生保護者のお悩み解決隊#5
- 育児・子育て
小学校3年生ごろからは、子どもだけで遊びにいくことも増えるもの。成長してきたとはいえ、まだまだ体も小さく力も弱いからこそ「危険な目に遭わないかな?」と心配になるのではないでしょうか。暗い場所や知らない人には注意するよう伝えているものの、本当に大丈夫かな……と不安が募ることも。
そこで、小学生だけで遊ぶ時の防犯上のヒヤリ体験をマンガ化。犯罪学に詳しい立正大学文学部社会学科・小宮信夫先生に子どもだけで遊ぶ時の注意点をアドバイスしていただきました。
近くの公園で遊んでいるはずが……先輩保護者のヒヤリ体験談
帰宅時間になっても子どもが帰ってこない、遊びにいったはずの場所にいない……同じような経験をして、全身から血の気が引いたことがあるかたもいらっしゃるかもしれません。「何か事件に巻き込まれたのではないか」と気が気でない思いをすることもあるでしょう。
子どもだけで遊ぶ時、防犯上の注意点をしっかり伝えておきたいもの。どんなルールを定め、どう伝えればいいでしょうか。
子どもだけで遊ぶ時、危ない目に遭わないようにするには?
教えてくれるのは……犯罪学に詳しく、「地域安全マップ」の考案者でもある立正大学文学部社会学科・小宮信夫先生です。
Q. 子どもだけで遊ぶ時に犯罪に巻き込まれないための注意点は?
小宮先生:子どもを狙った犯罪者は、いかにも怪しそうな様子であることはまずありません。優しげな雰囲気で、子どもに怪しく思われないよう、自然に近づいて声をかけます。また、暗い時間帯よりも、むしろ明るい時間帯に接触してくるものです。
保護者のかたはお子さまに「怪しい人についていったらダメだよ」「暗くなる前に帰ってこようね」とお話しされることも多いと思いますが、それだけでは不十分。犯罪者は言葉巧みにだましてくるため、そもそも声をかけられないようにすることが大切です。次の3点に注意していきましょう。
保護者のかたはお子さまに「怪しい人についていったらダメだよ」「暗くなる前に帰ってこようね」とお話しされることも多いと思いますが、それだけでは不十分。犯罪者は言葉巧みにだましてくるため、そもそも声をかけられないようにすることが大切です。次の3点に注意していきましょう。
<防犯3大ルール>
- 「入りやすく見えにくい場所」にはなるべく行かない
- 1人にならない
- ガードレールや植え込みの内側を歩く
1点目にある「入りやすく見えにくい場所」とは、犯罪者が子どもに声をかけるのに好む場所です。簡単に出入りできて、目撃されにくいのであれば犯罪者にとっては好都合。まぎれこみやすく、いざというときも逃げ出しやすいうえ、犯行を見られる可能性も少ないわけですからね。具体的には、次のような場所に注意していきましょう。
「入りやすく見えにくい場所」の具体例
- 緑の鬱蒼(うっそう)とした公園
- マンションやビルの外階段
- 周りに何もない田んぼや畑
- 周りの家やマンションの窓から見えにくい道
公園や、周りに家がある道だからといって安心というわけではありません。高い木や塀が多ければ「見えにくい場所」となってしまいます。
2点目の「1人にならない」は、一番大事なポイントです。子どもだけで遊ぶ時は、どんなタイミングも複数人で行動するのが大原則。1点目で紹介した「入りやすく見えにくい場所にはなるべく行かない」といっても、近所で遊べるところはそういう場所しかないこともあるでしょう。慎重に場所を選びすぎて遊ぶところがなくなってしまうのも避けてあげたいところ。そんな場合も、複数人のグループで行動していればリスクを減らせます。
気をつけたいのは、先に帰る友達がいる場合。4人が3人に、3人が2人となって、最後の1人も帰宅するといったとき、自分1人だけ最後まで残って遊ぶのは避けるように伝えましょう。「他に遊んでいる子どももいるし、もう少し1人で遊びたいし大丈夫だよね」と判断してしまうこともあるかもしれませんが、どんな理由であれNG。1人でいる子どもは狙われやすくなってしまいます。
3点目の「ガードレールや植え込みの内側を歩く」というのは、誘拐に遭わないようにするために非常に重要です。誘拐犯は、「先生が呼んでいるよ」「お母さんが病院に運ばれたよ」などともっともらしいことを言っては車に乗るよう誘い込むことが常套(じょうとう)手段。これまでに起きた誘拐事件のほぼ100%がガードレールのない道路で発生しています。その理由は簡単。ガードレールがないとすぐに車に乗り込ませることができるためです。先ほどの言葉を使えば、「入りやすい場所」です。
もし車と子どもの間にガードレールや植え込みがあれば、子どもが車に乗ろうと迂回している間に我に返ったり、周囲の人に気付かれたりする可能性も高まります。だからこそ、犯人はガードレールのない道に現れるのです。ただし、ガードレールのある道に現れることもありますが、その場合でも、ガードレールの途切れている場所に車を止めて、声をかけてきます。ガードレールや植え込みがあれば「入りにくい場所」ですが、それが途切れていれば、そこだけは「入りやすい場所」になるからです。
Q. 公園に潜む危険性とは? どんな点に注意するべき?
小宮先生:子どもの遊び場の定番、公園にも危険は潜んでいます。緑が鬱蒼としている公園については先ほど説明したとおりですが、他に特に注意したいのは「ベンチ」と「トイレ」です。
まず、ベンチは犯罪者にとってターゲットとなる子どもを物色したり、自然に声をかけたりするのにうってつけです。滑り台やブランコなど、遊具の近くにベンチが置かれていることも多いですよね。そこに腰をおろしていれば、こっそり盗撮もしやすいですし、「ブランコ上手だね」などと声もかけやすいわけです。「向こうにもっと大きなブランコのある公園があるよ。行ってみたい?」と誘い出したりもできるでしょう。
遊具の近くのベンチは、のどかな光景のようでいて、実は大きな危険も潜んでいるのです。子どもの安全ファーストの海外では、フェンスで囲まれたエリアの中に遊具を集中させているので、子どもと関係のない大人が入っていくと目立つようになっています。しかし、日本の公園では残念ながらそのようなことはほとんどないですね。
もちろん、本当に子ども好きでベンチから声をかけてくれる優しい大人も多いでしょう。しかし、残念ながら犯罪者か優しい人かを見分けることはできないため、警戒するにこしたことはありません。
2点目のトイレに関しては「入りやすく見えにくい場所」の典型ともいえますね。男女の入り口が近いトイレは、連れ込みもしやすく特に危険です。グループで遊んでいる子どもたちであっても、トイレは1人で行くことが少なくないでしょう。先ほどお伝えしたように、1人でいる子どもは、狙われやすいです。隙を見て連れ込まれて、性被害に遭う危険性もあります。
子どもをターゲットとした性被害は「あ、ゴミがついているよ」と親切を装って体に触るなど、子どもが性被害と気付きにくい接触をしてくるものです。そのような危険に遭うリスクを減らすためにも、トイレは必ず複数で行くようにしましょう。
Q. 防犯上の注意点を伝えるだけでは不安……子どもの防犯感覚を高めるためにできることは?
小宮先生:子どもだけで遊ぶ時の防犯上の注意点について、どれだけ口酸っぱく伝えても「わかった」というだけで本当に気を付けられるか不安に感じることもあるかもしれません。子どもはルールだけを押し付けても、実践はしません。どれだけ実感を持って、納得させられるかが大切です。
おすすめしたいのは、親子で一緒に街を歩いたり、写真や映像を見たりしながら「景色解読力」を高めることです。「入りやすく見えにくいところは危険」と伝えても、子どもは具体的なイメージを持ちづらいものです。具体的にこことここなどと伝え続けるのにも、限界があるでしょう。子どもが自分の中で物差しを持って、場所を解読し危険性に気付けるようにしていきましょう。
そのためには、具体的な例で学ぶこと。家から子どもが遊ぶことの多い公園に一緒に行ってみて気を付けるべき場所を確認できればベストです。「このベンチは、滑り台で遊んでるときに声をかけられやすそうだね」「このトイレは、植え込みの裏側にあって人目につきにくくて危険だね」といった具合です。一緒に見て、なぜ危ないのかを具体的に確認することで、子どもの印象にも残るでしょう。
また、私が子どもたちと「地域安全マップ」を作るためにフィールドワークをするときにはこんなワークもしています。「はい、ここから360度見渡してみて、窓がいくつあるか数えて」「次はこの場所をぐるっと見渡してみて。さっきと比べてどうかな?」と、周りからどれだけ見えるかを確認させるんですね。最初の場所は窓が20枚見えて、次の場所は3枚しか見えなかったとすれば、「3枚しか窓がないってことは、それだけ目撃される可能性も少ないってことだ」と後者のほうがより危険であると実感を持って理解できるはずです。
保護者のかたも忙しいため、一緒に歩いて確認する時間を取るのが難しいということもあるでしょう。そんなときは、写真や映像などを一緒に見ながら「ここはどんな点が危険かな?」「この場所の中で、悪い人がいそうな場所はどこかな?」と話し合うだけでも大丈夫です。親子で一緒に確認して、あれこれ話し合うことで、お子さまの心に印象付けることができるはずです。
犯罪者の手口はより巧妙になっていくからこそ、子どもの防犯知識も、日々アップデートしていくことが大切です。子どもを狙った犯罪や未遂のケースについて、定期的に共有、話し合っていくことも忘れないようにしましょう。
まとめ & 実践 TIPS
「地域安全マップ」の作成や、さまざまな省庁や自治体で防犯活動に携わってきた経験をもとにアドバイスをいただきました。子どもを狙った犯罪は明るい時間帯のほうが多い、公園も決して安全とはいえないといった予想外の事実に、思わずヒヤリとしたかたもいらっしゃるかもしれません。とはいえ、危険が潜んでいるからといって、外で遊ぶのを控えさせるのも避けたいもの。子どもの防犯知識を高めることで、リスクを最小限にしていけるといいですね。
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