子どもと「恋バナ」はする?もし相談されたら?覚えておきたい対話の仕方

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保護者のかたにとって、お子さまの「恋愛」についての心境は気になるポイントの一つ。交際の低年齢化が進んでいるといわれる中、小学生にもなると、お子さまの交友関係について心配な気持ちを持たれるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、子どもが恋愛について家庭内で話をするのには、少し気恥ずかしさを感じることも。本記事では、家庭内での「恋愛話」における向き合い方について考えます。

この記事のポイント

「恋愛系の話をしたことがない」 家庭が約半数

そもそも、家庭内で恋愛話をするのは一般的なことなのでしょうか。子育て中の保護者のかたにアンケートを実施したところ(※)、恋愛系の話をしたことが「ある」と答えたのは48%、「ない」と答えたのは52%という結果に。

「ある」と答えたご家庭の中でも、お子さまから相談してくるというケースもあれば、質問をしても「なんとなく流されてしまう」というケースもあり、お子さまの年齢にかかわらず、家庭内で恋愛話をすることに積極的かどうかは個人差があるようです。

※2023年10月に行った「保護者のかた向けアンケート」(460人回答)の回答内容をもとに作成

また、アンケートでは 「仲良くしている子がいるようだが、それ以上のことは話してくれない」「今どきの小学生は実際に付き合うこともあるようで、親としては心配」 という声も挙がっており、お子さまの恋愛事情について不安を感じているかたもいらっしゃる様子。

お子さまと恋愛の話をしたい時や、「好きな子ができた」と打ち明けられた時、保護者のかたはどう対応すればよいのでしょうか。
「子どもの心のコーチング」に取り組む、NPO法人ハートフルコミュニケーション 代表理事の菅原裕子先生にお聞きしました。

詮索はせず、いつでも「話したい」と思える関係性づくりを

——お子さまの恋愛意識を知りたいという気持ちや、心境がわからないことによる不安を感じた時、保護者のかたはどうすればよいのでしょうか。

子どもが成長する過程で、恋愛に関心を持つのはごく自然なこと。同時に、「なんとなく家庭では話しにくい」という気持ちを抱くのもまた自然な感情です。

保護者のかたはあまり詮索(せんさく)せずに、もしお子さまが自分の気持ちを話してくれた時は、笑顔で受け止めるのがよいでしょう。

——お子さまから話があった場合、具体的には、どのように対話するのが望ましいでしょうか。

まずは、お子さまが自分の気持ちを教えてくれたことを歓迎しましょう。過剰に反応するのは避けたいところですが、話してくれてうれしいと思ったのなら、その気持ちは隠さなくても大丈夫ですよ。

でも、根掘り葉掘り質問するのは避けるのがベター。保護者のかたはまず「そうなんだ!」と相づちを打って、お子さまの話を聞いてみてください。そうしていると、お子さまも安心して「話したい」と思ってくれるはずです。

真に重要なのは、あれこれと詮索して確かめることではなく、お子さまのほうから話してみたいと思った時に、気軽に話せる関係性を築けているか? ということではないでしょうか。

恋愛に限った話ではありませんが、家庭内でオープンな対話の土壌をつくるには、次のようなポイントがあります。

● 子どもの話には、関心を持って耳を傾ける

  • 子どもは、他人が自分の話に興味を抱いてくれているか、何気ない会話から感じ取っています。自分の気持ちを話したいと思ってもらえる存在になるには、普段からお子さまの話に耳を傾けることが大切です。
  • 恋愛についても、お子さまの話をよく聞いていると、頻繁に話題にあがる子の存在に気付くことがあるかもしれません。

● 自分自身も、子どもへ自己開示をする

  • 保護者のかたが、たとえば会社であった出来事や、その時に感じた気持ちをお子さまに話すのも、関係性を築くうえでは大切なこと。子どもはそのような話を聞くことで、家庭ではいろんな話をしてもよいのだと認識することができます。

● 生活習慣をつくり、子どもを守る姿勢を示す

  • 門限や就寝時間、そのほかにも最低限の決まりごとなど、特に思春期を迎える前は、子どもが健全に生活する習慣を保護者が構築することも重要な要素の一つです。
    反抗される時もあると思いますが、このような習慣をつくることは「家庭で子どもを守っている」というスタンスを示す宣言でもあり、保護者のかたへの信頼にもつながっていくでしょう。

ゆくゆくは、お子さまが成長するにつれて自分で自分の行動を決め、一度つくった習慣が崩れることもあるかもしれません。でも、その過程も成長の一環です。大切なのは、子どもにとって家庭が安心できる場なのだとわかってもらうことだと思います。

子どもの意見に賛同できない時は?

——保護者のかたからは、「突然『好きな子ができた』と聞かされ驚いた」という声も聞こえてきます。いざ相談をされた時、心に余裕を持って向き合うためにできることはありますか?

保護者のかたも大人とはいえ、思わぬ恋愛話や、自分の知らなかったお子さまの志向にびっくりすることもありますよね。心に余裕を持って向き合うためには、ご自身の《メンタルリハーサル》をしておくとよいかもしれません。

「もしこんな相談をされたら?」「こんな子が好きって言われたらどう答えよう?」というふうに想像をして、回答を考えながら、笑顔で受け止めるためのイメージを付けておくとよいでしょう。

——お子さまが成長するにつれて、お付き合いを始めることも考えられます。もし、お子さまの意見や付き合い方に賛同できない場合は、どう受け止めたらよいでしょうか。

ざっくばらんに会話ができる関係性を築けているなら、まずは一度、ご自身の率直な意見を伝えてみてはいかがでしょうか。意見を言うこと自体は、決して悪いことではありません。ただし、なんらかの危険やトラブルにつながる可能性がある時は別ですが、そうでない場合は、反対の意見を押し通そうとするのは避けたほうがよいと思います。

お子さまの意見に対してなぜ自分が心配を抱いているのか、その点はできるだけ具体的に伝えましょう。しかし、最後は「あなたがいいのなら、応援はするよ」というスタンスを示すことが大切です。最終的にどう判断するかは、やはりお子さま次第ですからね。

——恋愛について、お子さまの言動で気を配っておきたいポイントがあれば教えてください。

今までいろいろと話をしてくれていたのに、突然その話題が途絶えた時や、ネガティブなことを言い出した時、また、生活リズムが崩れた時などは、注意して見守るとよいと思います。ただしこの時も、あまり神経質に細かく質問すると子どもは余計に話しにくくなるので、その点は留意しておく必要があります。

また、もしお子さまがネガティブになっていたり、「私なんて……」と自己否定するような発言をしたりした時は、今お子さまが何を考え、感じているのかを聞いてみてはいかがでしょうか。

どうしても、すぐに「そんなことないよ!」と口走ってしまいがちですが、それはお子さまの感情を否定することにもなります。意見を言うのは、まずはお子さまの気持ちを受け止めてから。そのあとで「私はこんなに大切に思っているよ」など、ご自身の思いを伝えてみてください。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまの恋愛事情は、つい気になってしまうもの。しかし、家庭内で恋愛話をするかどうかはアンケートでも結果が分かれたように、お子さまの性格や状況によっても異なります。

大切なのは、いつでも話せる関係性を築くこと。そしてもし相談された時は、お子さまの気持ちを笑顔で受け止めましょう。それが、お子さまとのよりよい信頼関係を築く礎(いしずえ)の一つとなるはずです。

プロフィール


菅原裕子

人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。1995年、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場での体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム-ハートフルコミュニケーション-を開発。2006年にNPO法人ハートフルコミュニケーションを設立。『子どもの心のコーチング』『10代の子どもの心のコーチング』『子どもの「やる気」のコーチング』(以上、PHP文庫)など、著書多数。

NPO法人ハートフルコミュニケーション
https://www.heartful-com.org/

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