【学年別 不登校への対応方法】大事なのは理解を示す姿勢
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小・中・高いずれの学齢でも、小さなきっかけから不登校や行き渋りを経験する児童・生徒が近年増えています。不登校のお子さまを抱える保護者のかたは、「学校の先生にはどう話せばいい……?」「ママ友に何か聞かれたら……?」「進級や進学は大丈夫かな……」などさまざまな不安を感じているのではないでしょうか。
しかし、たとえ不登校になったとしても、「どんなふうに接したらよいか」「通っていた学校以外で学ぶ選択肢はあるか」といった一般的な知識を大まかにでも知っておけば、少し落ち着いて次のアクションを考えることができます。
そこで、お子さまが不登校になった場合の対応方法について、中学校で11年教師を務め、現在はフリースクールの運営を行っている信田雄一郎さんにお話をお聞きしました。
学年別 不登校への対応方法と保護者の関わり方
「学校に行きたくない」と言い出したお子さまに対してどんな働きかけをすればよいか、保護者のかたとしては非常に悩むところでしょう。
なぜなら不登校が始まる理由・きっかけは人によって違ううえ、発達段階によっても対応方法は変わってくるからです。※
「これが正解」という対応はないものの、基本姿勢として大切なのは「押しつけや否定をせずに話を聞く」こと。
もちろん保護者のかたとしては、いろいろ言いたいこともあるはずですし、簡単なことではないと思います。「急に学校にいけなくなって、明日からの仕事はどうしよう」「本当は進学校に行ってほしい……」など、お子さまへの対応以外にも気にしないといけないことも多いことでしょう。
保護者のかたもとてもつらい時期ではありますが、一方的に言いたくなる気持ちになったときは、少しだけ時間をおくよう意識してみてください。
まずは「傾聴」を基本スタンスとして、不登校のお子さまと関わるときのポイントを学年別にご紹介します。
※不登校の原因についてはこちらをチェック
【体験談あり】子どもが不登校になる原因は? 保護者の対応方法をプロが解説
小学生の不登校への対応方法
小学生の場合、学校で少しイヤなことがあっただけで登校をしぶるケースも多く、「どうして行きたくないの?」と聞かれても、「イヤだから」としか答えられないことも。
むしろ、「行きたくないなら1日ぐらい休んだら?」「平日だけど、どこか遊びに行こうか」などと持ちかけてあげるのもよいでしょう。
小学生の場合は保護者のかたと離れることを不安に感じるタイプの不登校も多いので、お子さまの気持ちを思いやる声かけを行うことで「自分のことを気にかけてくれているんだな」と安心できるでしょう。
中学生の不登校への対応方法
不登校の中学生は、保護者のかたも口には出さなくても「高校進学に差しつかえるのではないか」「このままで大丈夫かな」と不安を感じているはず。そこで、保護者のかたの対応として重要になるのが、社会に出て自立するという将来の目標に少しずつ目を向けていけるよう、さりげなくナビゲートすることです。
学校に行かなくなると、基本的には自宅で過ごすことが多くなるため、日常的に接するのは保護者だけです。つまり保護者のかたは、お子さまに刺激を与える唯一の存在となりやすいのです。
その意味で、お子さまが将来のことを考えられるような声がけをときどきしてみるなどの対応ができるといいでしょう。具体的には、近い話題が出た際に、「将来なりたい職業ってある?」「勉強していて面白いなと思う分野はある?」と聞いてみてはいかがでしょう。プレッシャーを感じさせないよう、さりげなく聞いてみる、本人が答えを渋る場合は、質問攻めにしないなどの対応がおすすめです。
高校生の不登校への対応方法
中学時代から不登校が始まった場合は、フリースクールに通うケースも多くみられます。この場合は、スクールのスタッフや友達などとのコミュニケーションがあるため、保護者のかたの負担は減るはずです。「フリースクールでは友達とどんな話をするの?」など興味を持って聞いてあげましょう。この場合も、プレッシャーを感じさせることがないように、質問攻めにしないように意識したいですね。
一方、中高校生から不登校になったお子さまは、学校に行きたくない原因を保護者のかたに話したがらない可能性があります。だからといってそのままにしておくと、お子さまは自分の世界にこもりがちになってしまいます。
できるだけ保護者以外の人と話す機会をつくるため、まずはホームページやSNSなどでフリースクールの情報を調べ、可能な場合は見学なども検討してみましょう。
再登校を促す前に、保護者が気をつけるべきこと
お子さまが不登校になると、多くの保護者のかたは「もう一度学校に通えるようになってほしい」と考えるかもしれません。しかし、「今日だけは行きなさい」などと強要したり、期待しすぎたりするのは禁物です。
なぜなら、通っている学校に戻ることがベストかどうかは、お子さまの立場にならないとわからないからです。また、ご家庭の期待に応える形で学校に戻ってダメだった場合、お子さまの心は深く傷ついてしまうことになります。
再登校やフリースクール、オルタナティブスクールなど複数の選択肢を検討し、お子さまの希望を聞き、次のアクションを一緒に考えていきましょう。フリースクールやオルタナティブスクールに関しては、複数の施設について情報を収集し、見学も可能であれば複数行くのがおすすめです。
【体験談】不登校だった経験者が語る、保護者にしてもらってうれしかったこと
不登校になって自宅で過ごすお子さまにとって、保護者のかたとのコミュニケーションは生活の中で大きなウェートを占めるものです。センシティブな時期だからこそなおさら、保護者の気づかいや配慮に満ちた言葉はお子さまの心に残ります。不登校を経験したお子さまに聞いた、「保護者にしてもらってうれしかったこと」をご紹介します。
なお「イヤだったこと」に関しては、「『どうして学校が嫌いなの?』『なんでできないの?』と言われるとつらい」というお子さまの声をよく聞きます。
保護者としてはお子さまの気持ちが理解できずに不安がこみ上げ、お子さまが答えられないような疑問を投げかけてしまうのでしょう。
その気持ちは非常によくわかりますが、理由を問い詰めることで、嫌な思い出を呼び起こしてしまう可能性があり、悪気が無かったとしても、精神的に追い詰めてしまいかねません。
お子さまがデリケートな状態のときはできるだけこのような言い方をせず、いったん深呼吸をして落ち着きましょう。
事例1 Aさん(中3・男子) 「学校に行きなさい」と強要されず救われた
Aさん(中3・男子)は中1の秋から不登校になり、現在は通信制高校で学ぶ決意を固めています。
保護者のかたの対応でうれしかったのは、「学校に行きなさい」と強要されなかったこと。見守ってもらえているのを感じたAさんは、自分から進路についてリサーチを始め、高校の学校説明会にも足を運ぶようになったそうです。
Aさん自身は今、「通信制高校には週3回を目標に通い、慣れてきたら毎日通いたい。大学にも行きたい」と勉強に対して前向きな姿勢を見せているとのことです。
事例2 Bさん(大学1年・女子) 祖父母が何も言わずに見守ってくれた
Bさん(大学1年・女子)は中学時代に不登校でしたが、通信制高校を経て大学に進学しました。合格がわかったとき、ご両親はもちろんですが、それ以上に喜んだのが祖父母だったそうです。
祖父母世代には不登校の児童・生徒が少なく、口に出さないながらもBさんのことをとても心配してくれていたようです。Bさんは「おじいちゃんとおばあちゃんから口を出されたことは一度もなかったけれど、とても気にかけてくれていたんだな、と改めてわかり、うれしかった」としみじみ語ってくれました。
体験談からもわかるように、当事者のお子さまからは「学校に行くことを強要されずうれしかった」「気にかけてくれていたことを知りうれしかった」という声が多いようです。「学校に行けない自分を認めてもらえた」と実感できるだけでも、安心につながります。
また、お子さまをサポートする際は、一家で一枚岩になって支えていく気持ちが大切です。家族みんなが応援してくれていると実感できると、とても心強いものなのです。
不登校になった時の学校とのコミュニケーションの取り方
児童・生徒の不登校の事例は近年増えているため、学校では不登校の対応を行う先生が配置されている場合も増えています。お子さまの不登校が長期化する前に、一度コンタクトをとってみましょう。「先生もお忙しいのに、こんなことを聞いていいのかな」と遠慮してしまう保護者のかたが多いのですが、先生には、ぜひいろいろなことを相談、質問してみてください。
不登校について、学校で対応可能なサポートを確認
学校側に相談すると、不登校支援担当の先生のほか、学年主任やクラス担任の先生が関わってくれる場合もあります。お子さまがしばらく登校できそうにない場合は、「宿題・課題だけでも伝えてほしい」「オンラインで先生の面談を受けたい」などお子さまと保護者のかたの希望を伝え、どこまで対応してもらえるのかを確認しましょう。「希望ばかり伝えると煙たがられるのでは」「先生に迷惑をかけてしまうのでは」と遠慮する保護者のかたが本当に多いのですが、遠慮は不要だとわたしは考えています。
再登校以外の選択肢について相談してみても
これまで先生方は、「学校に戻ること」を前提にご家庭からの相談に乗るケースが大半でした。しかし近年は、不登校の児童・生徒が非常に増え、フリースクールなど学校以外でも学ぶ場所があることも急速に認知されてきています。
そのため先生方も、「とにかく再登校を」というスタンスではなく、一緒にいろいろな選択肢を検討してくれるケースも増えています。
保護者のかたも、思い切って本音で相談してみましょう。本音を伝えるときに、感情的になってしまわないか、上手に説明できるか不安な場合は、文章にまとめてみてもよいと思います。
進学や進級はどうなる? 実際の対応方法は
中学生・高校生のお子さまが不登校になると、保護者のかたとしては「進学が難しくなるのではないか」と心配になるかもしれません。
不登校者の高校・大学進学に関する明確なデータを得るのは難しいですが、学習の遅れがネックになって進学をあきらめる人は確かに存在します。
しかし、中学生の場合は、自治体が認定したフリースクールに通って出席認定されれば、高校受験資格が得られます。出席の考え方や重視する度合いは高校によって異なるため、高校に問い合わせて確認しましょう。
ただし、高校によっては欠席が多い子どもは合格が難しくなる場合があります。
高校生になれば、「通信制高校を卒業」「高卒認定試験に合格」といった方法で大学受験資格を得ることができます。
「通信制高校に入学して、自力で勉強できるだろうか」と不安を訴える生徒もいますが、サポート校(生徒の自学自習を支援する民間の機関)の支援を受けながら学び続け、無事に卒業する人はたくさんいます。
方法によっては時間がかかることもありますが、「不登校=進学断念」とは決していえなくなっているのです。
なお高校生の場合は、義務教育外であるため「出席日数が足りないと進級できないのでは?」という不安もあります。
文科省による2021年度の調査※では、不登校の高校生のうち中途退学した生徒は約9,000人で全体の17.5%、原級留置(留年)になった生徒は約3,000人で全体の5.9%となっています。
確かに決して低くはない数値ですが、逆に考えると、約8割の高校生は不登校でも進級できていることになります。
不登校のサポートに役立つ窓口やサービスはこちら
お子さまの不登校が長期化しそうなときは、ご家庭だけで抱え込まずに、各自治体や民間機関が設置する相談室や支援センターにコンタクトすることも大切です。
ただ、こうした窓口が紹介してくれる施設がお子さまに合うかどうかは地域差もあり未知数です。紹介された施設を一度見学したうえで、お子さまが乗り気でないなら、そこにこだわらず、「別の窓口に相談してみる」「インターネットなどを活用して自力で別の施設を探す」など別のアクションを起こしましょう。
不登校の相談ができる窓口の例
・教育支援センター(適応指導教室)
・精神保健福祉センター
・教育相談所(教育相談室)
・子供家庭支援センター
・児童相談所
・保健所
・各フリースクール
・オルタナティブスクール
まとめ & 実践 TIPS
お子さまの不登校は、ご家庭だけで抱え込む必要はなく、在籍する学校や地域全体で担っていくべきものです。
先生や専門家を頼り相談することで、少しでも気持ちに余裕ができれば、その分お子さまにも余裕をもって接することができるようになります。
お子さまの意向を尊重し、いろいろな選択肢を複数の視点で比較・検討しながら、よりよい進路を一緒に探っていきましょう。
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