【中高生】不登校気味の子に保護者ができること

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中学生、高校生の不登校が増加しています。文部科学省のデータによると、令和3年度の不登校生徒数は、中学生で163,442人(前年度132,777人)、高校生で50,985人(前年度43,051人)。中学生では、不登校生徒の割合が5.0%となっています(※1)

思春期や反抗期で、保護者のかたは、子どもとの接し方にとまどいがちなこの時期。進級・進学のことも気になるでしょう。お子さまが学校に行けなくなった時、保護者はどのようにサポートしていけばいいのでしょうか。過去には養護教諭として保健室を訪れる子どもと向き合い、現在はスクールカウンセラーとして子どもの内面のケアにあたる相樂直子先生に伺いました。

この記事のポイント

中高生の不登校の原因はより複雑化

お子さまから「学校に行きたくない」と言われると、保護者のかたは驚いたりとまどったりすることでしょう。そして「何が原因なのか」が気になるのではないでしょうか。しかし、多くの不登校の生徒を見てきた経験からすると、原因は1つではなく複合的な要素が複雑に絡み合っていることが多いものです。

中高生になると、悩みの種も多くなるもの。人間関係も複雑化し、勉強の難易度もUP、進学などによる環境変化もあれば、受験や将来への不安もあります。心が成長してきた分、悩みや迷いが深くなることもあるでしょう。まずは、その思春期の特徴をおさえ、原因探しをするのではなく、お子さまの疲れた気持ちに寄り添うことが大切です。

家庭環境の変化や発達面の課題が要因となっているケースも

家庭環境の変化で、自宅が子どもの安心できる居場所とならず不安や緊張感が高まるケースも見られます。また、発達面に課題を抱える子どもの中には、コロナ禍の感染予防の観点から学校生活における変化や制限が増える中で、学校生活に適応するハードルが高くなり登校への不安が生まれるケースもあります。

思春期だからこそのサポートも心がけて

中高生は「学校を休みたい」との言葉もなしに、休みがちになることも少なくありません。「何があったのかな?」とお子さまの気持ちを理解しようと思っても、保護者を遠ざけるような様子も見られ、不安に駆られることもあるのではないでしょうか。気持ちに寄り添う際は、思春期の心の特性に合わせた接し方を心がけていきましょう。

「距離をおいてほしい」という気持ちにも寄り添う

思春期の中高生は「放っておいてほしい」という気持ちもあるものです。干渉されたくない、ひとりになりたいなどの様子が見られたら、その気持ちを尊重しながらも、お子さまとの心理的な距離を見直すことが大切になります。

「子どもが心理的に自立しようとする時期」「ひとりになって心を休めて、エネルギーが回復するのを待とう」と信じて見守るようにしましょう。心配のあまり、つい口を出してしまいたくなっても、グッとこらえて。疲れきっている際の子どもは、あれこれ言われないというだけでも安心できるものです。

お子さまとの心理的な距離を適切にとる

少し離れて見守りつつも、お子さまの様子を観察したり、気持ちを理解しようとする姿勢は大切にしたいですね。子どもは、保護者の心が自分に向いているかを敏感に感じ取るものです。

近すぎず・遠すぎず、心理的に適切な距離をとるために、まずはお子さまの今の状態を知り、理解することです。お子さまをよく観察して、表情や仕草、食事や睡眠の様子など、ちょっとしたサインを受け取っていきましょう。
「今日は食欲がありそうだから、好きなおかずを作ってあげよう」など、日常的な何気ない普通のやりとりを重ねていってください。一方、いつもと違って気になる様子が見られた時には、「何かあった?」とさりげなく声をかけることもいいかもしれません。

反応がなかったり、薄かったりしても、無意味ではありません。「保護者は自分を気にしてくれている」「今の状態を受け止めて尊重してくれている」など、自分は保護者から大切にされているという感覚につながっていることがあるからです。

お子さまがポツリ、ポツリと学校に行きたくない理由を話し始めたら、「そうだったんだね」「つらかったね」と共感を示してあげられるといいですね。アドバイスをしたり、質問攻めにするようなことは控え、傾聴することが大切です。加えて、お子さまが周りのサポートを受けながら、どうしたいのかを自分で考え、決めていくという姿勢も必要です。

長期的な視点で考える

中高生は進路選択を控えてもいるからこそ、「なんとか学校に行かせないと」と短期的な視点で焦るのでなく、長期的な視点で子どもの自立や幸せのために何が必要かを見直すことも大切です。

・どんな大人に成長してほしい?

・この子にとっての幸せとはどんなこと?

・自立した大人になるために何が必要?

・そのために、保護者として何ができるのか?

このようなことをゆっくり考え直してみると「学校に行かせなければ」という焦りや「これからどうなってしまうんだろう」という不安が少しずつ和らいでいくのではないでしょうか。進路に関しても、お子さまに合う環境がどんなところかを考えやすくなるかもしれません。

学校と連携して子どもを支えるために

「学校に行きたくない」という子どもを支えるには、学校との連携も欠かせません。学校と連絡を取り合い、学校の様子を把握しておくことができれば、取り残されているような不安感も軽減しますし、学校への復帰もスムーズに行いやすくなるでしょう。

学校への相談は「こんなことで……」と遠慮しなくて大丈夫

保護者のかたにとって、学校への相談はハードルが高く感じられるかもしれません。「学校を休みたい」と言い始めた段階などでは「こんなことで相談してもいいのかな?」と迷われることもあるでしょう。

学校側としては、そのような段階でも、気になることがあればぜひ相談してほしいと思っています。学校も様子が気になる子どものサインは察知していることが多いものです。保護者のかたからの連絡を機に、お互いの情報共有が進んだり、サポートをしやすくなったりするため、保護者のかたとの連携を強めたいと思っているはずです。

気になることがあれば早めに「子どもの様子について相談したい」と学校に連絡を入れてください。担任や養護教諭、スクールカウンセラーなど、状況に合わせて対応していただけるでしょう。

また「学校には登校できても教室には行きづらい‥‥‥」というような場合は、保健室登校など教室以外の居場所について検討してくれる場合もあります。学校側の体制にもよりますが、お子さまの状態に応じた支援を提供してもらえるように、話し合っていきましょう。

学校以外の支援先の活用も

不登校への対応は、学校以外でも支援が行われています。
たとえば、自治体(区市町村教育委員会など)が設置している「教育支援センター(適応指導教室)」は不登校の子どもの居場所としての機能が大きく、個人やグループでの学習支援を行っています。また、市区町村単位で設置が進んでいる「子ども(児童)家庭支援センター」では、電話や来所等で子どもや保護者からの相談に対応しています。悩みを抱え込まないためにも、SOSを伝えられる相談先を見つけていけるといいですね。

保護者のかたの心のケアも大切に

ここまで、保護者のかたにできるサポートについてお話ししてきましたが、お子さまの心に寄り添うためには保護者のかたの心のケアも大切にしていただきたいということをお伝えしておきたいです。

保護者のかたは、心配や不安が募るあまり、心がいっぱいいっぱいになっていませんか? 自分のことは二の次とせず、ご自身のメンタルヘルスも大切にしてくださいね。

不安は抱え込まず、アウトプットを

メンタルヘルスの維持には、不安のアウトプットをすることをおすすめします。「不登校はいつまで続くんだろう?」「勉強に遅れは出ないかな」「友達ができなくなってしまわないだろうか」「将来は大丈夫かな」などさまざまな不安があるかと思いますが、1人で抱え込まずに、次のような方法で周囲のかたに頼ってみてはいかがでしょうか。

・信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう

・子どもの担任や養護教諭、スクールカウンセラーに相談する

・子どもの不登校を経験している(した)親同士が交流する場(対面・オンライン)などに参加する

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが学校に行けていないときは、保護者のかたも不安や焦りがあるでしょう。中高生になると、なかなか話をしてくれなかったり、保護者を遠ざけたがったりしてとまどうこともあるのではないでしょうか。
お子さまの不安や心の回復には、時間がかかるケースも少なくありません。
保護者のかたは、周囲の協力も得ながら、長い目でお子さまにとって何が幸せかを考えて、お子さまに寄り添ってあげてください。
また今後、進級や進学を考える際は、お子さまに合う環境はどんなところか、お子さまの希望も聞きながら、少し視野を広げて検討してみることも大切です。

関連記事:
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【アンケート】お子さまは「学校に行きたくない」と言うことがありますか


出典
※1
令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_1.pdf

プロフィール


相樂直子(さがら なおこ)

宮城大学看護学群准教授。博士(カウンセリング科学)。
学校心理学が専門で、子どもたちのメンタルヘルス、学校における多職種連携などについて研究している。
大学での養護教諭養成教育のほか、小・中学校のスクールカウンセラー、巡回相談心理士としても活動している。
著書に『先生に知ってほしい家庭のサイン』(少年写真新聞社)『教師・保育者のためのカウンセリングの理論と方法 : 先生をめざすあなたへ』(北樹出版)など。

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