見て、触って、楽しむ作品!犬島の「フラワーフェアリーダンサーズ」とは?【直島アート便り】
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岡山市唯一の有人島である犬島には、銅の製錬所跡を活用した美術館や、集落の風景を取り入れたギャラリーがあり、島の歴史や日常に触れながらアート作品に出会うことができます。2022年4月、犬島にてアーティスト 大宮エリー氏による新たな作品が公開されました。今回は、大宮氏の新作「フラワーフェアリーダンサーズ」について紹介します。
犬島ってどんなところ?
犬島は、岡山市の宝伝港から定期船で約10分の場所に位置しており、徒歩1時間ほどで一周することができる小さな島です。古くから採石が盛んに行われ、大阪城や岡山城の石垣に使われるなど、良質な花崗岩の産出で知られています。1909年には銅の製錬所が建設されましたが、銅の価格の暴落によってわずか10年で操業を終えました。製錬業や採石業の最盛期には約3,000~5,000名の方が暮らしていたといわれていますが、産業の衰退とともに人口が減少し、現在の犬島の人口は約40名です。(2022年3月現在)
2008年にかつての銅の製錬所を保存・再生した犬島精錬所美術館、2010年に集落に作品を展開する犬島「家プロジェクト」が開館し、今では島の中でさまざまなアート作品を鑑賞することができます。
犬島精錬所美術館 写真:阿野太一
犬島「家プロジェクト」F邸 写真:Takashi Homma
2010年から始まり、2022年で5回目を迎えた瀬戸内国際芸術祭は、3年に1度、香川県と岡山県の12の島と2つの港を舞台にした現代アートの祭典です。犬島は岡山市唯一の参加会場となる島で、開幕に向けてアーティスト 大宮エリー氏による作品の制作が始まりました。
犬島らしい作品の完成に向けて
大宮氏は制作にあたり、実際に犬島を訪れ、島の歴史・文化に触れたり、島民とお話したりするなかで、作品の構想を膨らませていきました。
近代化産業遺産である銅の製錬所跡を視察している様子
「私自身、犬島の小さな草花、自然、海に、癒されたのと、犬島は小さな島で、ぐるりと歩いて回ることができます。そんな手のひらサイズの面白さもあります。そして住んでいる方々の個性の強さ、優しさ、元気にいつも励まされます」と大宮氏は語ります。
そして、大宮氏は犬島において人びとの交流のきっかけとなるような作品やイベントを展開するプロジェクト「INUJIMAアートランデブー」を構想しました。島民や来訪者は、島に点在している作品を目印にランデブー=待ち合わせをし、休憩しながら、島を散策することができます。
犬島の島民とともに完成した作品
プロジェクトの第一弾作品として、大宮氏は「フラワーフェアリーダンサーズ」の作品制作を行います。大宮氏は犬島を歩いて回るなかで、毎年島の盆踊りが行われる《ちびっこ広場》に作品を設置したいと考えました。この場所は島の玄関口である港の近くにあります。
犬島の盆踊りの様子
また、大宮氏は犬島の草花や自然にインスピレーションを受け、実際に犬島で咲いている草花をモチーフにすることを考えます。
実際に作品のモチーフになったひめきんぎょそう(左)、たんぽぽ(右)
作品に関して大宮氏は「犬島の皆さんが大事にされている盆踊りの場所にそれを盛り上げるべく、犬島の草花たちが、妖精になって盆踊りを踊りに広場の端っこにいる。そんなシーンを考えました」と語っています。
大宮氏は島外の工房で制作中の様子を犬島の方に配信したり、写真やメッセージを配布したりして制作過程を共有しながら作品づくりを進めました。最終的に、島民と一緒に作品の設置位置を決め、2022年4月、「フラワーフェアリーダンサーズ」は完成しました。
「フラワーフェアリーダンサーズ」 写真:大宮エリー
島民向けの内覧会では、「ええなぁ」「ええ色じゃあ!」「かわいいのおぉ!」との感想が飛び交い、島の方々が笑顔で鑑賞する様子が見られました。
島民内覧会の様子
作品をとおして交流が生まれていく
「フラワーフェアリーダンサーズ」は目で見て楽しむだけでなく、実際に作品に触れることができます。作品に触れ、さまざまな視点で作品を鑑賞するなかで感じるものがあるかもしれません。
作品に触れて鑑賞する子どもたち
今後は島内にさらに作品が展開し、島内外の人びとが参加できるイベントも実施する予定です。
「フラワーフェアリーダンサーズ」には、島のかたと訪れるかたの交流が生まれてほしいという大宮氏の想いがこもっています。実際に犬島を訪れ、作品をとおして犬島の自然や暮らしを感じ、新たな人との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
作品の詳細はこちらからご確認ください。
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