美術館の閉館日を活用して地域にひらく「直島町民感謝祭2021」【直島アート便り】
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瀬戸内海に浮かぶ直島にはアート作品や施設が点在しており、島の方々は身近にアートを感じながら暮らしています。
2021年11月、アート施設の閉館日を利用し、一日を通して、各施設での作品鑑賞やプログラムに参加できる直島町民限定のイベントを開催しました。直島で暮らす人々はどのような体験をしたのでしょうか。
直島に暮らす人々とアート
直島町は、香川県香川郡に属する大小27の島々からなる町で、その中心に位置するのが直島です。直島の面積は約8 k㎡で、現在およそ3,000人が暮らしています。(2021年4月現在 ※1)
古くは製塩業や海運業で栄え、大正時代以降は銅の製錬所を中心に発展してきました。ベネッセアートサイト直島の活動は、1989年にオープンした直島国際キャンプ場から始まりました。1992年に美術館とホテルが一体となった施設としてベネッセハウスが開館して以降、ベネッセアートサイト直島によって、直島にはさまざまなアート作品や施設が点在するようになります。
ベネッセハウス 写真:山本糾
1990年代後半、ベネッセアートサイト直島の活動が集落に広がっていくようになると、作品制作や施設運営に関わる方や来島者と交流する方など、日常のなかでアートに関わる方が増えていきました。現在も直島の子どもたちが地域学習の一環でアート施設を訪れたり、帰省した家族と一緒に作品を鑑賞したり、島の方々は老若男女問わずアートに触れる機会があります。
スタッフと一緒に多様な見方で鑑賞する
2021年11月に行われた直島町民限定のイベント「直島町民感謝祭2021」では、一日を通して各施設で作品鑑賞ができ、多様なプログラムが展開されました。閉館日で直島町民のみの貸し切りということもあり、普段とは異なるプログラムを実施した施設もあります。
今回、李禹煥美術館では、単に作品を鑑賞するだけでなく、作品を鑑賞して感じたことを川柳にするプログラムが行われました。
スタッフと対話しながら作品を鑑賞して川柳を考えます
参加者は、作品から感じたことを自分なりに川柳で表現することで、作品に対する思いや考えを深めるとともに、他の参加者の川柳から自分とは異なる視点でも作品を味わいました。参加者からは「秋の文化的なプログラムがぴったりで、まだ頭の中が5・7・5です。普段あまり体験ができないことができて、楽しく思いました」といった声が寄せられています。
他にも、昔の思い出を語り合いながら集落にある作品をめぐるツアーや、宿泊者しか見ることができないベネッセハウスのホテル内を見学するツアーが行われ、それぞれの参加者は施設のスタッフと対話しながらこの日だけの特別な体験を楽しんだようです。
集落の昔の姿に思いを馳せながら作品をめぐります
普段はなかなか見ることができない客室やホテル内の作品をスタッフが案内します
オリジナルの作品をつくる
「直島町民感謝祭2021」では、作品鑑賞だけでなく、作品をつくる体験もできます。ベネッセハウスでは、廃材になるアクリルを使ったオリジナルキーホルダー作りのワークショップが行われました。
参加者は、まずスタッフと一緒に館内の作品を鑑賞します。作品を見ながら自分の好きな色やキーホルダー作成に使用したい色を探します。ワークショップ会場に到着すると、それぞれ好きな形のアクリルを選び、赤・青・黄色・緑の染液を使って思い思いの色に染めていきます。
キーホルダーを染液につけて染めている様子
完成したキーホルダー
このキーホルダーは、使われなくなったアクリルを生まれ変わらせたものです。空き家を改修して空間そのものを作品化するなど、「在るものを活かし、無いものをつくる」という直島におけるアート活動のコンセプトにもつながる体験になったのはないでしょうか。
瀬戸内の景色をキャンバスにする
地中美術館では、館内にある地中カフェにて直島の大装飾画をつくるワークショップが行われました。地中美術館のクロード・モネ室には、「大装飾画」と呼ばれる縦2m×横6mの《睡蓮の池》が展示されています。今回は瀬戸内海が望める窓をキャンバスに、マジックやセロハンを使い、参加者全員で作品を制作しました。
セロハンに好きな形を描きます
窓に切り取った形を貼りつけていきます
自然の景色を背景とした巨大なキャンバスを使って作品をつくるのは、地中美術館でも初めての試みで、参加者にとっても自宅ではなかなかできない体験だったのではないでしょうか。また、時間帯によって変化する瀬戸内の景色に目を向け、改めて直島の良さを感じるきっかけにもなったかもしれません。
地域のなかにアートがあること
最後に、「直島町民感謝祭2021」にお寄せいただいたコメントを紹介します。
「町民のためのイベント、とてもすてきです。直島のアートを見直し、住民としての誇りを確かめる良い時間をすごせました」
「子どもから大人まで夢中になってキーホルダー作りができました。子どもが楽しそうにしていたので来て良かったと思いました。次回あればもっといろんなプログラムに参加したいです」
「町民参加のイベント、わくわくして楽しい雰囲気でした。遅い時間までやってくださっているのもうれしいです」
アンケートに答えると景品がもらえるガチャを回すことができます
直島では身近にアートに触れることができる機会が多くあります。今回、島の方々は、各施設の趣向を凝らしたプログラムを通して、新たな作品の楽しみ方を知ることができたのではないでしょうか。あなたの地元にあるアートにも別の要素をプラスすることは、日常がより彩り豊かになるきっかけに繋がるかもしれません。
※1 直島町ホームページ
https://www.town.naoshima.lg.jp/smph/government/gaiyo/toukei/jinnkou20191113.html
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