子どもの「思考力」を鍛えるには?将来を変える親の対応法・考える力の育み方
小学校では2020年度、中学校では2021年度から全面実施されている新しい学習指導要領。基本的な考え方として、これからの子どもたちには「幅広い知識と柔軟な思考力に基づいて判断すること」が求められています。
しかし近年の国内外の学力調査によれば、日本の子どもたちの思考力・判断力・表現力には課題が見られる、との結果も。お子さまの思考力を鍛えるために家庭で何ができるのか? 考え方や対応法をご紹介します。
「思考力」とは「考える力」
学習指導要領のなかで言われている思考力は、おもに問題発見・解決のために必要な≪集めた情報によって仮説を立てたり、推測したりして問題を解決し、さらに次の問題解決に生かす≫などの「考える力」を指します。
思考力の土台となるのは豊富な知識や経験。「こんな情報がある・こんな経験があるから、こういったこともできるのでは」のような発想が思考力につながると言えます。
なぜ思考力が重要視されるのか?
これからの未来は技術の発達により、簡単な仕事・作業は機械やAIに置き換わっていくと予想されています。考える必要のない「指示通りに動くこと」「ミスのない作業」「数字の確認」などは、人ではなく機械のほうが確実かつ低コスト。そのため人が担う仕事は、機械ではまだ難しい「考える・工夫する」「新しく発想する」などの思考力が求められる可能性が高くなります。
今の子どもたちが大人になるころは、今現在ある多くの仕事はすでに無くなっているかもしれません。時代に合ったスキルを育て、すべての子どもたちが社会に対応できるようにすること。それが思考力を育てるべき理由だと言えるでしょう。
子どもの思考力を鍛える方法・習慣5つ
思考力は、一朝一夕で身につくものではありません。そのため、日常的な習慣でトレーニングを積み、鍛えていくことがポイント。筋トレと同じで、時間はかかりますが、確実にしっかりとした成果をあげることができます。次の5つの方法・習慣で、鍛えていきましょう。
1.理由を考えるクセをつける
思考力を鍛えるためには、結論に至る理由や原因を考えることが効果的です。なぜなら、理由や原因を考えることは、筋道立った論理的思考力を身につける訓練となるためです。そのため、普段のおしゃべりから理由を問う声かけをしていけるといいでしょう。
その際「思考力を身に付けさせなきゃ」と難しいテーマや問いかけをしようと思わなくても大丈夫。「どうして夏は暑いんだろう?」「どうしてマスクをするのかな」といった当たり前なことを深掘りするものでもいいですし、「どうしてあの歌は人気なんだろう?」というようにお子さまの興味のあるものを題材にするのも良いでしょう。
普段交わされる何気ない会話も、脳に刺激を与え、思考力を鍛える絶好の場となるはずです。
2.買い物で比較して考えるクセをつける
思考力は、物事を比較して共通点や相違点、それぞれの特徴を見つけ出すプロセスの中でも磨かれます。その訓練として最適なのは、買い物。お子さまと一緒にショッピングに出かけ「トマトが3種類あるけど、どれにしようか?」などと比較を促すような問いかけをしてみてください。
「これは一番安くてお得だよ」
「でも、高いものはきっとそれだけいいところがあるんじゃない?」
「あ、有機栽培って書いてあるよ。だから、安心だし味もおいしいのかも」
といった会話を通して、比較して考える観点や、思考プロセスが磨かれていくはずです。
3.タイムスケジュールを考える
目標やゴールから逆算して何をすべきかを計画することも、思考力を鍛えるのに役立ちます。逆算思考は、受験勉強や仕事など人生のあらゆる場面で役に立つ考え方です。このトレーニングのためには、お子さま自身にタイムスケジュールを考えさせるのがおすすめ。21時に寝るまでに宿題とテスト勉強を終わらせて、ゲームをする時間も確保するには・・・と逆算思考の力を自然と磨いていくことができるはずです。
4.お手伝いを通して考え抜く体験をする
1から考えて実行まで完遂させる考え抜く体験が、思考力に磨きをかけます。考え抜くトレーニングをするためには、お手伝いを活用するのがおすすめ。「週末の夕飯のメニューを考えて、買い物メモを作って」といったように、メニューを考え、必要な材料を洗い出し、冷蔵庫の在庫と見比べて買い物メモを作成すると複数のプロセスが求められるものだと、より実践的なトレーニングとすることができます。
また、お手伝いは学校や塾の勉強とは違うテーマや頭の働かせ方が求められるもの。普段と違う思考を訓練することにもつながります。
5.ニュースや読書について話し合う
ニュースや読書は論理的な思考力を養成することにうってつけです。その際ポイントとなるのが、自分の疑問や意見を考えることと、それを他の人と話し合うこと。ただニュースや本で紹介されている情報を受動的に受け取るだけでなく、疑問や意見を持つなど主体的な態度で臨むことで、情報の解釈も思考の深まりも促進されます。「どうしてこんな結果になったんだろう?」「こういう方法は考えなかったんだろうか」「私ならこうするのにな」と能動的な態度でニュースを見たり、読書をするようにしましょう。
さらに、自分の疑問や意見について話し合えれば、自分の考えを言葉にして相手に伝えるトレーニングにもなります。また、相手の反応を受けてさらに思考を深めていくこともできるはず。家族での夕食の時間を活用するなどしていけるとよいでしょう。
家庭で保護者ができるサポート4つ
「思考力」を鍛えるために家庭でできること、それはいろんなことにチャレンジさせて経験を積ませてあげることです。お子さまが何かをしようとしたとき、先を考えて「それはちょっと」など口を出してしまいがちですが、それも必要最低限のみにするのがベター。次の4つの点を心がけて、お子さまの思考力磨きのサポートをしてあげてください。
1.判断を責めたり、質問で追い詰めたりしないように配慮を
例えば、意見が分かれたときにお子さまの案を採用して実行したとします。そこで保護者が懸念していた出来事が起こった場合、「ほら、だから言ったじゃん」「次からはこうするからね」など言っちゃうこと、ありませんか?
この場合、お子さまは「自分の判断が失敗につながった」と感じているうえに責められ、さらに「次からは親の判断に従う」ことになるため、考えるキッカケがなくなってしまいます。
2.「考え方」を日常のなかで実践し、自然に身に付けよう
こういった場合、先にそれぞれの案のメリット・デメリットを考えつつ結果を予測して(仮説)提案し、お子さまと一緒に考えながら選ぶようにするのがおすすめです。もし選んだ案で「失敗」と判断されるようなことが起こっても、そこからどうすればリカバリーできるかを一緒に考え(振り返り・次の問題解決への仮説立て)、最良の結果を目指しましょう。
3.子どもからの質問には思考を深めさせる返しを
好奇心旺盛な子どもは「これについて教えて」「これってなに?」と質問してくることも多いものです。そんなときは、思考力を磨くチャンス。すぐに回答を示すのではなく「あなたはどう思う?」と考えを促すような返答をしてみましょう。お子さまが自分の考えをまとめるのには、時間がかかることもあるかもしれません。また、考えが拙いこともあるかもしれません。でも、根気よく待ち、考えられたことそのものを認め、褒めてあげるようにしてください。
そうすれば「考えるのは楽しい」「考えてよかった」という実感が芽生え、自分自身で考えてみることへの前向きな意欲がわいてくるはずです。
4.対等に考えを述べ合える雰囲気づくり
お子さまが自由にのびのびと考え、アウトプットできるようにするには、雰囲気づくりも大切です。保護者と子どもといえども「教える・教えられる」ではなく、対等に考えを述べ合うことができれば、お子さまは萎縮せず、のびのびと思考力を磨いていけるはず。そのため、お子さまの意見や考えに興味を持って聞く姿勢を示すのも重要です。
保護者の方とのやり取りで「人と会話して考えを深めるのは楽しい」と実感できれば、友達や先生とも積極的に対話し、さらに思考力を磨いていけるようになるでしょう。
まずはお子さまの考えを認めることから
お子さまがひらめくアイデアはたいていの場合、大人にとって非常にムダに見えがちです。そのため「もったいないからやめなさい」「宿題が先でしょ」などと言ってしまいがちですが、思考力を鍛えるならまずは止めずに様子見を。
それを実際にやってみて、ムダだったかどうかを判断するのはお子さま自身。その経験が、将来の仕事のなかでの重要なひらめきにつながる可能性もゼロではないのです。「やってみた結果どう思ったのか」を経験しないと、次のステップには進めません。まずはお子さまのアイデアを認め、いろんなことにチャレンジさせてあげましょう。
まとめ & 実践 TIPS
思考力を育てるためのキッカケは、勉強だけではなく友達との遊びや保護者との会話、ひとりでやる≪実験≫のなかなど、日常のいろんなところに隠れています。ぜひ自由に発信・表現させてあげましょう。
そしてお子さまが考えて出した結果を、保護者は否定せず受け止める努力を。いったん受け止めたあと、社会のルールとしてはどうなのか、どんなふうに生かせる可能性があるのかなど一緒に話し合い、考えていけるとよいかもしれませんね。