「考える力」を伸ばしたい。対話を通じて子どもに考えさせるコツを、話題の本の著者に聞きました

「どうして勉強しないといけないの?」。大人も答えに窮する普遍的な質問を投げかけ、親子にコミュニケーションの時間を生み出した前作『どう解く?』(2018年)。コロナ禍を経て社会の価値観が急激に変わっていくなか、『どう解く?』の第2巻が発売されました。マクドナルドとのコラボも話題です。3人ともお子さんがほぼ同学年という著者の山﨑博司さん、木村洋さん、二澤平治仁さんに、子どもが本質的に考えるため親ができることを伺いました。

この記事のポイント

大人は、子どもの考える力に
気付いていないのかもしれない

——『どう解く?』が生まれた経緯は?

山﨑:いじめや自殺など子育てしていく上で不安になるニュースも多いですが、なかなかそういったテーマに対して親子や学校で深く話し合うことはありません。そこで、コミュニケーションできるツールを作りたくて。2巻にはジェンダーなど今ならではのテーマも多く盛り込んでいます。
二澤平:個人的には、日本の教育はオープンなふりをしてオープンではないところがあると感じています。道徳にしても、「こう言わないといけないよね」という暗黙のルールがある気がしていて。小さい頃からディスカッションを日常生活で取り入れると、面白い発見につながるかも、という思いもありました。

——『どう解く?』で学校での出張授業もされていますが、そこで感じた子どもたちの悩みや想いについて教えてください。

山﨑:「友情と愛情の違いは?」という問いが子どもたちから出てきた時感じましたが、大人と同じく人間関係で悩んでいる子が多い印象でした。こういう問いは最終的には「そもそも友達って何だろう」という問いに行き着くことが多いです。ある子どもは、友達を「親にも話せない自分の悩みを打ち明けられる人」と言っていて、なるほどなと。こんなことを考えているのか」というハッとする答えを出してくる。
木村:「正義のヒーローはどうして殴っていいのか」と聞いたら、「本当は泣きながら殴っているのかも」と答えたり。大人が思い付かないことを発言するんです。大人は、子どもの可能性に気付いていないのかなと反省させられます。
二澤平:普段の教育では、「こう言わないといけない」というのを無意識に求められている部分があって、「1+1=2のような、答えが一つだけということはないんだよ」「何を言ってもいいよ」としっかりオープンにすることで、子どもたちもやっと自分の思いを伝えられるのかなと感じました。

子どもの考える力をもっと
引き出す親のスタンスとは?

——そうして子どもの想いや考えを引き出していくためには、大人はどうしたらいいでしょうか?

二澤平:「答えが出ない、わからないということも認めよう」というスタンスを大切にしています。大人は何でも知っている偉い存在じゃなくてもいいし、1人の人間として同じ目線で対話し、大人も一緒に学んでいくという姿勢を見せるのも大切。「知らない」「わからない」ということが、先の学びにつながるんだと見せたいです。
山﨑:「正解はないよ」「答えを探すためではないよ」と明言して、君はどう思う? とか、他の国や時代を変えて考えてみようとか、考えが広がって行くようなニュアンスで伝えています。
木村:道徳の授業では「いじめはダメです」など先生にほめられそうな答えがありますよね。僕も怒られないように無難なことを言って授業を乗り切っていた記憶があります(笑)。でも答えがすぐには出ないことをワークショップで問うと「すごい考えて疲れた」と言ってくれたりして、それはうれしい。『どう解く?』でも、大人が答えを導いてしまわないように気を付けました
山﨑:褒められる答えを、子どもたちはわかっているんですよ。授業で模範解答ばかりになることを課題と感じている先生もいます。ある有名小学校の先生は、「手を挙げることがアクティブではない」とおっしゃっていて、ハッとしました。授業で「ハイ、ハイ!」と手を挙げることが優秀で素晴らしいわけではない。なぜならそれは考えなくてもわかることを反射神経的に答えているからだと。むしろ、「どうしよう?」と思わず黙ってしまうことが大事だとおっしゃっていて、いかに考えさせるかは、教育現場でも家庭の会話でも、子どもを伸ばすために大人が工夫しないといけないことだなと思いましたね。
木村:日常生活でも、そうした会話はできると思います。「食べていい動物といけない動物の違い」について話したとき、「昔は鯨がスーパーでも売っていたんだよ」「何で今はないの?」、「豚さん牛さんはどうして食べていいの?」と一つの問いを介して広げていけますよね。

——大人にとっても難しい問いですね。

山﨑:答えはなくても、コミュニケーションすることに価値があると思います。ジェンダー、SNSやいじめについても、親が関われることが大きい。うちの下の子は年少ですが、3歳の子でも話し合うことはできる。「どうして好きと言われてうれしいのに、言うのは難しいのかな」と聞いたら、「赤ちゃんだから」と言っていて(笑)。「学校になぜ行くんだろう」と上の小学生に聞けば、「外で走ったり運動もできるから」と答えました。大人は学校=机に向かい勉強する場所と発想しますが、子どもは走り回って遊んだり給食を食べたり、場所を包括して捉えている。当たり前なようで、認識が違うことに気付かされますし、面白い発想をするなと発見があります。
木村:僕は、「考えることをクセづける」ことを、小さい頃からしてあげるといいと思っています。「どうしてだろう」「何の意味があるんだろう」と、いろいろなことを自分なりに解釈したり調べることをクセづけるため、子どもには基本的に「なんで?」とよく聞きます。何かが好きと言っていたら、なんで? とまず聞き返したり。
二澤平:子どもが反射的に答えたことを、親も反射的に深掘りする(笑)。そうやって無意識の、考えの源泉を認識させるような問いがかけられるといいですよね。

親子のコミュニケーションが広がる
“深堀り”の方法

——どのように深掘りしていくのでしょうか?

二澤平:僕が具体的にしているのは、わざとふざけてみたり、知っているけどわざと間違ってみたり。正解したら次、といかないように、一つのテーマに絞って話を盛り上げて行くことは意識しています。
山﨑:僕は、話し合う時間をしっかり取ろうと思っています。こんな問題があるんだけど、どう思う? と。わからないと言われたら、「こう考えてみるとどう?」など助け舟を出したり、「お母さんや先生だったらどう思うかな?」など聞いてみたり。パパは僕とお話がしたがっているということも感じさせられますし、話す機会をセットアップするのは結構大事かなと。
木村:僕は、考えることは訓練だと思っているので、何回でもしつこくやります。子どもって、考えることは嫌いじゃないんですよ。そのきっかけを与えられないだけで、ヒントをちゃんと出せば一生懸命考える。特に小学校一年生くらいにもなれば、自分は大人だと思っていますから(笑)、そこをうまくくすぐって、「さすがだね、なんで?」とどんどん聞いていきます。東大生の家には図鑑がたくさんあると聞き、うちでも真似して図鑑を揃えていますが(笑)、図鑑を眺めていると、1つ読むとどんどん興味が飛び火していく。そんな感じで会話も広げています。
二澤平:僕は会話する場を設けるよりも、何か好きなことにかこつけて一緒に考えることをよくしますね。うちの子は絵を描くのが好きなので、それをテーマに「これをこうしたらこんな絵になるね」「こんな色の○○があったらどう?」「こんな動物がいたら?」とか、好きなことの延長で会話を楽しみます。子どもによって得意不得意や興味が違うので、それをうまく利用して、刺激の仕方を大人が工夫するというのは、テクニックとしてありそうですよね。

まとめ & 実践 TIPS

子どもの考える力を育むために大事なのは、「大人も一緒に考える」ことかもしれません。とはいえ忙しい毎日でディスカッションする機会をどうやって作ればいいか悩んでいる人にとって、時事問題を盛り込んだ絵本などを活用してみるのはいい方法。新しい時代や価値観に大人もさらされている今、立ち止まって一緒に考える時間を持つことは、大人にも貴重な機会になりそうです。

取材・文/有馬美穂

『答えのない道徳の問題 どう解く? 正解のない時代を生きるキミへ』
文/やまざきひろし 絵/きむらよう 絵/にさわだいら はるひと ¥1,650/ポプラ社

プロフィール

山﨑博司、木村洋、二澤平治仁

山﨑博司(やまざきひろし)

1983年生まれ。早稲田大学大学院修了。コピーライター。現在、二児の父。

木村洋(きむらよう)

1980年生まれ。京都精華大学卒業。アートディレクター。現在、二児の父。

二澤平治仁(にさわだいらはるひと)

1975年生まれ。明治大学卒業後に渡米。アートディレクター。現在、二児の父。

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