ヘリコプターペアレントによって育った子どもの特徴4つ|過保護にならないための対処法とは?
- 育児・子育て
子どもを育てるのは、とても大変です。心配なこともたくさんあります。ケガや病気、失敗をさせないように、過保護や過干渉になることもあるでしょう。ただ、それが行き過ぎると子どもの成長にマイナスになる可能性もあります。その1つが、ヘリコプターペアレント。今回は、ヘリコプターペアレントの特徴や、子どもに与える影響について、詳しく見ていきます。
ヘリコプターペアレントって何?
ヘリコプターペアレントは「過保護」や「過干渉」と同じ意味
「ヘリコプターペアレント」とは、ヘリコプターがホバリングするように子どもを見張り、子どものやることに必要以上に関わり続ける親のこと。アメリカで生まれた言葉で、過保護や過干渉と同じ意味で使われることが多いです。
ヘリコプターペアレントは、「子どもが傷つかないようにしたい」という思いから、子どものやることに必要以上に口を出したり、行動を制限したりします。そうすることで、困難なことや失敗を遠ざけ、子どもを守ろうとしているのです。
ヘリコプターペアレントの問題とは?
子どもを大事に思う行動なのに、なぜ問題なのでしょうか?
それは、子どもが本来するべき経験を奪ってしまうからです。経験とは、自主的に行動したり、決断したり、考えたりすること。失敗したり間違えたりしたときに、乗り越えようと挑戦することも経験です。
経験していないことはできるようになりません。その結果、常に人を頼らなければ行動できなくなる可能性があります。極端にいえば、親のサポートなしでは生きていけない、依存体質の大人になってしまうということです。
カーリングペアレントとの違いは?
ヘリコプターペアレントと同義の言葉として「カーリングペアレント」があります。カーリングペアレントとは、カーリングで選手たちがブラシで氷をこすって、ストーンが思い通りに進むようにする動作からきた言葉で、ブラシで氷をならすように、子どもの行動に先回りして失敗や困難にぶつからないように整えてしまう過保護で過干渉な保護者を表しています。
ヘリコプターペアレントがアメリカ発祥の言葉であるのに対して、カーリングペアレントはデンマーク発祥の言葉。呼び方は違っても、過保護で過干渉な子どもの自立を妨げる保護者を表す言葉として近い意味を持つ言葉です。
「過保護ではない」と「放任」は違う
「過保護がダメなら、放任すればいいのか」という人がいますが、これは違います。「放任」は、子どもに関心を持たずにすべてほったらかしにすること。「過保護ではない」は、行き過ぎた保護はしないということです。つまり、適切な保護は必要だということ。
病気のときに看病をしたり、子どもを見守ったりするのは、過保護ではありません。子どもを信頼して、程よい距離感で見守るのも過保護ではありません。年齢や性格、必要な場面とそうでない場面を見極め、子どもと関わっていく……。とても難しいことですが、それが子育てでは大事なことなのです。
ヘリコプターペアレントによって育った子どもの特徴4つ
ヘリコプターペアレントによって育てられた子どもには、4つの特徴があります。本人の性格によるところもありますが、こういった傾向があるというのは覚えておきましょう。
①1人で問題解決ができない
困難や失敗を経験していないため、1人で問題解決ができなくなります。その結果、周りに依存してしまったり、問題を放置してしまったりする可能性が出てくるのです。
たとえば忘れ物をしたときには、「先生に相談する」「友達に借りる」「家に取りに戻る」など、さまざまな解決方法があります。これは、経験して自分で考えたからこそできること。忘れ物をするたび必ず親が届けていたり、忘れ物をしないように親がすべてやってあげたりしていれば、こういった経験ができないままになります。
大人になって課題に向き合い対処できるのは、子どもの頃からたくさんの経験をしているから。ヘリコプターペアレントによって育てられると、それができなくなってしまうのです。
②自分を好きになれない
ヘリコプターペアレントは子どもを大事に思っているはずですから、子どもも自分のことを好きになれそうなイメージがしますよね。しかし、実際は逆なのです。
ヘリコプターペアレントは、子どもが失敗しないように先回りします。つまり、子どもの行動が制限されるということ。「それはダメ」「危ないからこっちにしよう」など、やろうとしていることや考えを否定されることも多くなります。親の希望と違う行動を取れば、責められたり叱られたりすることも増えるでしょう。
そういったことが繰り返されると、自己肯定感が低くなります。自分のやることや考えることに自信が持てず、自分自身を嫌いになってしまうのです。
③ネガティブ思考
自己肯定感が低いというのは、ネガティブ思考にもつながります。
ヘリコプターペアレントによって育てられると、行動や考えを否定されることが多くなります。それが続くと、もし良い考えが浮かんだとしても、「ママはダメって言うんじゃないか」「これをしたらパパに怒られるだろうな」と考えるように。まさしく、ネガティブ思考ですよね。
こういった思考が強くなると、自分の意見や希望があったとしても主張することができません。常に親の顔色をうかがい、親の意見に従って生きていく……そうなってしまったら悲しいですよね。
④精神的に不安定になりやすい
自分のことが好きになれず、ネガティブ思考になると、心は不安定になります。「ダメ」「いけない」など、否定的な言葉に触れる機会が多くなれば、気持ちも落ち込むはず。行動や考えを否定されているだけなのに、自分自身を否定されたような気分になってきます。大人だってそうですよね。
また、ヘリコプターペアレントによって育てられた子どもは、親に認めてもらうために完璧であろうとします。「80点ではダメ、100点でなければいけない」と思って生きるのは、きっと苦しいでしょう。認めてもらえる機会が少ないため、自信が持てず、精神的に弱いまま生きていかなければならないのです。
あなたは大丈夫?ヘリコプターペアレントの特徴5つ
次は、ヘリコプターペアレントとよばれる親にはどんな特徴があるのかを見てみましょう。
ただし、年齢によってはOKとなる行動もあります。たとえば「服を着替えさせてあげる」は、新生児であれば必要な行動ですが、中学生であればやり過ぎですよね。つまり、子どもの成長に合った関わり方ができているかどうかがポイント。それを踏まえて見ていきましょう。
①子どもがすべき問題解決をしてしまっている
子どもの問題を勝手に解決してはいませんか? これは、ヘリコプターペアレントの特徴です。
たとえば、友達が使っているおもちゃをお子さまが欲しがったとき。「じゃあママが借りてきてあげる」と親が行動することはないでしょうか? これは、本来子どもが解決するべき問題を奪っていることになります。こういったときは、「貸してって言ってみようか」「一緒にお願いしてみる?」というように、問題解決の手助けをしてあげることが大事です。
親が問題を解決してしまうと、対処法が学べず、失敗する機会もなくなります。そうすると、大人になってからも課題解決ができず、さまざまな場面で困ってしまう可能性があるのです。
②子どもがすべき決断をしてしまっている
人生には決断しなければならないことがたくさんあります。それらをすべて決めてしまうのも、ヘリコプターペアレントの特徴です。
親がすべて決めてしまうと、考える力が育ちません。大人になって「決断しろ」と言われても自分で決められず、誰かに任せてしまうことになります。進路や就職先、結婚相手といった大きな決断であっても、自分でできなくなってしまうのです。
「何を着る?」「何を食べる?」といった日々の小さな決断の積み重ねが、いずれ大きな決断をするときの力になります。失敗しても問題ない小さな決断を、子どもの頃からたくさん経験させてあげたいですね。
③自分の理想を子どもに押し付けている
保護者のかたの夢や理想を、子どもに押し付けてはいませんか? これも、子どもの課題に踏み込んでいることになります。
「パパの夢だったお医者さんになってほしい」「ママは小さい頃ピアノが習えなかったから子どもにはやらせたい」といった希望は、きっとあるでしょう。もちろん、そう思うことは悪くありません。しかし、それを押し付けるのはNG。子どもの意志や希望を無視し、選択する自由を与えないことになるからです。
また、理想が強すぎると子どもの自信も育ちません。親の理想に沿わない行動は、すべてダメだということになるからです。理想を持つことは大事ですが、親と子どもは別の人間であるということは忘れないようにしたいですね。
④子どもが失敗を体験する機会を奪っている
子どもに失敗をさせないように先回りするという特徴もあります。子どもを大事に思うがゆえの行動かもしれませんが、これは子どものためにはなりません。
もちろん、失敗すれば悲しくなり、傷ついて落ち込むこともあるでしょう。しかし、それを乗り越えれば成長することができます。失敗しないために次はどうしたら良いかを考えることもでき、自分で危険や困難を回避できるようになるのです。
親が先回りして成功する道を与えてあげれば、もちろん安全で心配もないでしょう。しかし、それを一生続けることはできないはず。自分の力で歩んでいくためには、失敗を恐れずにチャレンジしていくことが必要なのです。
⑤子どもに尽くし過ぎている
大事な我が子ですから、何でもしてあげたいと思う気持ちもあるでしょう。しかし、やり過ぎはNG。尽くし過ぎるのは、ヘリコプターペアレントの特徴です。
すべて与えてあげれば、子どもはラクでしょう。予定を決めてあげれば、困ることもありません。失敗も挫折もなければ、傷つかずに済みます。ただそれは、親が尽くしてあげられるから実現できるもの。「そろそろ大人だから自分でやってほしい」と思っても、手をかけ過ぎた後では難しいのです。
愛情表現の方法は「尽くす」だけではないはず。一緒に喜んだり悲しんだり、「大好きだよ」と伝えたり、抱きしめたり……。そういった方法で、愛情を与えていきたいですね。
ヘリコプターペアレントにならないためには?
子どもへの愛情が行き過ぎていることが、モンスターペアレントになる原因の1つでもあります。つまり、誰でもなりうる可能性があるということです。そうならないためには、どうしたらよいのでしょうか?
アドバイスをやめてみる
まずは、アドバイスをやめてみましょう。これは、放置するということではありません。「先回りのアドバイスをやめる」ということです。
子どもが失敗しないように、やる前から「こっちの方がいいよ」とアドバイスするかたも多いでしょう。これを、ちょっと我慢してみてください。そして、子どもの決断を受け入れてあげてください。
もちろん、失敗することが目に見えている場合もあるでしょう。ただ、それが危険なことでなければやらせてあげてください。そして、失敗させてあげてください。そうすることで子どもは、どうすれば良いかを考えることができます。小さいお子さまなら、「次はこうしてみようか」など、後から一緒に考えてあげるのも良いでしょう。
子どもに任せて決断させる機会をつくる
子どもに決断する機会をたくさん作ってあげましょう。そのためには、子どものことを信じて任せるという勇気が必要です。
決断は、小さなことから始めてみましょう。「着る服を自分で選ぶ」「絵本を子どもが決める」「夕飯のおかずを考えてもらう」など、簡単なことでOKです。大事なのは、子どもが決めたことに文句を言ったり口を出したりしないこと。親の希望と違っていても、受け入れてあげてください。そうすることで、徐々に自信がついてきます。
ただ、今まで決断の機会がなかった子どもの場合、始めから自分で決めるのは困難です。その場合は、選択肢を提示してあげるのがおすすめ。「AとBとどっちにする?」と質問して、子どもに決めさせてあげましょう。これを繰り返すことで、選択肢がなくても自分で決められるようになっていきます。
ヘリコプターペアレントについて理解し行動を見直そう
子どもが安心して生活し、成長していくためには、親の力が不可欠です。見守るだけでなく、手を出したり、先回りしたりすることもたくさんあるでしょう。大事なのは、その「加減」です。必要以上に干渉したり行動を制限したりするのは、ちょっと行き過ぎ。年齢に合っていない保護をするのも同様です。
子どもの成長を見守り、自立していくための手助けをするのが子育て。生活面での自立も必要なことですが、精神面での自立も大事です。自分の行動は、本当に子どものためになっているのか……。今と、そして将来のことを考えながら、子育てをしていきたいですね。
まとめ & 実践 TIPS
「自分はヘリコプターペアレントかもしれない」と思ったのであれば、今から行動を変えてみましょう。失敗や間違いは、悪いことではありません。それは子育てでも同じ。いろんな経験を積みながら、保護者のかたも子どもと一緒に成長していきましょう。
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