~メディアと接する時間の長い子と短い子の比較から~ メディアとの上手な付き合い方とは?

今回は2008(平成20)年11月に小・中・高校生を対象に行われた「放課後の生活時間調査」の中から、≪メディア≫に関する調査結果を取り上げます。メディアと接する時間の長い子と短い子の放課後の時間配分などを比較しながら、上手なメディアとの付き合い方を探っていただければと思います。





放課後の時間配分は3割がメディア、3割が勉強、1~2割が遊びや習い事

まずは放課後の時間のなかで、メディアが占める割合を見ていきます。

【図1 放課後の時間の使い方(平均時間) 単位:分】
図1 放課後の時間の使い方(平均時間) 単位:分


●放課後のメディアにかける時間は、小学生は80分以上、中1~2生は90分以上、中3生は100分以上
グラフを見ていただければ一目瞭(りょう)然ですが、放課後のほとんど時間が「メディア」と「勉強」にかけられていることがわかります。
前回もお伝えしたとおり、放課後4~6時間のうち小学生~中2生までは「メディア」と「勉強」にかける平均時間はほぼ同じで、小学生が80分以上、中1~2は90分以上。中3生は勉強時間が3時間を超えますが、メディア時間も100分超。遊びや習い事は学年段階が上がるにつれ減る傾向にありますが、メディアと勉強時間は増え続けます。


メディア時間の長い子は、基本的に勉強時間が短い傾向

メディア時間の長さで2グループに分け、放課後の時間の使い方を比較します。

【図2 放課後の時間の使い方(小学生、メディア時間別) 単位:分】
図2 放課後の時間の使い方(小学生、メディア時間別) 単位:分


【図3 放課後の時間の使い方(中1~2生、メディア時間別) 単位:分】
図3 放課後の時間の使い方(中1~2生、メディア時間別) 単位:分


【図4 放課後の時間の使い方(中学生全体、メディア時間別) 単位:分】
図4 放課後の時間の使い方(中学生全体、メディア時間別) 単位:分
※注 メディア時間は、「テレビ・DVD」「本・新聞」「マンガ・雑誌」「音楽」「携帯電話」「パソコン」の合計。平均時間と分布により、「0分」~「60分」の子どもを「短い」、「75分」以上の子どもを「長い」に分類した。


●メディア時間の短い子の放課後の時間の配分は、1割がメディア、4~5割が勉強
学校段階が上がっても、メディア時間の短い子がメディアにかける時間は30分以下で、放課後時間の約1割程度。その代わり、勉強には時間をかけており、小学生でも100分以上で放課後時間の約4割を、中1~2生では120分以上となり放課後時間の5割以上を費やしています。

●メディア時間の長い子の放課後時間の配分は、4~5割がメディア、2~3割が勉強
一方、メディア時間の長い子のメディアにかける時間は小学生で130分以上、中学生で150分近くで、放課後時間の4割を超えます。それに比べて勉強時間は小学生で60分、中1~2生で80分弱。圧倒的にメディア時間より勉強時間は短くなり、メディア時間の短い子と反対のバランスになっています。
勉強時間の長さを比べると、メディア時間の長い子はメディア時間の短い子より、小学生で40分、中学生で60分ほど勉強時間が短いと言えます。

●メディア時間の長い子は、勉強だけでなく、習い事やその他(睡眠・生活・移動・学校・部活動など)の時間も短い。にもかかわらず放課後時間は40~50分長い
小学生なら、メディア時間の短い子の放課後時間が約4.5時間であるのに対して、長い子は約5.2時間。中学生では、前者が約4.8時間であるのに対して、後者は約5.5時間。
メディア時間の長い子は、主に勉強・習い事・移動・部活動などの時間が少ないのですが、家族との会話や食事時間、睡眠時間などは削らないでほしいところです。


メディアはかなり遅い時間まで使用されている

次に、どんな時間帯にメディアを使用しているのか確認します。

【図5 メディアの時刻別行為者率】
図5 メディアの時刻別行為者率(小学生)
図5 メディアの時刻別行為者率(中学生)


●就寝時間のピークを過ぎるまで、メディアの使用率は下がらない
「就寝時間のピークは小学生10時、中学生11時」という調査結果があります。「メディアのピークは小学生19時45分、中学生は21時45分」ですが、その後の使用状況は就寝時間のピークである10時(小学生)、11時(中学生)直前まであまり下がらず、約25%の子どもがメディアを使用しています。就寝時間のピークを境に急減することから、寝る直前までメディアを使用している子どもが少なからずいると推察されます。


メディア時間の長い子は、時間の使い方の自己評価が低く、心身の疲れを感じる割合は高い傾向

最後にメディア時間の長さ別に、「時間の使い方に関する自己評価」と、「心身の疲れ」について見て行きます。

【図6 「時間の使い方」の自己評価(小学生、メディア時間別)】
図6 「時間の使い方」の自己評価(小学生、メディア時間別)


【図7 「時間の使い方」の自己評価(中学生、メディア時間別)】
図7 「時間の使い方」の自己評価(中学生、メディア時間別)
※注 時間の使い方の自己評価は、「あなたの日ごろの時間の使い方は、100点満点で、だいたい何点ぐらいだと思いますか」の設問への回答(「0点」から「100点」までの10点刻み)。


【図8 あなたは次のように感じることがありますか(小学生)】
図8 あなたは次のように感じることがありますか(小学生)


【図9 あなたは次のように感じることがありますか(中学生)】
図9 あなたは次のように感じることがありますか(中学生)
※注 「とても感じる」+「わりと感じる」の%


●中学生では、メディア時間の長い子ほど「時間の使い方」の自己評価が低い
中学生になると、メディア時間の長い子ほど時間の使い方の自己評価が低い傾向が現れます。小学生ではほとんど差はありませんが、わずかに中学生と同じ傾向が見られます。

●メディア時間の長い子ほど、「いらいらする」「やる気が起きない」傾向がある
小中学生ともに、メディア時間が長い子のほうが短い子より「いらいらする」「やる気が起きない」と感じる傾向が見てとれます。特に中学生では「やる気が起きない」が8ポイント以上高くなります。やる気が起きないからこそ、メディアに時間を費やしているのかもしれません。


メディアは楽しい時間を家族や友達と過ごす大切なツールだけど、流されないこと。ルールを決めて、上手に付き合いたい

小・中学生に「楽しい時間」「つらい時間」を聞きました。回答の中から、メディアに関連するものに限ってご紹介します。

<楽しい時間(メディアに関係する回答)>
●小学生
「DVDを見ている時や、友達としゃべっている時。家族でテレビを見る時」
「おいしいものを食べている時や、家族でゲームをしたり、テレビを見たりしている時」
●中学生
「パソコンをやっている時や友達と話やメールをしている時」
「一人でぼんやりと好きな音楽を聞いている時」

<つらい時間(メディアに関係する回答)>
●小学生
「ゲームをする時間がない」
「CMの時間」
●中学生
「きらいな授業の時、テレビつけてもしょーもないのしかしてない時、体調が悪い時、やる気出えへん時、すべった時、景色が悪い時、給食がまずい時、おなかすいてる時、5時間目(ねむたい)、テスト前、上手にしゃべられへん時」
「メールが来ない時」


メディアに関連する回答のほとんどは「楽しい時間」に見られ、多数あります。一方、5,000件以上寄せられた「つらい時間」の中でメディアに言及している回答は、上記の4件程度。メディアが楽しいコミュニケーションの場や、リラックスできる時間を提供してくれていることは明らかです。
ただし前述の通り、メディア時間が長い子は、勉強時間や生活時間が短く、さらに精神的にもイライラや無気力感が強くなる傾向があります。思いあたる節があるご家庭では、まずはメディアにかける時間の見直しから始められてはいかがでしょう。完全にゼロにするのでも無制限にするのでもなく、親子でルールを作ったり、声かけを工夫したりするなどして、メディアとの上手な付き合い方を見つけられたら良いですね。


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