朝になると「学校に行きたくない」と泣く子ども……どう対応すればいい?[教えて!親野先生]
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子どもから「学校に行きたくない」と言われると、保護者としては心配でたまらなくなるものです。辛い気持ちを抱える子どもの姿に胸が痛み、どうすればいいか戸惑ってしまうことも多いでしょう。子どもの気持ちに寄り添いながら、解決するために保護者にできることはどのようなことでしょうか。教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
【質問】「学校に行きたくない」と泣いたり、頭痛や腹痛を訴えたりする小3の子ども。保護者にできることは?
小学3年生の息子のことです。3年生になってから、朝になると「学校へ行きたくない」と泣いたり、「頭が痛い、おなかが痛い」と言ったりします。
1年生の頃にもそういう時期がありましたが、2年生ではほぼスムーズに登校しました。
なんとか連れて行くと、ちゃんとできているようで、友達もいるし、どうしてなのか疑問です。
私の子育てが間違っていたのでしょうか? どう修正すべきでしょうか? 試行錯誤の毎日です。
(ほーたさん)
親野先生からのアドバイス
ほーたさん、拝読いたしました。
子どもが学校に行きたくないという状態は、親としては一番心配ですね。我が子が苦しんでいる様子を見ているのは、本当につらいことだと思います。
毎日、心が安まるときがないのではないでしょうか。こういうときは、元気に学校に行ってくれるだけでありがたいと感じるものです。
まずは学校に行きたくない原因を探ってみて
ところで、このような問題を解決するには、まず原因になるものを探るということが大切だと思います。
先生との関係、クラスの友達との関係、集団登校の班の人間関係、親との関係、苦手な行事や苦手な勉強がある、給食が苦手などなど、いろいろなことが考えられます。
先生や友達との関係は、一番ありそうな原因です。親からは友達に見えていても、実はその子が原因だったりということもよくあることです。集団登校をしているところでは、その班のなかの人間関係が原因になることもあります。親との関係で多いのは、母子分離不安です。3年生になって新しく始まった行事や勉強などが原因ということもあるかもしれません。
先生が給食を残すことにうるさい、ということが原因になっていることもけっこうあります。
ご相談のお子さまの場合、1年生でそういう時期があり、2年生でほぼスムーズに登校し、3年生になってから「朝になると『学校へ行きたくない』と泣いたり、『頭が痛い、おなかが痛い』と言ったりする」状態になったとのことです。
そこから考えてみると、次のようなものが原因として有力かもしれません。
先生との関係、友達との関係、苦手な行事や苦手な勉強がある、先生が給食にうるさい……。
でも、有力ではあっても、違うかもしれません。とにかく、あの手この手で原因を探ることをおすすめします。
その方法を、いくつか挙げてみます。
子どもから話を聞き出すには、聞き方を工夫する
一つ目は、本人からうまく話を聞き出すことです。先生や友達との関係を探るには、次のような聞き方がいいと思います。
「○○君はこの頃どう?」「□□先生はこの頃どう?」などです。「○○君はちょっといばるよね」「□□先生はちょっと厳しいよね」などと、水を向けてみるのもいいかもしれません。
「○○君にいじめられてない?」とか「先生に叱られてない?」などと直接的に聞くと、子どもが警戒してしまうこともあります。まあ、子どもの性格にもよりますので、性格に応じてうまく聞き出してほしいと思います。
電話で担任に相談とサポートをお願いする
二つ目は、担任から聞くことです。私は、電話で相談するのが一番いいと思います。手紙や連絡帳より、先生の反応を見ながら話ができるからです。直接会って話すのもいいと思いますが、取りあえずは電話の方が気楽だと思います。この場合、原因を探ると同時に、何か手を打ってもらうように依頼することも可能です。ぜひ、そうしてください。
電話は、先生の勤務終了後から30分以内にかけるといいと思います。30分以内ならまだ学校にいます。それに、この時間帯が一番電話に出やすいのです。勤務中だと会議や接客などで、電話に出にくいこともあります。
子どもの学校の友達に聞いてみるのも手
三つ目は、他の子に聞くことです。次のような聞き方がいいと思います。
「この頃、うちの△△はどう?」「この頃うちの△△ちょっと元気がないと思わない?」。これによって、我が子と先生の関係や友達関係などが分かることがあります。担任の先生が知らないことを、クラスの他の子が知っているということはよくあることです。「△△君は給食を食べられなくて困ってるよ」などという話がでてくるかもしれません。
クラスの子が親に話している情報がヒントになることも
四つ目は、他の子の親に聞くことです。つまり、クラスの子の親に聞くのです。クラスの子が、その親に「△△君は整頓が苦手でいつも先生に怒られてるよ」などと言っているかもしれません。
元の担任と保健の先生が問題を把握していることも
五つ目は、元の担任や保健の先生に聞くことです。元の担任は、自分が受けもった子が新しい学年でうまくやれているか気にしているものです。ですから、その子の問題をつかんでいることも十分考えられます。また、保健の先生も、登校渋りに関して担任から相談を受けていることが考えられます。
場合によっては専門家に相談を
このようにして、いろいろと原因を探ってみるといいと思います。また、もしかしたら、親子関係や生育歴に原因があることも考えられます。その場合は、専門家に見てもらうのが一番でしょう。
専門家としては、たとえば、心理カウンセラー、心理療法士、臨床心理士、小児科医、小児精神科医、心療内科医などです。
敷居の低い相談口としては、担任、保健の先生、市町村の教育委員会などがいいと思います。担任や保健の先生は専門家ではありませんので、専門的な内容には応じられません。ですが、どこに相談や診断を求めればいいかという提案をすることができると思います。
原因探しと同時に、先生や友達にサポートをお願いする
以上のようにして原因を探ると同時に、取りあえずできることをしていくことも必要です。まず、先生に頼んで、我が子の友達関係に気を配ってもらうといいと思います。
親は我が子に友達がいると思っていても、実際はそうではないのかもしれません。先生によく見てもらって、もし友達がいないなら、仲のよい友達ができるように気を配ってもらうことです。子どもにとって、やはり仲のよい友達がいることが一番の心の支えです。
また場合によっては、朝、直接クラスに行けないという事態になるかもしれません。そのような場合は、クラスではなく一度保健室に行かせてもらうという方法があります。
一度保健室で気持ちを整えて、仲のよい友達に迎えに来てもらって、それで一緒にクラスに行くという方法も効果があるのです。
子どもを追いつめず、ストレスを和らげることを心がけて
一つ、肝心なことを言い忘れていました。一番苦しんでいるのは、子ども自身だと思います。ですから、あまり親が追いつめないようにしてやってください。親が追いつめることで返って問題の解決を遅らせてしまうこともよくあるのです。
子どもは、かなりのストレスを抱えているはずです。ですから、大切なのはストレスの解消であり、癒しです。家に帰ってきたら、ゆったりとくつろいだ気持ちで過ごせるようにしてやってください。そして、休日には、思いきりストレスの解消ができるようにしてやってください。
いつも、受容的に話を聞いてやってください。人間は、受容的に話を聞いてもらうだけでも、かなり精神的なストレスを和らげることができます。
「学校に行きたくない」と言うことはわがままではない。限界を主張できた子どもの成長を受け止めて
今、お子さまがそのような登校渋りをしているというのは、ある意味でとてもいいことでもあるのです。というのも、その子は今、「自分はもう限界だよ」と主張することができているからなのです。
そして、自分のなかに溜め込んでいたものを吐き出しているからです。これは、一種の浄化作用でありカタルシスなのです。決してわがままではないのです。この点は、とても重要です。
今、このようなことを表面化しないで、そのまま押さえ込んでいると、後で必ずでてくるのです。中学生くらいにでるかもしれませんし、高校生のときや、またはその後かもしれません。でも、いずれはでるのです。
小さいときからずっとしっかり者でとおってきて、突然、思春期頃に豹変する子がいるのです。突然学校に行かなくなったり、極度に反抗的になったり、自傷行為をしたりという子がでてくるのです。
この子たちは、それまで押さえ込んでいたのです。もっと早くでていればよかったのです。もちろん、思春期ででたのは、それより遅くでるよりはよかったと言っていいのですが。
このようなわけで、小学3年生の今、それがでているのは、ある意味いいことなのです。親は、それを我が子のアピールと受け止めてほしいと思います。それは、決してわがままという問題ではないのです。
私ができる範囲で、せいいっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。ほーたさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。
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