不登校の子の様子を見にきた先生や友だちにどう対応する? 「会いたくない」と言えない本人の気持ちを尊重して[不登校との付き合い方(16)]

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学校を休んでいる間、学校の先生や友だちなどが訪ねてきたとき、どう対応したらいいでしょうか。また、直接家にやってくるのではなく、SNSなどインターネットを経由しての接触に関しては? 「不登校新聞」編集長の石井志昂さんに伺いました。

この記事のポイント

本人に「どうしたいか」を聞くことが大切

不登校中、先生や友だちが訪ねてきたときは、まず子ども自身に、会いたいのかどうかを聞いてください。このとき、「先生来たけど、どうする?」「…(無言)」というように、返事をしないことがよくあります。その無言が意味するのは「ノー」だと思ってください。本人は会いたくないのだけれど、来てくれた相手に申し訳なくて「いやだ!」とは言いづらいから黙る、という傾向があります。

もし、本人が会いたいといえば、訪ねてきた人を家に上げたらいいし、無言だったら「ちょっと寝てるみたいだから」と断ってあげましょう。できれば前もって、誰が来たらどうするのかを聞いておけるのが一番いいです。

学校を休むようになった直後は、心身を休めている時期。会いたくない人が来たら、寝てもいられません。すると、どんどん回復が遅くなってしまいます。

保護者の判断で、来訪者を勝手に家に上げないで

先生や友だちが来ると、保護者はつい、よかれと思って訪ねてきた人を家にあげたくなるかもしれません。もし、保護者が話したい相手だったら、家の外で会ってほしいです。家の固定電話は保護者がでるというルールにして、先生からの連絡事もできるだけ保護者の携帯電話にかけてもらうようにしましょう。家にかかってくる電話に子どもが出て、トラブルになったケースもあります。

先生は非常に忙しいので、家に電話をしてくるということは、ほんとうに先生が心配している証拠。ただ、子どもがその先生に心配してもらいたいかどうかは別です。もしかしたら、その先生が不登校の原因かもしれないということもあるわけです。

友だちでも先生でも、絶対来てほしくないという相手に関しては言葉を濁すので、そこをわかってほしいと思います。とにかく、本人の気持ちを聞いてあげましょう。

心身ともにしっかり休める環境を、とにかく作ってあげてほしい

子どもがいやがっているのは、家族以外の人からのコンタクトとは限りません。たとえば、お父さんが「学校に行け」と説教してしまうといった場合は、お父さんと子どもの距離をとるようにしてほしいです。これは、一生というわけではなく、とにかく今だけは、ということです。

学校を休んでいるのは、心の傷を回復させているから。前回、その回復のプロセスをお伝えしましたが、そのプロセスはいくら保護者が焦ってもショートカットすることはできません。子どもが回復に集中できる環境調整のひとつとして、休んでいる状態を邪魔しないであげることは大切です。

ひとりひとり不登校の原因は違うので、本人の意志を尊重してください。中には、先生の訪問を楽しみにしていたという人もいます。そういう場合は、必ず自分から「会う」という意思表示をします。

インターネットの使い方についても、本人の意思を尊重して

特に学校を休んでいる間、インターネットを使える子は、ずっと使いっぱなしになることが少なくありません。不登校だけではありませんが、インターネットを使える子どもの場合、インターネットを使わせる、スマホを持たせるときに、家族でルールを作ることも大切です。

メールやSNSなどテキストメッセージに関しては、先生から生徒へ送ることは禁止されているはずです。友だちからも直接のコンタクトがあるでしょうけど、そこは自分でどうするか決断してもらうしかないかもしれません。

直接できる対策としては、年齢に応じたフィルタリングをするくらいしかないでしょう。それよりも大事なのは、不登校に限らず、家庭でインターネットを使うときのルールを決めることです。

インターネットは公共の場であること、他人も自分も傷つけるような使い方はしてはいけないということを、きちんと伝えましょう。保護者として守ってほしいということを暗黙の了解にしないで、はっきり言葉で伝えてください。多くの子どもは、何回かはルールを破ってみたり失敗したりはするけれども、納得はしているはずです。

インターネットを使うことが問題ではなくて、どういう行動をとるかが問題なのだということを、大人も子どもも理解してほしいです。

今、誰と話したくないのか、話したいのか、どうしていたいのかも含めて、どうか、子どもの意志を尊重してほしいです。

まとめ & 実践 TIPS

学校に行かないことによって、子どもは心身を回復させています。そのときに、話したくない人が家にやってくるということは、回復を遅らせることになります。家庭では、本人の意志をくんで、会いたくない人には会わせない工夫をしましょう。インターネットについても、保護者がどう使ってほしいかを伝えたうえで、本人の意思を尊重しましょう。

出典
不登校で子どもが負った心の傷 どんなプロセスで回復していく?[不登校との付き合い方(15)]
https://benesse.jp/kosodate/202102/20210221-1.html

プロフィール


石井志昂

『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

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