令和版「人生ゲーム」で集めるものは、フォロワー!? ボードゲーム遊びで、多様化する価値観や社会の仕組みを体験する

コロナ禍により、家族みんなで遊べるゲームとしてボードゲームの人気が再燃しています。その中でも「人生ゲーム」は、保護者世代には定番ゲームでありながら、令和版はフォロワー数(=影響力)を競うなど、アップデートを続ける人気作品。お金の価値を学べるだけでなく、時代とともに変化する家族のあり方や働き方など、多様性を育むゲームとしての側面にも注目が集まっています。

そこで「人生ゲーム」の歴史とともに、その時代性の捉え方や現代社会を生き抜くための学びを、メーカー担当者ならびに教育専門家に尋ねました。

この記事のポイント

「子どもの自主性を育みたい」という想いが日本版誕生のきっかけ

初代アメリカ版人生ゲーム

「人生ゲーム」は、1960年代にアメリカで誕生したボードゲーム。すごろくのマス目に人生のイベントを配し「お金持ちになりアメリカンドリームを叶える」というコンセプトで大ヒット。それに目をつけたのがタカラトミー(当時のタカラ)でした。

1960年代の日本では、《お金の話をすることははしたない》という風潮が強く、《お金を稼いだ人が勝ち》というルールには、世間から少なからず抵抗がありました。しかしアメリカの子どもたちがゲームを通してお金の価値を学び、自主性を育んでいる様子を目の当たりにし「これからの日本の子どもたちにも必要なものだ」と感じ、強い決意で日本に持ち込んだのです。

世相を反映することで、価値観をアップデート

1983年、それまでのアメリカ翻訳版から一転し、日本独自のマスを加えた日本バージョンが誕生。初代から続くスタンダード版とは別に、テーマ版として1989年に発売された「平成版」が大ヒットし、それ以降、毎年の出来事や流行を盛り込む人気シリーズとなっていきます。これにより人生ゲームはリアルさを増し、その時代の経済感覚や家族のあり方をシュミレーションできるゲームに進化したのです。

バブルの世相を盛り込んだ「人生ゲーム平成版」(1989年)

ハイターゲット層に向けて企画されたが、幅広い年齢に支持され40万の大ヒットに。バブル時代を思わせる金銭取引のコマが特徴的。

<例>
・あなたも未公開株を手に入れるチャンス
・消費税導入前、大好きな二級酒を買い溜め

皇太子ご成婚で結婚に注目「人生ゲーム平成版V」(1993年)

当時話題となった「合同結婚式」や「現地離婚」など《結婚》が大きなテーマに。人生において結婚の重要性がまだまだ高かったことを示している。

<例>
・合同結婚
・「ブームに乗ってモツ鍋屋をチェーン展開」

バブル崩壊後の日本を描いた「人生ゲーム平成版VII」(1995年)

バブル崩壊後の就職難要素がゲームの随所に。「資格カード」「コネカード」といったアイテムも導入され、過酷な時代を生き抜いていくために必要なものが変わったことを表している。

<例>
・ “リクルート整形”をする
・新型宝くじ“ナンバーズ”を買う

いかに夢を叶えるかで競う最新版「人生ゲームジャンボドリーム」(2020年)

お金を稼ぐ目的は同じながら、どれだけ多くの「夢」が叶えられるかを競う。夢カードにも「ちっちゃい夢」「まあまあな夢」「ジャンボな夢」があり、リアルな日常の中で夢を見つけるための手助けになりそう。

<例>
・料理配達サービスの副業で大忙し。
・サーフィンからのエクストリーム出社に成功。

「令和版」は全く新しい価値観を採用

2019年に発売されたテーマ版「人生ゲーム+令和版」(生産終了)で、競うのはお金ではなくフォロワーの数。さらにスタートもゴールもないという画期的な作品。「人生は一本道ではなく、好きなルートを選び自分で切り開いていくもの」という、今の価値観を反映しています。
通常版とは遊び方がかなり異なりますが、フォロワーを増やすために戦略を立てるという、デジタル化に伴った令和時代のライフスタイルを養うことができ、常に時代と共にある人生ゲームの特色が強く出ています。

子どもが「人生ゲーム」から得られる3つの学び

こうした変遷をしてきた人生ゲームですが、教育面ではどのような効果が期待されるのでしょうか。教育専門家(愛知淑徳大学 人間情報学部 准教授)の佐藤朝美氏によると、大きく3つの学びがあるといいます。

1.逆境を《かわす》力

「困難や逆境をしなやかにかわし,乗り越える力を心理学用語で《リジリエンス》と言いますが、それをシュミレーションできるのが人生ゲーム。例えばルーレットで偶然止まったマス目がよくないものでも、ゴールまで何が起こるか分からないですよね。偶発的におこる困難を《かわし》ながら、心折れず、最後まで諦めずにやり遂げることで今の時代を生き抜く力が育まれます

2.お金の価値を学ぶ

「人生ゲームが日本に上陸した50年前に比べれば前進してはいますが、まだまだ日本でのお金の教育は遅れていると感じます。少子高齢化の日本において、お給料をもらうだけでない運用や投資への知識もこれからは重要。人生ゲームは基本的なお金の計算はもちろん、時代に合わせた経済の状況や様々な金融知識を楽しみながら学べるツールと考えます」

3.社会規範や保護者の価値観

「人生ゲームではよいことをしてお金を得るだけでなく、悪いことをすればペナルティが課せられます。基本的な社会規範を押し付けではなく、自然と学ぶことができます。また《全財産を失って悔しがるパパ》など、子どもたちにとって思わぬ親の姿を見られるのもゲームの醍醐味。マス目への反応から、保護者の価値観や人生観を言葉にせずとも伝えてくれる面もあると思います」

全国の子どもたちと取り組む「SDGs版」とは

ゲームの要素を教育に取り入れたり、教育にゲームを活用したりすることは、ゲーミフィケーションやシリアスゲームというキーワードで、現代教育において大変着目されており、今後も益々展開されていくと考えています」と佐藤氏も述べるなか、発売元のタカラトミーも「みんなでつくる人生ゲームプロジェクト」という取り組みを2018年から始めています。

中でも「SDGs版」は、全国の小中学校の子どもたちが、SDGsについてのオンライン授業を受けながら、自分たちの地域や学校のためにできることを考え、オリジナルの人生ゲームを作るというもの。「私たちが思っている以上に子どもたちは環境についてよく知っているし、大人の行動を見ていると感じました」と驚きの声があがるように、大人たちにとっても学びを与えてくれる作品になっているようです。

まとめ & 実践 TIPS

楽しく遊びながら「人生の過程」をシュミレーションできる人生ゲームは、不安定な時代を生きる親子に役立つ学習ツールでもありました。皆さんも家族で遊んでみてはいかがでしょうか。

取材協力/タカラトミー
取材/橘川麻実

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