「甘やかす」と「甘えさせる」の意味の違いとは? 子どもの自立心を育てよう

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「甘やかす」と「甘えさせる」の意味の違いとは? 子どもの自立心を育てよう

似ているようで違う「甘やかす」と「甘えさせる」。「これは甘やかし?」「この甘えは受け入れていいの?」など、子どもの甘えについて、迷ってしまう保護者のかたもいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、「甘えには発達上大切な効果があり、また上手に甘えさせることが大切です」と発達心理学・幼児教育の専門家である東京家政大学の岩立京子先生はおっしゃいます。甘やかすと甘えさせるの違いと、甘えさせることの大切さについて具体的に見ていきましょう。

この記事のポイント

「甘えさせる」と「甘やかす」の違いは?

「甘えさせる」と「甘やかす」の違いは?

まずは、「甘えさせる」と「甘やかす」の違いから見てみましょう。

「甘えさせる」とは?

「甘えさせる」とは、子どもの欲求を年齢や発達段階、その時の子どもの状況に応じて、受け入れることです。

幼児期の子どもの甘えの例を挙げると……

・抱っこなどのスキンシップを求める

・「見て見て!」と注目を求める

・できるのに「できない!」「やって」と言う

・「あれ何?」と何度も聞いてくる

などがあります。

「もう大きくなったのに抱っこなんて」「できるなら自分でやってほしい」そう思う保護者のかたの気持ちはとてもよくわかります。

しかし、甘えさせることは、お子さまに安心感を与え、保護者のかたとの「愛着(信頼関係)」の形成につながります。そこで得た安心感や信頼感、自己肯定感を土台にして、お子さまは外の世界へと踏み出し、自立していくのです。

そのため、例に挙げたような甘えは、保護者のかたの都合が許す限り、受け入れてあげるのが望ましいといえます。

「甘やかす」とは? 「甘えさせる」との違いも

一方で「甘やかす」とは、子どもの欲求を必要以上に受け入れたり、子どもが本来自分でできることを親が代わりにやり過ぎたりすることです。

甘やかしの例は……

・子どもは歩きたいのに、保護者の都合でベビーカーに乗せ過ぎてしまう

・荷物を持てる年齢なのに、保護者が代わりに全部持ってしまう

・お菓子やおもちゃをねだられると、すぐに毎回買い与えてしまう

などです。

子どもは、本来「見たい」「知りたい」という欲求や知的好奇心を持っています。子どもの「歩きたい」や「自分で荷物を持ってみたい」などの、「やってみたい」という気持ちを、保護者のかたの都合で常に受け入れない状態が続くと、結果として「歩きたい」や「自分で荷物を持ってみたい」という気持ちがなくなることがあります。

また、欲しいものがすぐに何でも手に入ると、子どもは我慢を覚える機会が持てず、欲しいものが手に入らないと、大きくなってもすぐに怒ったりすねたりするようになるかもしれません。

甘やかしは、一見子どもに優しく接しているように見えますが、長期的に見て、子どもの成長や自立、我慢の機会を奪うことにつながります。ここが、安心感から自立へとつながる「甘えさせる」との違いです。

「自立心」を育む土台をつくるために、保護者のかたは先取りしてどんどん与え続けるのではなく、「甘え」という子どもの欲求をくみ取り、応答することが大切なのです。

子どもを甘やかし続けるとどうなるの?

子どもを甘やかし続けるとどうなるの?

では、子どもを甘やかし続けると、どのような影響が出る可能性があるのでしょうか? ここでは代表的な4つをご紹介します。

我慢ができなくなりやすい

「甘やかし」の例で挙げた、「子どもがお菓子やおもちゃなどをねだると、すぐに毎回買い与えてしまう」というのは、欲求が常に満たされている状態です。この状態が続くと、子どもは「自分の欲求はすべて満たされるものだ」と錯覚し、我慢ができなくなる可能性があります。

我慢を経験することは、自分をコントロールする力を身に付けるために必要です。無制限に物を与え続けることは、控えたほうがよいでしょう。

責任感が育ちにくい

甘やかし続けると、やってもらえることが当たり前になり、失敗や困難を経験する機会が減ります。そのため、自分で物事に責任を持つ姿勢が育ちにくくなる可能性があります。責任感がないと、「やってもらえないと相手を責める」「自分が失敗しても相手のせいにする」ということが起きるかもしれません。

お子さまがやりたいことは、可能な限りやらせてあげ、失敗した時は「それは嫌だったね」と失敗に共感し、お子さまの「悔しい」などのネガティブな感情を、保護者のかたが共有し、共にやり直したり、失敗への対処を考えたりしましょう。

それを続けることで、失敗した時に、少しずつ結果を自ら引き受け、その原因を考えたり、自分なりに対処していったりするようになっていくでしょう。

自己中心的になりやすい

自分の欲求が常に優先されている環境では、相手の気持ちに気付くことが難しいです。そのため、他者への配慮が欠けてしまい、自己中心的になる可能性があります。自分の思いどおりにならない状況を経験することは、子どもにとってきっとよい学びになるでしょう。

自立しにくくなる

常に甘やかされている状況では、自分で何かをしたり考えたりする必要性がないため、自立しにくくなります。自分で問題を解決する能力が育たず、成長過程でつまずくこともあるかもしれません。必要以上に欲求を受け入れてしまうことは、子どもの自立心の発達を妨げる可能性があることを、心にとどめておいてください。

「甘やかす」と「甘えさせる」はどう線引きしたらよい?

「甘やかす」と「甘えさせる」はどう線引きしたらよい?

「甘やかす」と「甘えさせる」の線引きは、「ここ」ときっちり分けることができず、本当に難しい問題です。子ども一人ひとりに合わせた対応が大切で、お子さまの様子を見ながら試行錯誤していく必要があるでしょう。ここでは、線引きのためのコツを2つご紹介します。

子どもの欲求に応答する

基本的に子育ては、「応答すること」が大切です。「応答」とは、子どもの欲求に応じることを指します。

たとえば、自分で靴を履ける子どもが「靴を履かせて」と言ってきた時に、履かせてあげたり、履かせる手助けをしたりすることは、子どもの欲求への応答になりますが、その欲求が「甘え」なのか「わがまま」なのかは、その子の発達や個性、その時の状況によって変わってくると思います。

一般的な発達の目安は線引きの基準になる

発達には個人差はありますが、「1歳を越えるころから歩けるようになってくる」「3歳ごろから自分の気持ちを言葉で表現できるようになる」などのように、子どもの発達には目安があります。一般的な発達の目安を知ることは、どこまで助け、どこから手を出さず見守るのかという目安となります。

たとえば、3歳を過ぎてもベビーカーにずっと乗りたがったり、抱っこをせがんだりする場合、そのまま乗り続けさせるよりは、「あっちに○○があるよ。いっしょに歩こう」と促してあげるのがおすすめです。

一般的な発達の目安を知り、そのうえでお子さまの個性を加味して、適切なサポートができたらいいですね。

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子どもを甘やかさず、自立を促す3つのコツ

子どもを甘やかさず、自立を促す3つのコツ

甘えを受け入れてもらえた子どもには、自信を持って新しいことに挑戦する意欲が育ちます。その意欲を見逃さずにサポートすることは、子どもの自立につながっていくでしょう。ここでは、自立を促す3つのコツをご紹介します。

自立のサインを見逃さない

子どもは自立のサインを出してくれます。自立を促すためには、そのサインを見逃さず、適切にサポートすることが大切です。

たとえば、1歳の子どもが自分で服を着たがる様子を見せた時は、「ここにお袖があるよ。手を伸ばしてごらん」と声をかけたり、手を入れやすいようにアシストしたりしながら、できる部分は見守ってあげるとよいでしょう。

できる環境を整える

自分でやってみてできないと、子どもは怒る時もあるでしょう。そんな時は、子どもが成功しやすいように環境を整えてあげるのがおすすめです。

たとえば、自分で靴を履きたいけれどうまく履けない時は、長靴などの履きやすい靴を用意する。立って長靴を履きたがる時は、玄関に手すりを設置するなど、自分でできる工夫をしてあげましょう。子どもが「一人でできた!」と感じることができれば、自信につながり、さらに自立に向かっていけるはずです。

失敗を受け止める

自立には、失敗が付きものです。差はあるものの、失敗した時は悔しいと思っていることでしょう。

そんな時に、「だからできないって言ったじゃない」のような否定的な声かけをしてしまうと、お子さまは自信をなくし「これからはやってもらおう」と思ってしまうことがあります。

「大丈夫だよ」と失敗を受け止め、「一緒にやってみようか」などの安心感を与える声かけができるといいですね。

まとめ & 実践 TIPS

子育ては試行錯誤の連続です。「甘えさせる」と「甘やかす」の線引きは難しく、時には「甘やかしてしまった」と感じることもあるかもしれません。しかし、それもお子さまとの関係を見直すきっかけになります。大切なのは、甘えを受け入れることで信頼関係を深め、子どもの自立心を育むことです。子ども一人ひとりの個性を尊重し、その子に合った対応ができるといいですね。

編集協力/海田幹子、Cue`s inc.

プロフィール


岩立京子

東京学芸大学名誉教授、東京家政大学子ども支援学部教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士の研修や、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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