災害時に大きな違いが!? 地震で水道が止まった時のトイレ問題に今すぐ備えたい
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ご家庭の災害対策として、見落とされがちなのが「水洗トイレ」。いつも通りには使えなくなるかもしれません。その準備をしておくかどうかで、災害後の生活は大きく変わります。地域や親子の防災活動に力を入れている名古屋市港防災センター長の大場玲子さんと、災害時のトイレの専門家・長谷川髙士さん(「チーム・トイレの自由」代表)より、「災害時のトイレ事情」と「在宅避難時のトイレの備えと実践」を、2回連続でお伝えします。
災害時のトイレ問題を知っておこう
災害後のトイレ問題がクローズアップされたのは、1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災でした。このとき、兵庫県内の10市7町(当時)で、全体の9割以上が断水し、水洗トイレも”いつも通り”には使えなくなったのです。
家のトイレが、何日も使えない状況を想像してみてください。
その後、「災害時のトイレ対策は必須」であることは認識されましたが、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災でも「水洗トイレがいつもどおりに使えない」というトイレ問題は起きています。そして、今後も起こるでしょう。
トイレがいつも通りに使えなくなる原因は、断水以外にも。
それは下水道の被災です。下水管が破損し、排水がつまったりすることもあります。上下水道の復旧には時間がかかり、過去の大災害ではトイレ問題は長引きました。
想像したくない話ですが、これらは実際に起こりうることなのです。
排泄(はいせつ)は我慢できません。私たちは1日に6〜8回(成人の平均)はトイレに行きます。だからこそ、「どんな状況になっても安心して排泄できる」選択肢を知っておきましょう。そして、準備をしておきましょう。
イラスト:名古屋市港防災センター提供
災害用トイレを知っておこう
災害時に使えるトイレにはどんなものがあるかについてお話しします。
避難所では、くみ取り式の「仮設トイレ」、下水道につなげる「マンホールトイレ」などが使われます。これらは支援物資として供給されたり、あるいは避難所を利用する住民で組み立てたりします。
多くの人にとって未経験のトイレを受け入れる必要が出てくるでしょう。
一方、在宅避難が可能であれば、そしてトイレ空間が安全で、洋式便器に袋をかぶせられるなら、自宅に「災害用トイレ」が作れます。
「いつもの便器にポリ袋をセットし、その中に用を足す」というもの。1回ずつ水分を含んだおしっこ・うんちを凝固剤などで固形化し、中の空気を抜いて、袋の口を固く結んで保管します(し尿ゴミが回収されるまで家で保管)。
水で流すことはできませんが、ふだんのトイレと同じように用を足せるので、ストレスは減らせます。
皆さんの中には、「災害用に風呂の水を残している」というかたもいらっしゃるでしょう。断水になっても、自宅の便器に破損がなく、風呂水を流しても問題なければ、水でトイレを流すことができます。
ただし、バケツに入れて一気に流さないと排泄物は流れませんし、1回流すのに4~6Lの水が必要です。力のない子どもや高齢のかたには難しく、長期間に及ぶと負担が大きくなるのです。
また、「水を流さないでください」と市町村から使用を制限されたら、必ず従ってほしいということも付け加えておきます。
次回は、水を使わないトイレの具体的な準備や使い方について、専門家のお話を紹介します。
マンホールトイレ
©名古屋市上下水道局
避難所の仮設トイレ
(提供:阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター)
まとめ & 実践 TIPS
現在のようなコロナ禍で災害が起きたときは、感染拡大防止のために分散避難となるでしょう。大切なのは、在宅避難になってもトイレの選択肢を持っていること、トイレの作り方や使い方を知っていること。特に、お子さまがいるご家庭では、いざというときに「大丈夫だよ」と言える準備をしておきましょう。
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