自分の心を「メタ認知」して、解決できそうなことから小さな成功体験を重ねよう

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イライラして子どもを叱ると、それはその時のことだけではなく、子どもが口答えして、さらにまた自分が頭にきて、ものすごく消耗するということを繰り返す悪循環につながります。この状況から脱却して、日々気分よく過ごせるようになるには、具体的にどんな行動が必要なのでしょうか。法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

自分の気持ちを客観的に観察する「メタ認知」でイライラを分析

イライラの原因には、不安やストレスがあるはずです。でも、この不安やストレスの原因は、はっきりしないものです。恐怖は、対象がハッキリしているので回避することができます。へびがこわいなら藪には近寄らない、おばけが怖いならこわい話のテレビ番組は見ないといったコントロールができます。でも不安やストレスは何が原因かわからないがためにコントロールが難しく、よけいに感情が不安定になります。こういう、対象がはっきりせず、なんとなく不安だとかストレスがあるという時の解決法として、問題解決のスキルが活用できます。

問題解決には、「メタ認知」が大事なカギを握ります。「メタ認知」とは、自分の気持ちを客観的に観察して分析することです。「メタ」とは「高次」という意味で、まさに高いところから自分を俯瞰するのです。

不安とストレスの解消法

  • ・問題解決のスキルを活用する
  • ・問題解決には「メタ認知」が大事なカギ

ステップ1 原因を考えてみる

まず、自分の気持ちを書き出すことには、効果があります。一度、不安やイライラの原因として思い当たることを、まとまらなくてもいいので全部書き出してみましょう。そうすると、「子どもが言うことをきかない」ことに怒っているようでも、それよりも、自分の時間がとれない、自由に外出できない、義理の家族が何かと干渉してくる、など、細かいことから大きなことまで、自分のイライラを高めている原因はひとつではないことに気づくはずです。

感情はひとつではなく、複数絡まっています。よく考えてみると、「ああ、原因はたくさんあるんだな」と気づくでしょう。子どもにばかり当たっていたけれど、実は、自分の中に問題があったということもあるはずです。そこを理解したうえで、自分の気持ち、つまり感情についてもメタ認知してみましょう。

イライラというと、怒りが最も強いと思うかもしれませんが、いちばん根底にあるのは何か考えてみましょう。表面に出てくる状態としてはイライラだけど、実は心の奥底にあるのは、くやしさかもしれません。そのくやしさは何が原因なのか。それを考えてみてもいいですね。その上で、先週の出来事についてまだ私は考えているんだ!ということになれば、まずはそれについて解決策を考えられるといいかもしれないですね。

ただし、興味深いことに、その感情が奥底にあっても、1日中その感情だけが心を支配しているわけでもありません。感情というのは複雑で、悲しみ・怒り・喜びなど複数の感情が常に入り混じってくるものであり、また時間と共に変化していることに気づきましょう。

ステップ2 解決方法を考えてみる、そしてベストな選択をする

さて、冷静に心の中を分析したうえで、自分がより幸せになるために、どう解決したらいいかを考えてみましょう。感情の原因がわかったら、次は、その解決方法をあれこれ考えてみます。いろいろ書き出した上で、しり込みしそうな突拍子もないすごい方法ではなく、すぐできそうな、自分にやれそうな方法をひとつ二つ選んでみましょう。

たとえば、コーヒーが大好きな人が、コーヒーを飲む時間もないということなら、まずおいしいコーヒーを飲む時間だけでも、家族に協力して確保させてもらうという解決法もあるかもしれないし、人間関係に原因があるなら、今週はいやな人には会わないですむ状況を作ってみるとか。すぐできそうな簡単なことを解決方法として選んでみましょう。

まとめ & 実践 TIPS

ストレスになっている原因を1回でスッキリ、とはなかなかいかないと思います。でも、小さいことでも解決する方法を考えて、やってみたらちょっと違ってきた、という成功体験ができればいいのです。こうした小さな成功体験を積み重ねていくことで、イライラは解消していけそう、という自信につながっていくと思います。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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