いま高校生に増えている「起立性調節障害」とは

誰しも寝起きは調子が整わず、いきなり元気はつらつ、ということはありません。体質や体調にもよりますが、体や脳は寝起きから少しずつ調子を整え、今日一日活動する準備をしていきます。ところが、最近は朝なかなか起きられず、午前中には倦怠感や立ちくらみなどに苦しんでいる高校生が増えています。朝のお子さまの様子を見て「最近なんだか朝だらしがない」と思っている方へ、それは病気かもしれません。最近高校生にも多く見られる「起立性調節障害」についてご説明します。


めまい、立ちくらみ、腹痛などもある起立性調節障害の症状

 自律神経失調症の一種に、起立性調節障害というものがあります。思春期の女の子に多いと言われていますが、男の子であっても十分に考えられる病気です。思春期の男女全体で見ると、約5?10%という高い確率で発症しています。

 

症状はめまいや立ちくらみが最も多いのですが、倦怠感、動悸や息切れのほか、睡眠障害、食欲不振、あるいは腹痛・頭痛といった痛みを伴う症状まで幅広く、起立性調節障害であると判断されるまでに時間がかかる場合があります。また、低血圧と密接な関係があり、症状も低血圧に似ています。

 

 

誤解から精神的な疾患に繋がってしまうことも

 起立性調節障害の子どもの1日を観察すると、寝起きから午前中が最も症状が強く出て、午後になると一気に改善するケースが多く、「さぼり癖がついている」など、「気持ち次第」のものだと考えてしまう保護者も。それが原因で、家族間の悪化を招いてしまう危険性があります。

 

また、もし家族や本人が病気についてしっかり理解していても、学校に行けないことによる焦りや不安、子どもが自分を責めてしまうといったことが、精神的な疾患を呼び起こしてしまうという二次障害も心配されるのです。

 

こういったことを避けるにも、まず周囲が起立性調節障害について正しい理解を持つことが、改善への一歩と言えます。学校や主治医にも相談し、子どもをサポートする体制づくりが欠かせません。

 

 

起立性調節障害への社会的な理解は少しずつ進みつつあるが…

 2006年、日本小児心身医学会より「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」が設定されました。その中で、『起立性調節障害は心理社会的因子が関与する心身症であるが、その本態は身体疾患である』といったことが明記されています。

 

学校や友達関係、家族関係など、自身を取り巻く社会がもたらすストレスがきっかけになったり、深く関係していたりする可能性が高いものであっても、本来は自分の気持ちや努力では避けられない身体的な疾患であるということが、しっかりと認められているのです。

 

このようなガイドラインがあることで、起立性調節障害に対する社会的な理解は進んでいると言えます。しかし、家庭や学校、さまざまな制度を通じたサポートが十分であるかといえば、そうではありません。まずは家族が本人に寄り添い、生活や治療について考えることが必要なのです。

 

 

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