なぜ、朝起きられない? 身近な病気、起立性調節障害【前編】
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思春期によく見られる「起立性調節障害」が、近年注目されています。
保護者が知っておきたい病気のメカニズムとサポート方法について、起立性調節障害の専門外来を持ち、数多くの子どもたちの治療に当たってこられた、もりしたクリニックの森下克也先生に伺いました。
起立性調節障害とは?

朝起きられない、めまいや立ちくらみ、頭痛、食欲不振や下痢、便秘、冷え、倦怠(けんたい)感……。
思春期によく見られるこれらの不調の多くは、自律神経系のアンバランスによるもので「起立性調節障害」と呼ばれています。朝礼中にめまいがするくらいの軽症から、いくら揺すっても目覚めないほどの重症まで、その程度もさまざま。小児科を受診する5人に1人が、起立性調節障害のなんらかの要素をもつといわれる身近な病気です。日本では、診断と治療のガイドラインができたのが2006(平成18)年と新しく、病気の概念としては、まだあまり認知されていないのが現状です。
朝は起きられないのに、夜はうそのように元気になるケースも多いため、大人はなかなかこの症状を理解できず、「仮病ではないか」と思いがちです。中には、朝起きられないため学校に行けず、退学を余儀なくされたり、引きこもりになったりしてしまう子どももいます。起立性調節障害は命にかかわる病気ではありませんが、身体的・精神的な要因が絡み合って起こる場合がほとんどです。
思春期によく起こるのはなぜ? 起立性調節障害のメカニズム
自律神経とは、心臓や胃腸の動き、体温や血圧などを自動的にコントロールしている神経です。
自律神経には、交感神経(活動状態のとき働く→緊張状態をつくる)と副交感神経(休眠状態のとき働く→リラックス状態をつくる)の2種類があり、この2つが状況に応じて自然に切り替わるようになっています。
たとえば、寝ているときは副交感神経が優位に働くため、筋肉は緩み、呼吸も脈拍もゆっくりとしています。寝た姿勢から急に立ち上がると、交感神経の機能が瞬時に高まり、下半身の血管を収縮させ、心臓の拍動が速くなります。こうすることで、上体の血圧低下や脳貧血を防いでいるのです。
このように、自律神経は姿勢の変化に即座に対応し、全身の血流を一定に保っています。
ところが、思春期になると、体の急激な成長に自律神経の成長が追いつかなくなる場合があります。すると、自律神経系のネットワークと体格とのバランスにくずれが生じ、ちょっとした姿勢の変化に対応できなくなるため、めまいや立ちくらみが起こるのです。これが起立性調節障害のメカニズムです。
心と切り離せない、自律神経のはたらき
また、自律神経のはたらきは、心と密接に結びついています。
たとえば、怒りや恐怖を感じた時は、心臓がドキドキし、筋肉は緊張し、呼吸も荒くなります。一方、のんびりと楽しい気分のときは、全身の筋肉が緩み、呼吸もゆったりします。このように、心と体は、自律神経を介して相互に作用します。
起立性調節障害の子どもを診ていると、風邪をひきやすい、皮膚や粘膜が弱いといった体質をもち、性格的にはきまじめで繊細な子どもに多いという印象をもちます。もともと体質的に虚弱な子どもが、クラブ活動や文化祭準備に熱中しすぎ、身も心も疲れ果てて自律神経に不調をきたすというケースはよく見られます。また、友達との人間関係やいじめ、家庭内の不和など、なんらかの精神的ストレスが起立性調節障害の引き金となることもあります。
起立性調節障害は、体質や性格、精神的ストレスなどが絡み合って起こるため、身体面・心理面を総合的に見ながら、根気よく治療に当たることが大切です。
次回は、起立性調節障害の治療と生活面・精神面での適切なサポートのしかたについて伺います。
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