記述問題は比較的点数がとれるのに、選択問題だと間違いが多い[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

物語文の読解は得意で説明文の読解が苦手です。記述式は比較的点数をとれますが、選択問題だと間違いが多い気がします。

相談者:小5男子(大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま



【回答】

自分の粗さを実感させ、精密に読み、かつ考える練習をする


■記述が得意で選択問題に間違いが多い理由

「記述は苦手で選択肢問題のほうが解きやすい」というのが普通ですが、お子さまの場合はまったく逆です。一般的に、記述が得意な人は物事を大きくとらえ、選択肢が得意な人は精密にとらえる傾向があるようです。大きくとらえる人は、物事の本質をつかむことにたけている半面、細かいことを一つひとつ対処していくのが苦手です。お子さまの大ざっぱな性格というのも合点がいきます。

■大ざっぱな人の弱点

物事の本質をとらえられるという力は、非常に大切な能力です。直感的にとらえる人もいますが、お子さまの場合は論理的なタイプですから、何らかの根拠に基づいての理解だと思います。こうした皆さんは算数や数学が得意で、いわゆる理系タイプと呼ばれる人に多いようです。
もちろん、大きくとらえる人には大ざっぱな性格に由来する弱点もあります。何も紛らわしい選択肢問題が苦手なだけではありません。得意な記述問題でも複雑になってくると解けなくなるか、少なくとも減点が多くなってくると思います。たとえば、物語文の記述問題で気持ちを問われるような場合、微妙な気持ちの変化をとらえられなくなってくる可能性が出てきます。
あるいは、問題文が複雑で難解になってくると、読み間違えが多くなるかもしれません。物語文よりも説明文の読解が苦手というのは、5年生になって説明文の内容がグッと難しくなってきたからではないでしょうか。また、これからは文字数の多い選択肢問題も増加してきますから、大きくとらえるだけではなく、細かく精密に読み込みこともできるようにならなければ正答率も上がらないでしょう。

■精密さを身に付ける

それでは、精密さを身に付けるにはどうしたらよいでしょうか? まず考えなくてはいけないのは、大まかな人は自分の読みや思考の粗さを認識していない場合が多いということです。すなわち、自分が雑に読んでいるとかいい加減に考えているとは思っていないのです。でも、精密に考えている人と比べたら、確かに雑な部分があるのですが、他の人と比べることもあまりないので気が付かないことが多いと思います。
大まかな人が精密さを身に付けるには、紛らわしい選択肢問題や記述問題を解いたり、それを復習したりなどして、そうした問題を解くにはどのくらいの精密さが必要なのかを実感するのがよいでしょう。復習する時には、解答解説をしっかり読み、記述問題であれば模範解答と自分の答案を比べることで、何が足りなかったかを自覚することです。あるいは文章を読む時でも、行やかたまりでとらえるのではなく、一つひとつの言葉を意識して読むようにするとよいでしょう。たとえば、「(母は娘に)そっと毛布をかけた」というフレーズの中にある「そっと」という言葉に、母の娘に対するいとおしさを感じたいということです。このように、一つひとつの言葉を意識して読む習慣を付けると、今まで気が付かなかった筆者の思いを発見できると思います。

■大きく読む、細かく読むは読解の両輪

逆に、精密に考える人が大きくとらえられない場合も少なくありません。一つひとつが気になって、全体として筆者が何を伝えたいかがぼんやりしてしまうのです。「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、まさにそんな感じでしょう。このようなタイプの人は、やはり物事を大きく見る練習をする必要があります。つまり、大きく読む・考える、精密に読む・考えるは国語における両輪なのです。いや、国語だけではなく、生活一般にも必要なことだと思います。とは言っても、性格的にどちらかが苦手という皆さんも少なくありません。それぞれの持ち味ですから、自分の強みを生かし弱点を補強していけば何ら問題はないことです。問題があるとすれば、そうしたことを放置していることでしょう。お子さまの場合も、精密さを増すために、まずは自分の読みや思考の粗さを実感させることから始めてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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