「過敏性腸症候群」腹痛で学校に行けない子どもへの接し方と対処方法

夜まで元気だった子どもが、朝起きると腹痛を訴え、いつも通りの時間に学校に行けなくなってしまうことがあります。食べすぎだったり、風邪気味で体調が悪かったり、子どものお腹の不調の原因はいろいろ。でも、不調が続くようなら、「過敏性腸症候群」の可能性を考える必要があります。「過敏性腸症候群」について詳しく説明します。

過敏性腸症候群の診断基準や原因は?

朝起きると腹痛を訴え、いつも通りの時間に学校に行けなくなってしまうことはありませんか。子どもはさまざまな要因でお腹の調子を崩すので、珍しいことではないかもしれません。
翌日、あるいは数日後にはすっかり痛みもひき、学校に行けているのであればだいじょうぶ。

しかし、毎朝なかなかトイレから出られない、便意が消えずすっきりせず遅刻しての登校が続いているなど、普段の生活を維持できないほどのお腹の不調が続く場合、「過敏性腸症候群」の可能性もあります。

過敏性腸症候群とは、腸の働きに異常が起こる病気の総称です。下痢、便秘、あるいはその繰り返し、ガスが非常にたくさん出る、お腹が張ったりごろごろしたりするなどの症状があるのにも関わらず、検査をしても腸に器質的な病気(臓器の異常等により現れる病気)は発見されません。発症年齢は20代以上と考えられていましたが、最近では小学生にも多いと言われています。

過敏性腸症候群の診断基準

医療現場では、小児~思春期の過敏性腸症候群について次の診断基準が用いられています。

・最近2ヵ月の間に、週に1回以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こっている

・下記の2項目以上の特徴を示している
1)排便によって症状がやわらぐ
2)発症時に排便頻度に変化がある
3)発症時に便形状(外観)の変化がある

また、不登校、起立性調節障害、不眠、頭痛などを併存する場合も多いです。

過敏性腸症候群の原因は?

過敏性腸症候群のはっきりした原因はいまだ不明です。腸の動きと密接な関係にある「ストレス」の影響が指摘されています。ストレスによって、腸の運動異常、内臓知覚過敏等が引き起こされ、さらに腹痛、便通異常をきたします(腸脳相関の異常)。また、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかると、回復後に過敏性腸症候群になる場合もあると言われています。

過敏性腸症候群の対応や治療は?

過敏性腸症候群の治療には、「生活習慣の改善」や「投薬」「食事の改善」「ストレスの軽減」などが効果があると言われています。薬による治療を行う際は、自己判断で市販薬を用いるのでなく、小児科や内科を受診するのが良いでしょう。

過敏性腸症候群は、非常に対応が難しい病気だと言えます。まず、大きな原因の1つになっていると考えられるストレスを取り除くことは、実際にはとても難しい場合が多いです。

小学生であれば、登下校中や授業中などは自宅にいる時のように自由にトイレに行けるわけではなく、「トイレに行きたくなったらどうしよう」という心配がつきまといます。お友達の目が気になってトイレを我慢することもあるかもしれません。このようなことがさらに大きなストレスとして子どもの中に積もってしまうことが多いと考えられます。

過敏性腸症候群の子どもへの接し方

重要なのは周囲が子どもの症状をよく理解し、安心させてあげることです。本人は努力し、何とかしようと考えています。そのようなところに「心配しすぎだ」と責めたり、痛みを我慢させたりするようなことを言うことはまったくの逆効果。むしろ思っていることを正直に伝えられなくなり、症状を悪化させることにもなりかねません。午前中に調子が崩れることが多いため、遅刻を繰り返しても無理なく学校生活が送れるよう、学校側とも連携を取るなどの対応が必要です。ストレスなど、さまざまな原因から、腸の運動異常や内臓知覚過敏が生じ、腹痛、不快感を感じやすくなっていることを周囲がしっかり理解し、生活面では食事、排便のリズムを整え、排便習慣を回復させるよう調整していきましょう。また、通学中や学校生活の中でスムーズにトイレに行くことができるよう、配慮が必要です。

お腹の調子が落ち着かず朝から学校に行きにくいということが続いた場合には、どのように対応すべきか、まずはかかりつけの小児科医に相談してみましょう。小学生の場合、食生活や生活リズムの改善により改善する例も多く見られています。直接改善に役立つ薬はまだ開発されていませんが、薬により症状が楽になり精神的に安心できれば学校生活も送りやすくなります。子どものストレスを取り除いてあげることを中心に、さまざまな方法でアプローチしてみてください。

※参考:過敏性腸症候群-日本小児心身医学会

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プロフィール



子どもの心身の成長に向き合う現場を20年以上経験するドクター。経験に加え、日本小児科学会専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医、日本てんかん学会専門医・指導医、と数多くの認定資格を所持し、日々、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患、頭痛、発達の遅れ、脳性麻痺など、主に神経疾患のお子さんの診察を行う。東京医科大学主任教授としても、次世代の医師の育成に力を入れている。

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