コーチング専門家の菅原裕子さんに聞く、思春期への対応(3)

子どもの気持ちを尊重する一方で、中学生はまだ自分の身を守れませんから、「ルール」を定めることも重要です。その際に大切なのは、保護者がしっかりとした軸をもつことです。親の気分によって方針が変わるようなものは、「ルール」とは呼べません。


日常の「ルール」は子どもと話し合って決める

 「ルール」は、親が一方的に与えるのではなく、子どもと一緒に作りあげることで、より受け入れやすいものになります。例えば、この時期の悩みの種に、スマートフォンやパソコン、ゲーム機との付き合い方があります。できるだけ買い与えないほうがよいというのが私の基本的な考えですが、子どもの友人関係などを考えると、そうはいっていられない時期がいつかはやってきます。その時期をいつとするかは、親子のやり取りを通して決めるといいでしょう。その際は、次のように子どもが親を説得する形にすると良いと思います。

 

子「お母さん、スマホを買って。みんな持っているよ」

 

親「ほしいよね、わかるよ。でも、お母さんはまだ買いたくない。なぜかというと危険がたくさんあるから。そういう世界にあなたを放り込むことはできないよ」(←「だめ」「まだはやい」などの断定で終わらず、子どもを守るために買わないことを説明します)

 

子「それなら、制限をかければいいじゃん」

 

親「制限って何?」(←知っていても、あえて子どもの口から話させて、使用の制限を納得させます)

 

子「(フィルタリング機能などについて説明する)」

 

親「なるほどね。でも、家に帰ってから布団に入るまで、メールばかりで気持ちが休まらないという話も聞くよ」

 

子「それなら、メールはリビングでしかやらないよ。それから夜10時を過ぎたらスマホは使わない」(←子どもの言葉を「ルール」にします)

 

親「それなら大丈夫な気もするけど、「ルール」を守らなかったら意味がないよね」

 

子「守るって。もし守らなかったら、1週間はお母さんに預けるから!」(←子どもの言葉を「ルール」にします)

 

親「そこまで自分で管理できるのなら安心ね」

 

もし親を説得できないなら、まだ買う時期ではないと判断していいでしょう。また、もし「ルール」を守らなかったら断固として罰を行使します。その際は、「親が罰する」のではなく、「ルール」が罰するという姿勢を貫きましょう。

 

親「お母さんもとても残念だけど、ルールを守らなかったら1週間預かるね。ルールはルールだからね」(←ルールを破ったことを怒るのではなく、むしろ残念がって罰を行使します)

 

子「(自分で決めたルールだし、仕方ないか……)わかった。次は守るから」

 

 

許される範囲を明確に示す「限界設定」という考え方

 「ルール」化の要は、どこまでが許される範囲かを明確に示すことです。私はこれを「限界設定」と呼んでいます。「限界設定」の考え方は、日常のいろいろな場面に適用できます。

 

子「今度の日曜日、○○ちゃんと一緒に渋谷に遊びに行っていい?」

 

親「まだ子どもだけで渋谷に行くのははやいと思うな」

 

子「何で?」

 

親「△△とか××とか、いろんな危険があるからよ。何か起こった時、まだ自分の身を守れないでしょう」

 

子「いつになったら行けるの?」

 

親「そうね、今はまだはっきりとした時期はわからない。お母さんとお父さんが、あなたが自分の身を守れるようになったと判断したら、ちゃんと言うからね」

 

子どもに「ルール」を守らせるためには、ふだんから親自身がしっかりと約束を守る必要があるのはいうまでもありません。繰り返しになりますが、この場面を取っても、親が自らの生活態度を顧みることの重要性をおわかりいただけると思います。

 

 

プロフィール

NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事 菅原裕子(すがはら ゆうこ)

1977年より人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。1995年、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム「ハートフルコミュニケーション」を開発。各地の学校やPTA、地方自治体などで講演やワークショップを開催する。2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーションを設立。著書に、『子どもの心のコーチング—一人で考え、一人でできる子の育て方』(PHP研究所) 、『10代の子どもの心のコーチング—思春期の子をもつ親がすべきこと』(PHP研究所)、『コーチングの技術 上司と部下の人間学』(講談社現代新書)』(講談社)、『子育てが変わる親の心得37』(幻冬舎)など。

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