夢をつかむ「逆算の生き方」 人気パティシエ・辻口博啓氏が歩んだ道

日本を代表するパティシエとして人気を誇る辻口博啓氏。「モンサンクレール」(東京・自由が丘)をはじめ、コンセプトの異なる12ブランドを展開し、企業とのコラボレーションやプロデュースも豊富だ。どんな少年時代を過ごし、「パティシエ」という夢を掴んだのだろうか。目標への歩み方を語ってくれた。

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僕が生まれたのは石川県七尾市にある祖父の代からの和菓子屋で、父が跡を継いで和菓子職人、母が店の切り盛りをしていました。朝早くから夜遅くまでてきぱき働く両親や職人さんたちの姿を見て育ち、僕も子どものころからお店の手伝いもしていました。

 

両親は、僕に「将来は店を継いでほしい」とか「和菓子職人になってほしい」と言ったことはありません。パティシエになることを決めたのは9歳、小学3年生のとき。友達のお誕生日会で生まれて初めて食べた生クリームのショートケーキのおいしさに衝撃を受け、「自分もこんなに感動するお菓子を作りたい」と思いました。当時はまだ「パティシエ」という言葉はありませんでしたから、「ケーキ屋さんになる」、それが自分のいちばんの夢となったのです。

 

当時、僕にとって衝撃的な事件がもう一つありました。大好きだった祖父の死です。大切な人の死を目の当たりにして、人の命には限りがあることを強く実感し、同時に、「自分もいずれ死ぬ。だったら棺おけに入るまでの一分一秒を大事に生きよう」と、その後の僕の「逆算の生き方」につながりました。これは、死をゴールととらえた時、それに到達する少し前の段階を考え、さらにまたその少し前の段階を考え……と、時をさかのぼって現時点まで考えて人生を歩む、というものです。
たとえば、僕には「ケーキ職人になる」という目標があったので、「ケーキ職人になるには、高校を出たら上京して修業に入らなきゃいけない。その修業は相当厳しいものになるだろうから、今の学校生活を楽しもう」と発想したわけです。「逆算の生き方」は、何か目標を持った時、目標に向かってただやみくもに突っ走るのではなく、目標を達成するための具体的な方法や手順をまず組み立ててから行動に移すということでもあります。

 

出典:辻口博啓さん(パティシエ)に聞く、「スイーツで描いた夢・育む力」【前編】~高校までに身につけた「逆算の生き方」~ -ベネッセ教育情報サイト

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