辻口博啓氏(パティシエ)が語る夢 子どもたちへ伝える「スイーツ育」とは?
東京・自由が丘の「モンサンクレール」をはじめ、コンセプトの異なる12ブランドを手掛ける、パティシエの辻口博啓氏。企業とのコラボレーションやプロデュースにとどまらず、2011年からは、スイーツを通した食育「スイーツ育」にも力を入れている。ご本人に詳しく伺った。
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2011年、僕はスイーツ業界の人材育成やスイーツの普及などを目的に、日本スイーツ協会を立ち上げました。具体的には「スイーツ検定」など、スイーツを日本の文化として根付かせるための活動や、「スイーツ育」を推奨する活動を行っています。
スイーツ育とは、スイーツを通した食育のことです。僕はスイーツ育の基本は家庭にあると思っています。父の日、母の日、敬老の日、家族の誕生日など、各ご家庭で1年にいろいろなイベントがあると思いますが、そんな日に親子でたとえばロールケーキを手作りすることで、子どもは衛生管理、素材選び、段取り、計算、手の動かし方や力の入れ方、素材の生産者、片付けの大切さなどについて学んでいきます。ロールケーキに使われるイチゴ一つとっても、「これを一生懸命作っている農家の方々がいるんだよ」と親が子どもに教えたり、子どもは日本のイチゴとアメリカのイチゴを食べ比べて全然味が違うことを学びとったりして、知識が増えていきます。
お菓子は食べ物の中でも特に使う素材によって、まったく違うものができあがるものです。ここには親子で共に作り上げていく楽しさや、できあがった時の感動、おいしいという思いを共有できる喜びもあります。
僕は自分の作ったものが「辻口さん、これおいしいね!」と言われると、今でも「この世に生を受けてよかったなー」って気持ちになります。幼い時から「この世に生を受けてよかった」と一つでも多く思える子ども、そして、親が子どもに感動や自信を与えてあげられる家庭の子どもは、バランスのとれた人間に育っていくと思うんです。
スイーツを日本の文化として根付かせ、スイーツ育を全世界に広げることが僕の夢です。
これからも、僕がスイーツを通して学んできたことを、子どもを含め少しでも多くのかたに伝えていきたいですね。
出典:辻口博啓さん(パティシエ)に聞く、「スイーツで描いた夢・育む力」【後編】 -ベネッセ教育情報サイト