【地歴公民】2022年1月大学入学共通テストを徹底解説 2年目を迎えた傾向と対策

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1月15日・16日に2年目の大学入学共通テストが行われました。昨年の大学入学共通テストでは、高校生の学習過程を意識した場面設定やさまざまな資料が多く扱われましたが、今回の地歴公民の出題ではどのような特徴があったのかをご紹介します。

この記事のポイント

約8割の大問が授業や調べ学習の設定で、のべ100名以上が登場

1990年から実施されてきた大学入試センター試験(以下、センター試験)が、2021年1月から大学入学共通テスト(以下、共通テスト)になり、今年で2年目を迎えました。

共通テスト1年目の「地理歴史」と「公民」(以下、地歴公民)ではさまざまな【学習場面】で【さまざまな資料】を用いた、会話文形式の出題に特徴がありました。

大学入学共通テスト分析速報【地歴公民】 センター試験とどう違った? 今後の出題傾向や対策は?

2年目となる今年の共通テストは、昨年と同様に高校生の授業や調べ学習という【学習場面】の設定の下で【さまざまな資料】を扱う出題が踏襲されました。
こうした【学習場面】の設定で問われた大問が約8割を占め、高校生や先生などの登場人物はのべ100名をこえました。そこで今回は【学習場面】と【資料】での特徴的な点と、今後の対策についてご紹介します。
なお、実際の問題例は新聞社からの報道発表、または大学入試センターの公式サイトでご確認下さい。

【学習場面】での高校生の「問い」から始まる出題

冒頭でも紹介しましたが、地歴公民の全大問中、実に8割近くが授業や調べ学習などの【学習場面】という設定で出題されました。
これまでのセンター試験の地理A・Bで定番だった「〇〇地方に興味をもった高校生の地域調査」のように、共通テストでは地歴公民の全科目で、高校生が日常で体験しそうな【学習場面】が設定されています。

また、世界史では日本史、日本史では世界史を意識した問題文や資料、出題などもあり、2022年4月から始まる新科目「歴史総合」を予感させるような扱いもみられました。

  • ・明治期の政治小説に描かれた国際情勢についての授業(世界史B:第3問)
  • ・オセアニアの先住民についての授業(世界史B:第3問)
  • ・アメリカ合衆国ハワイ州の高校と交流を持つ日本の高校の授業(日本史A:第2問/日本史B:第5問)
  • ・北海道苫小牧市とその周辺地域の地域調査(地理A・B:第5問)
  • ・地理の授業で持続可能な資源利用について探究(地理B:第2問)
  • ・市役所で三日間の就業体験に参加した活動の記録(現代社会:第1問)
  • ・現代社会の授業のなかで、持続可能な社会の形成について課題探究(現代社会:第5問)
  • ・倫理の授業の予習をしているときに交わした会話(倫理:第4問/倫理、政治・経済:第4問)
  • ・授業の内容をもとに、経済主体の関係についての考察や分析(政治・経済:第2問/倫理、政治・経済:第6問)
  • ・「国・地方自治体の政策への住民の関与」という課題を設定して調査(政治・経済:第4問/倫理、政治・経済:第7問)

そして、授業の場面をよくみると、先生が一方的に伝達するスタイルの授業ではなく、先生からの問題提起に対して高校生が疑問をもち、「問い」を立てて、調べ考えて仮説を検証する探究活動がストーリー仕立てで描かれています。

たとえば世界史B・第4問では、授業で先生から「ソ連の映画監督エイゼンシュテインが撮影した「アレクサンドル=ネフスキーをロシア史上の英雄として称える映画」が1939年から41年までソ連で上映が禁止された」という事実を紹介されたことをうけて、上映禁止の要因の仮説として適当なものを選択するという問題でした。
従来であれば「1939年から41年の間に起こった出来事」という知識が問われていたと思いますが、共通テストでは禁止された要因の【仮説】に考えをめぐらすといった歴史的思考力を問う問題に変わってきています。

このような【学習場面】を用いた出題は、新しい学習指導要領で重視されている「主体的・対話的で深い学び」に対して、大学入試センターが提案する学び方の一例としてみることもでき、今後も注目していきたいポイントです。

求人情報や法律など、18歳成年を意識させる資料も扱われた

今年の共通テストは昨年に引き続き、【さまざまな資料】を扱う資料問題が多く出題されました。
以前のセンター試験では「日本史・地理などは資料が多く、世界史は少ない」などの傾向がありましたが、昨年・今年の共通テストでは地歴公民のいずれの科目も【さまざまな資料】が扱われました。

  • ・第一次世界大戦中にイギリスが作成したポスター(世界史A:第1問)
  • ・ビザンツ帝国皇女で歴史家のアンナ=コムネナの文献(世界史A:第3問)
  • ・シーボルト『日本』に掲載された朝鮮王朝の生活(世界史B:第1問)
  • ・1700・1800・1850・1900年の東南アジア・インド・中国本土・ヨーロッパの人口推移(世界史B:第3問)
  • ・曾祖母の父親(1880~1970)の履歴書(日本史A:第1問)
  • ・大卒男性の平均初任給と耐久消費財の価格・世帯普及率(日本史A:第1問)
  • ・1872年に開通した新橋-横浜間の時刻表の一部(日本史A:第4問/日本史B:第6問)
  • ・1925~50年の生まれ年別男性名ベスト3(日本史B:第1問)
  • ・住宅地造成前後の地形断面図(地理A:第1問)
  • ・北海道苫小牧市の住宅地域の写真と人口ピラミッド(地理A・B:第5問)
  • ・空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)の条文(政治・経済:第1問)
  • ・求人情報の例(政治・経済:第2問)
  • ・高校生の小遣い帳と1か月のお金の動きの模式図(政治・経済:第3問)

日本史Aの高校生の曾祖母の父親の履歴書や、日本史Bの1925~1950年の名前ランキングなど、日本史では昨年に引き続きファミリーヒストリー(家族史)に関する資料が扱われました。
また、政治・経済では求人情報の例や小遣いの管理などの資料が扱われましたが、2022年4月1日からの成年年齢引き下げを前に、契約や法律、金融に関する資料が目立ったことも今年の特徴と言えます。

資料や会話文の読み方を工夫し、速く的確に解く練習を

以前のセンター試験では設問文が1~2行程度の「下線部について述べた文として正しいもの(誤っているもの)を選べ」という出題形式で、下線部自体も具体的な用語であったためにリード文を読まなくても問題が解けることがほとんどでした。
しかし昨年から始まった共通テストでは、設問文の長文化に加え、問題を解く上で読み込みが必要な会話文などのリード文や資料が増加したため、受験生の負担や難易への影響も指摘されています。

大学入試センターが公表している昨年度の問題作成の総括資料によると、昨年の共通テストの出題が「主体的・対話的で深い学びを意識した出題」と外部から好意的に評価されていることからも、今後もこのような出題が継続すると考えられます。

そのため限られた試験時間内で長い資料や会話文を読みこなして得点力を上げるためには、条件の把握・読み返し・熟考を想定して【印をつけながら読む】などの工夫が、地歴公民に限らずどの教科においても必要になると考えられます。

また、共通テストで問われる資料の読解や考察は、教科書レベルの重要事項の正しい理解が前提ということは、これまでのセンター試験や昨年の共通テストでも同じでした。
今年の問題文のなかには「教科書にならって信用創造の図や説明文を作ってみた(現代社会:第3問)」や「教科書や資料集に載っている肖像画(世界史B:第4問)」など、教科書を使った学習場面への言及もあることから、これまでと同様に教科書を起点にしつつ、さらに能動的に「問い」を立て探究する姿勢も必要となりそうです。

まとめ & 実践 TIPS

共通テストの地歴公民では、高校生の「問い」から始まる【学習場面】を用いた出題と、【さまざまな資料】が扱われる傾向が継続していますが、教科書レベルの重要事項をしっかり押さえつつ、「問い」を立て探究する姿勢が必要となりそうです。
また、昨年同様に資料や会話文の情報量が増えていることから、資料や文章の読み方も工夫したほうがよいでしょう。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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