進路は「好き」と「得意」のどちらで選ぶ?/お笑い芸人 厚切りジェイソンさん&石井てる美さん対談【中編】
- 進路・職業
東京大学卒・芸人
石井てる美さん
IT企業役員・芸人
厚切りジェイソンさん
高校生はどこかのタイミングで、大学進学に向けて、「文系」「理系」や行きたい学部を選ばなくてはなりません。
でも、やりたいことが苦手だったら? そのとき保護者は、どのように進路のアドバイスをしたらいいのでしょうか?
進路選択のエピソードをうかがった前編に続き、苦手な理数系を避けて文系を選んだ石井てる美さん(東京大学卒・元マッキンゼー)、逆に「好き」を究めてコンピューターサイエンスを学んだ厚切りジェイソンさん(IT企業役員)に、苦手科目との向き合いかたなどを聞きました。
「得意」が進路選択の自信と強みになる
——改めて、進路選択のエピソードを教えてください。
石井てる美さん(以下:石井さん):高1の時点で、理系科目はどうやら苦手だなあと気付きまして……。一方で、海外へのあこがれもあって、中学時代からのめり込むように勉強していたのが英語。将来やりたいこともなかった私は、「大学受験を乗り越えるにはどうするか」という考えで、高2のクラス分けの際に「文系コース」を選び、東京大学の文科三類に進みました。
厚切りジェイソンさん(以下:ジェイソンさん):僕は、子どものころからコンピューターが好きで、プログラマーになりたかった。だから、そのために必要なことをとことん学んで、大学で本格的にコンピューターサイエンスを勉強しましたね。
——石井さんは大学3年次に、文系学部から工学部に「理転」されました。
石井さん:私が選んだ工学部社会基盤学科国際プロジェクトコースは、社会基盤を通して社会問題を解決しようという学問。「楽しそう!」と思って選んだものの、周りは理系学部の受験を突破してきた学生ばかりだったので、もちろん心配はありましたね。
でも、「目の前の勉強をきちんとやっておけば、あとで何でも選べるだろう」と高校の授業をしっかりと聞いていたこともあり、それほど困りませんでした。そして何といっても、英語という得意科目があったこと。海外でリサーチをする機会も多い学科だったので、数学は苦手だけれど、英語は誰にも負けないという自信が強みになりました。
ジェイソンさん:僕と同じだね! コンピューターサイエンスができる人はたくさんいますから、技術的に進んでいる日本の言語も身に付けて自分の価値を高めた。おかげで日本にインターンに行く大学生の募集を見つけた時も、IT企業が日本法人を立ち上げるために「日本語が話せて、コンピューターサイエンスが得意な人」を募集していた時もサッと手を挙げて、チャンスをつかむことができましたから。
石井さん:強みがあるって大事だよね。私は、大学受験でも、大学でも、仕事でも*、プライベートでも……。得意な英語にすごく助けられています。
* 石井さんは、得意の英語を生かしたネタが人気です!
「得意」を強みにする?「好き」を伸ばす?
——進路選択についての、お二人なりの考えを教えてください!
ジェイソンさん:僕の勝手な意見ですけれど……。「好きなうえに得意」なことがあれば最高だけど、それがある人は多くないですよね。じゃあ「嫌いだけど得意」と「好きだけど得意じゃない」はどっちがいいかというと、後者を選ぶと苦労する気がします。
石井さん:苦手なことに向き合い続けるのは、大変だっていうこと?
ジェイソンさん:大変な思いをするし、仕事にしても大きな稼ぎにはつながりにくい。逆に、「嫌いだけど得意」なほうを選んで、仕事が軌道に乗ったら、空いた時間に好きなことをやるという手もあると思います。
ただし、「得意じゃないけど、どうしてもやりたい」という時も、諦めることはないですよ! まずは、「なぜ得意じゃないのか」「どうしたらできるようになるか」を考えてみる。そして、克服できる自信があれば、どんどん挑戦してみたらいいと思います。
石井さん:なるほど。そういえば、私にとってのお笑いが、まさに「好きだけど得意じゃない」ことだったのかも。就職しても「やってみたい」という気持ちが消えなくて、1年4か月働いたタイミングで挑戦してみたのだけれど……。最初はネタをやるのも、笑いをとるのも難しかった! でも、少しずつ改善していく兆しが見えたから、今でも楽しめているんだと思います。
小さな満点を重ねていけば、苦手だって克服できる
——苦手科目とは、どう向き合うといいと思いますか?
石井さん:たとえば「医者になりたいけれど理数科目が苦手」のような場合も、高校の早い段階であれば、まだまだ諦める必要はないと思います。そもそも1番をとる必要はないのだから、苦手でもせめて平均を取れるようにがんばってみる。一方、得意な英語だけは人よりもできるようにしておくとか、バランスをとれば太刀打ちできるんじゃないかな。
ジェイソンさん:そのモチベーションのためにも、「自分はどうなりたいか」は、早めに意識しておくことが大事ですよね。でも、その大きな目標ばかりを意識すると「自分にはムリ……」になりかねないので、目標に向かって、小さな成功を積み重ねていけばいいと思います。いきなりフルマラソンを走ろうとせずに、まずは1キロずつ、走る距離を延ばしていくイメージです。
石井さん:そうそう。たとえば、明日の小テストで満点を目指す。それを積み重ねていくことで、やがて大きな試験にも合格できるくらいになると思います。
ジェイソンさん:それから、進路について、もう少し肩の力を抜いて考えてもいいんじゃないかな。悩んでいないで、いろんなことをやってみたらいいですよね。
石井さん:私もそう思っていました! 人生100年時代。高校時代の決断が一生を左右するわけではなくて、大人になっても学び直す必要が出てくる時代なので、いつでも修正できると思います。
だからといって、がんばらなくていいわけではないですよ! やりたいことがある人は、そこに思い切りエネルギーを注ぎ、やりたいことがない人は、目の前のことをがんばっておく。そうすればきっと、その努力が何かにつながると思います。やりたいことがなかった私も、勉強をまんべんなくがんばって、好きな英語をとことん伸ばしておいたことが、いざ「やりたい」が見つかった時に自分を助けることになりましたから。
【後編】では、進路選択において保護者にできることをうかがいます。ぜひご覧ください!
※この記事は公開日時点の情報に基づいて制作しております。
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