学芸員になるには? 仕事内容や必要な資格、気になる給料をご紹介
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「学芸員」という仕事をご存知ですか? 名前は知らなくても、恐らく多くのかたが関わったことがあるのではないでしょうか。今回は、そんな学芸員の仕事内容やなるために必要な資格、給料などをご紹介します。
学芸員って、どんなオシゴト?
博物館や美術館で働く仕事
学芸員が働く場所として有名なのが、博物館。ここで、資料の収集や保管、展示、調査研究などを行っています。
博物館といっても種類はさまざま。総合博物館、科学博物館、歴史博物館、美術館だけでなく、動物園や水族館、植物園なども含まれており、活躍の場は多岐に渡ります。扱う分野も幅広く、勤務先に応じた専門知識が必要です。
仕事内容は管理や収集、PR活動など幅広い
仕事内容は主に5つあります。①資料の収集や整理、②資料の保管・保存、③資料の展示や活用、④資料の調査研究、⑤教育普及活動やPR活動です。
なかでも、資料の調査研究は重要な仕事。資料をただ集めるだけでなく、どのようなものでどのような価値があるのかを調べ、まとめなければなりません。そのため、学芸員には研究者としての能力も求められており、論文や出版物などで研究成果を発表することもあります。
企画力が必要になることも
資料は、人の目に触れてこそ価値があります。そのため博物館では、常設展や定期的な特別展を開いて来館者に知識を広めているのです。その企画を考えるのも学芸員の仕事。来館者を案内したり子ども向けのフィールドワークを実施したりと、それぞれの博物館で工夫を凝らした企画が行われているのは、学芸員の力があってこそです。
学芸員は、資料に関する高度な知識と研究力、それを人々に伝えるための企画力など、さまざまな力が必要とされる職業なのです。
学芸員の働き方って、どんな感じ?
勤務時間は規則正しいが、土日勤務がある
基本的な勤務時間は、博物館の開館時間と同じです。勤務時間も1日8時間程度と比較的規則正しくなっています。ただ、開館前の見回りや展覧会の準備などがあり、実際の勤務時間はもう少し長いようです。
また、博物館は土日・祝日に開館しているため、週休2日制で平日休みになることが多くなっています。
時間外にもやることがたくさん
勤務時間は規則正しいですが、学芸員には他にもやることがたくさんあります。展示会の前には、企画を考えたり展示準備をしたりと忙しくなるでしょう。調査・研究は帰宅後や休日に行うことも多く、仕事以外でも学芸員として活動しているようです。専門分野に対する強い情熱や好奇心を持っている人ほど、やりがいを持って働けるのではないでしょうか。
お客さんとのコミュニケーションも仕事の一つ
資料の収集や展示、調査・研究、来館者の案内や特別展の企画など、学芸員は博物館の運営全部に関わっているといっても過言ではありません。
美術館では、ギャラリートークといって来館者に展示物を解説しながら館内を回るという機会があります。そこでは、学芸員から一方的な解説をするだけでなく、来館者の質問にも答えなければなりません。来館者は老若男女幅広いもの。さまざまな人とコミュニケーションを取りながら知識を広めていくのも、学芸員の大事な仕事なのです。
学芸員の給料って、どれくらい?
給料
平均給与 34万4,338円
(扶養手当・地域手当含む)
※総務省「令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果」より、地方公務員の行政一般職の給与を参照
給料は勤務先や勤務形態によって異なる
多くの博物館は公立であり、学芸員は公務員として採用されていることが多いです。公務員の場合、給料は地方公務員の行政一般職に準じており、勤務年数に比例して上がっていきます。私立の場合も給料は公立とそれほど変わらず、初任給は14~20万円程度とあまり高くはないのが現状です。
勤務形態も幅広く、博物館の館長などの役職に就く人もいれば、非正規職員として働く人もいます。役職に就けばそれだけ高給与が期待できますが、アルバイトであれば時給制ですから生活が大変なこともあるでしょう。
学芸員の将来性は?
専門分野に関する高度な知識が必要
博物館の数は近年増え続けており、今まで以上に高度な知識や専門性が求められています。そのため、大学院を修了した人材が採用される傾向が強いようです。大学院で専門分野を深めておくと可能性が広がるのではないでしょうか。来館者数を増やすための企画力も求められています。
予算不足で常勤の学芸員は減少傾向に
博物館の数が増える一方で、予算は縮小傾向にあります。そのため、適切な資料の保存や収集、展示をすることが困難になっている博物館も多いそう。人材確保にも影響しており、多くの博物館が常勤の学芸員を採用できずにアルバイトや契約職員で人手を補っています。学芸員を取り巻く環境は厳しいのが現状です。
日本文化を守るために、世の中の動きに注目することが必要
日本の文化は世界中で注目されています。そのため、文化の保存や啓蒙を行う学芸員の存在は欠かせないものです。文化財を観光資源とする動きも見られており、学芸員の待遇や博物館の存在意義は今後変わってくるかもしれません。
学芸員を目指す人は、博物館に関する国の動き、世界各国のニュースなどもこまめにチェックするとよいでしょう。厳しい現状を生き抜くためには、専門分野に限定されない幅広い視野で世の中を見ていく必要があります。
学芸員に向いているのはどんなタイプ?適性は?
専門分野への高い関心
調査・研究は学芸員の重要な仕事です。絵画・遺跡・動植物など、扱う分野に対して強い興味や関心を持っていることが基本条件となります。
また、学芸員の仕事は展示や来館者の案内など多岐に渡ります。ただ好きなことを研究するだけでなく、その素晴らしさを人々に伝えたいと思う強い気持ちや情熱も必要です。
重要資料を大切に扱える几帳面さ
博物館に保存されている資料は貴重なもので、取り扱いには十分注意しなければなりません。そのため、資料を大切に丁寧に扱える几帳面さも必要です。
魅力を伝えるための企画力
収集した資料をいかに魅力的に展示するかは、学芸員の腕次第です。見せ方、解説の仕方、イベントの内容を考える企画力も優れていると重宝されるでしょう。博物館の価値も高められます。
学芸員になるには、どうすればいいの?
大学や専門学校で資格を取得するのが近道
学芸員になるには、大学や専門学校で指定の単位を取得するのが得策です。学芸員になるための講座を行っている大学に進み、所定の科目を履修して資格を取得してください。
学芸員資格認定試験を受験する方法も
文化庁が年に1回実施している「学芸員資格認定試験」に合格する方法でも、学芸員になることが可能です。試験では必須8科目と選択2科目の筆記試験が行われ、資料の保存・展示など博物館の業務に関わることや、各専門分野の知識が問われます。
働くためには博物館や美術館の採用試験に合格する必要あり
学芸員として働くためには、資格取得後に博物館の採用試験に合格しなければなりません。学芸員は狭き門となっており、採用は欠員が出たときしか行われないことがほとんど。正規職員として就職するのは厳しいということは覚悟しておきましょう。
「学芸員」の資格とは?
学芸員は国家資格です。大学や専門学校で学芸員になるための科目を履修するか、学芸員資格認定試験に合格するか、いずれかの方法で取得することができます。
学芸員資格認定試験の受験資格を得るには、大学の学士号を取得したり学芸員補として一定期間実務をこなしたりする必要があります。ちなみに、2019年に行われた試験では109名が出願し、86名が合格したそうです。
学芸員には高い研究能力や知識、資料を保存する技術などが求められます。就職を有利にしたいのであれば、大学院までの進学を考慮し、学芸員に関する講座を開講している大学に入るのがよいでしょう。
学芸員に関連する職業には、どんなものがあるの?
保育士/幼稚園教諭/小学校教諭/中学校教諭/高校教諭/大学教員/養護教諭/特別支援学校教諭/日本語教員/英会話学校講師/塾講師/音楽教室講師/社会教育主事/司書、司書教諭/法務教官
学芸員は、資料の収集や研究だけでなく、展示などでその価値を人に伝えなければなりません。同じような傾向の職業としては、教育系が挙げられます。また、人を楽しませたり喜ばせたりすることが好きなら、企画調査系や対人サービス系の職業も向いているかもしれません。学芸員を志す人は、ご紹介した職業にも興味を持ってみるとよいでしょう。
まとめ & 実践 TIPS
学芸員は、博物館や美術館に勤務し、資料の収集や保管、展示や調査研究を行う仕事です。専門分野に関する高い知識や好奇心だけでなく、資料の魅力を人々に伝えていくための企画力やコミュニケーション能力など、さまざまな力が必要。それだけやりがいのある仕事でもあります。
常勤として勤務するのは厳しいのが現状ですが、大学院に進んでさらに高い知識を身に付けたり企画や運営にも興味を持ったりすることで、採用確率も上がります。学芸員を目指す人は、広い視野で世の中を見ながら勉強に励んでいくとよいかもしれませんね。
出典:マナビジョン「学芸員」
https://manabi.benesse.ne.jp/shokugaku/job/list/148/index.html?utm_source=kj&utm_medium=banner&utm_campaign=manabi
出典:総務省「令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果 第5表 職種別職員の平均給与額」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R2_kyuyo_1_03-2.pdf
参照:美術館で働く仕事、学芸員とは
https://benesse.jp/juken/201504/20150402-5.html
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