モノづくり都市名古屋ならではの実践的な学びで、未来を創造するプロフェッショナルを育成【変わる大学】
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トヨタやデンソーをはじめ、名古屋を中心とした東海エリアは、世界有数のモノづくりの集積地といえます。
2020年からのコロナ禍により、社会ではデジタル化がますます加速し、産業界はもちろん、行政などでもDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれています。そのような社会で、デジタル社会の中心的なテクノロジーでもある「AI・IoT・ロボット」、エンタテインメントの「ゲーム・CG」は、これまでの時代では想像できない形で進化と変化をし、さまざまな産業を支えていくことになると考えられます。
国が提唱する超スマート社会「Society5.0」の時代は、あらゆる産業のイノベーションが加速化し、数年後の予測も立ちにくい時代になりつつあるといえるでしょう。
そこで今回はこのような時代の流れの中、東海エリア初の工科系専門職大学として、地域の企業や行政と連携し、理論と実践を両立した学びで専門職を育成する新大学として誕生した名古屋国際工科専門職大学についてご紹介します。
モノづくり都市 名古屋から世界へ。東海初の工科系専門職大学
東海エリア初の工科系専門職大学として、2021年4月に名古屋国際工科専門職大学が開学しました。名古屋国際工科専門職大学は、モノづくり都市 名古屋を拠点に、創造力、実践力、ビジネスセンスを育み、高い倫理観に裏打ちされたイノベーター人材“Designer in Society(社会とともにあるデザイナー)”の育成を理念としています。
これまでの情報社会「Society4.0」に続く社会として、国が提唱する超スマート社会「Society5.0」。名古屋国際工科専門職大学は、これからの時代に必要とされるAI、IoT、ロボット、ゲーム、CG等の分野で「アカデミックな大学教育」と「高度で実践的な実務教育」で、グローバルに活躍できる人材を育成します。
学長には国立大学法人名古屋工業大学の初代学長で、研究者としても世界の科学者上位2%に選出(*)されている松井学長が就任。長年、東海地域の大学教育・産業界の発展に貢献し、特に医学、薬学、五感、癒しなど異分野との融合による新しい工学の創造や、産学連携による新産業を創出する工科大学構想を推進してきました。名古屋国際工科専門職大学は、松井学長を中心に教員陣の多様な経験や国際的ネットワークなどによって、未来を担う人材育成のための最先端のカリキュラムを実現しています。
(*)米国スタンフォード大学の研究チームが、世界中の科学者約800万人を対象にした調査。
地域を舞台に「AI・IoT・ロボット」と「ゲーム・CG」の最先端を学ぶ
名古屋、東海エリアを代表するトヨタをはじめ、多くのメーカーが集積し世界に冠たるモノづくり都市である名古屋は、海外からも注目されるテクノロジーの宝庫ともいえます。
名古屋国際工科専門職大学は、工科学部にAI・IoT・ロボットを学ぶ「情報工学科」と、ゲーム・CGを学ぶ「デジタルエンタテインメント学科」の2学科を設置。教育・研究のプロフェッショナルであるアカデミア教員に加え、トヨタ、デンソー、富士通、NTT、コナミなど、数多くのグローバル企業出身の実務家教員から、世界や業界の最前線の高度な知識・技術を学ぶことができます。
また、名古屋駅前に立地するキャンパスや東海エリアの地域性を生かし、地元企業や自治体などとの産学連携、産官学連携に努め、名古屋発で今までにないモノづくりやエンタテインメントを世界に発信することをめざしています。
地域の産業界や社会への貢献活動も積極的に進め、9月初めには社会人向け公開講座として無料オンラインセミナーを実施。日本のDX推進の第一人者として経済産業省の研究会委員も務める情報工学科・山本修一郎教授が、経営者や企業担当者にDXの基本や導入ポイントを分かりやすく解説しました。
担任制で学生をサポート。少人数スタイル授業と実習で、実践的に学修
名古屋国際工科専門職大学では、授業の1/3以上で実習等を行い、2年次後期・3年次後期・4年次前期に計3回、600時間以上の長期の企業内実習「臨地実務実習」を実施。学んだ知識を実践の場で深化させることにより、専門的知見と先端技術を備えた高度な実践力を身に付けていきます。
また、実習等の授業効果を高めるために、少人数制を採用し、学生と教員の密接なコミュニケーションを重視しています。授業は原則40人以下で実施し、学生のサポート体制として、入学時から約10人を1グループとして担当教員がつく「担任制」を導入。日々の学修から将来の進路まで、対面だけでなくオンライン上でも相談できるため、きめ細かな指導やアドバイスが受けられます。
産官学連携によるAIロボットプロジェクトで、企業や社会の課題を解決
名古屋国際工科専門職大学では、モノづくり企業をはじめとする東海地方のさまざまな企業や自治体と連携し、地域課題に取り組む2年次の「地域共創デザイン実習」、企業内で実習を行う「臨地実務実習」などのプロジェクト型学習(Project Based Learning)の教育を通じて社会問題の解決を進めていきます。
現在、産官学連携プロジェクトのプラットフォームとして、店舗や教育現場などさまざまなシーンに対応する可能性を秘めた、AIコミュニケーションロボット「Kebbi Air(ケビーエア)」(※1)を活用したDX推進に取り組んでいます。
台湾ではすでに700校の学校に導入されている「Kebbi Air」は、文部科学省の「GIGAスクール構想」(※2)の実現に向け、小・中学校におけるPCやタブレット等の端末を活用した教育コンテンツとして、愛知県を手始めに全国の学校で広く普及していくことが見込まれています。
名古屋国際工科専門職大学の学生は教員指導のもと、企業の担当者と一緒になり、課題発見・解決策の立案だけにとどまらず、プロトタイプの作成、実証実験まで一気通貫で社会問題の解決をめざしています。
例えば、イオンのマーケティングリサーチ等を手掛ける商業科学研究所との連携で「Kebbi Air」を活用した来店者アンケート実施プログラムの開発を進めています。非接触での実施、アンケート取得率の向上などが見込まれ、2021年秋にはイオングループの店頭でロボットによるアンケート調査の実証実験を開始します。
また、SEGA XDや県内の医療機関・研究機関と連携し、ゲーミフィケーションやKebbi Air、VR等を活用した、エンタテインメント要素のある予防医学・健康維持、見守り・認知症対策の社会実験にも取り組んでいくといいます。
デジタル人材の育成を通じて、名古屋から新しいモノづくりを発信
4月に入学した名古屋国際工科専門職大学の1期生からは、「実社会を強く意識した学びを少人数で行うため、先生方が上司や先輩、時には親のように接してくださいます。将来はAIを活用したサービスで国際的に活躍したいです」、「大きな夢を実現できるレベルにまで成長していけると思い入学しました。理論と実践をバランスよく学べ、大作ゲームの制作に関わった先生からの知識も吸収できます」といった期待の声が集まっています。
新大学制度の専門職大学では、産業界や地域が教育に積極的に関わる仕組みが制度上できています。産業界・地域社会から専門職大学へは、教育者、実践知、実践の場などを提供でき、逆に専門職大学から産業界・地域社会へは、大学知、人材、現実問題の発見・解決などを提供することができます。
このように、産業界や地域社会と「win-winの関係」を構築できるのが専門職大学の良さともいえます。
そして、従来の大学のように研究室単位でなく、大学全体として産業界や地域社会と連携していくことができるのも特徴です。学生にとっては、大学院に進まなくとも学部生、しかも2年次から全員参加のプログラムとして実体験を積むことができます。卒業時には全員が産学連携での学びを修得して社会へ巣立つことができるのです。
専門職大学として、そしてモノづくり都市 名古屋ならではの立地を生かし、地元企業や自治体などとさまざまな連携に取り組む名古屋国際工科専門職大学。特にデジタル技術によるDX推進が大きな意義を生んでいくと思われます。この新大学から未来の「Society5.0」時代を担う、専門性とビジネス思考を兼ね備えたデジタル人材が数多く羽ばたいていくのではないでしょうか。
※1 AIコミュニケーションロボット「Kebbi Air」
https://www.nuwarobotics.com/ja/
※2 文部科学省 GIGAスクール構想の実現について
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
名古屋国際工科専門職大学(2021年4月開学)
https://www.iput.ac.jp/nagoya
本掲載情報は2021年8月時点のものです。
監修 / 進研アド
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