どうする? 勉強のスケジューリング [中学受験 4年生]
保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。
この春4年生に進級する新4年生を対象に、勉強時間の確保や、受験準備を始めるにあたっての環境整備について取り上げます。
■どうする? 習い事
中学受験することを決めてから、勉強時間を確保するため、習い事をやめさせようかと考えているかたも多いのではないかと思います。
結論から申し上げますと、本人が熱心にやっている習い事は、今やめるのはもったいない。4年生の段階なら、たいていの塾は週2回ですし、まだ授業も比較的やさしいことが多いので、できれば習い事とは両立させていただきたいと思います。習い事の数が多く、お子さまがあまり熱心でないものがあれば、ご本人と相談のうえ、整理するとよいでしょう。
ひとつ得意技を持っていると、勉強にも非常に役立ちます。新しいことを学んでも、「これはサッカーでいえばフェイントの練習に似ているかな」とか、「この文章は、ピアノでいえばこんな感じ」とか、特技に引きつけて自分なりに考えることができますし、何より「これが好き!」「得意!」という気持ちは自信の源になります。「好き」はすべての原動力ですから、お子さまの好きな習い事は、ぜひ続けさせてあげてください。
■今後は語学系の習い事が強みになる可能性も
なお、英会話など語学を習っている場合、中学入試でも強みになる可能性がありますので、ご本人が好きなら続けさせるとよいでしょう。今後、「話す・聞く・読む・書く」の4技能が求められることはまちがいありませんので、楽しく「聞く・話す」力が身に付き、たとえば『Oxford Reading Tree』(イギリスの小学生向け国語の教科書)のような、ネイティブ・スピーカー向けのテキストを使って「読む・書く」ことを学べる教室がおすすめです。ネイティブの人と話したり、英語で童話が読めたりすることが楽しみになる……そんな教室ならよいですね。
■チームメートや遊び仲間との「勉強会」のススメ
サッカーや野球などのチームスポーツをやっている場合、また、いつも一緒に遊んでいる仲間がいる場合は、その友達と一緒にグループで勉強するというのもよい方法です。受験勉強を始めるにあたり、お友達を同じ塾にお誘いしてみてはどうでしょうか。
たとえば、わからないところは友達になら気軽に尋ねやすいですし、自分はどこがわからなかったのか、質問を重ねるうちにはっきりしてきます。また、教える側にとっても、友達に説明するうちに、自分でもあやふやだった部分がはっきりしてきます。また、「どう伝えればわかりやすいかな」と考え、工夫して伝える技術を学ぶことは非常に大切です。これは決してむだな時間ではなく、むしろ学力の底力となる「本当の学び」といえます。ですから、「うちの子はあまり成績がよくないから、他の子に迷惑をかけるのではないか」「ほかの子に教えていては自分の勉強が遅れるのでは」といった心配は無用です。
友達とおしゃべりしながら楽しくやれるなら、勉強のつらさも半減します。可能なら、自宅を開放し、おやつを用意してあげて子どもたちが集まりやすくしてあげる、保護者どうしで曜日や週を決めて、自宅開放日を交代制にするといった工夫もよいと思います。勉強は一人きりでするもの、と思われがちですが、仲間と勉強するほうが身に付くことも多いのです。
■「勉強と遊びのけじめ」をつけるより、遊び感覚での勉強を
3年生までは、自宅学習といえば学校の宿題程度で、遊びや習い事が生活の中心というお子さまが多かったと思います。「受験勉強」というのはお子さまにとってまったく初めての体験。保護者のかたが経験してきた高校受験や大学受験と同じようにとらえては、お子さまに無理がかかってしまいます。保護者のかたが「勉強させなければ」と受験モードに入った瞬間、これまでは時間を忘れて遊びに夢中になる姿を「子どもらしくてかわいい」と思っていたのに、「時間の管理ができない」「だらしない」ように見えてきて叱りたくなる、といったこともしばしば起こります。
保護者のかたはぜひ、子どもを型にはめようとせず、子どもらしさをプラスにとらえてあげてください。子どもは本来、「勉強と遊びのけじめ」をつけるのが苦手です。楽しいことなら夢中になり、嫌いなことはまったくやりたがりません。その子どもらしさをむしろ利用して、「好き」「得意」を増やしてあげることが、この時期最も大切なことです。たとえば、おもしろい図鑑や事典の類をそろえて、子どもが興味を持ったことはいつでも調べられるようにしておくこと。パズルやクイズの感覚で問題を出してあげるのもよいですね。また、テスト前にはぜひ一緒に勉強してあげて、なるべくよい点をとらせてあげるようにしてください。「できた!」という達成感は「好き!」につながります。
また、たとえテストがうまくいかなかったとしても、それはむしろ当たり前ととらえ、お子さまの努力を認めてあげてください。この時期、多くの子どもたちは、塾という初めての場で、不安とやる気の入り混じった緊張感の中にいます。「成績が悪い」と叱るのは、いきなりお子さまの意欲をくじくことになり、百害あって一利なしです。
成績は成長の速さに大きく左右されています。成長がゆっくりなのは「不利」に思えますが、それは伸びしろが大きいということです。今後の学びの中で、お子さまがさまざまな「好き」「得意」を見つけ、のびのびと成長していけるよう、環境整備をしてあげることが大切です。