社会のニガテ、どう克服する? [中学受験] 4年生

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。4年生のうちに克服しておきたい、社会の苦手について取り上げます。



■「社会参加」の経験が社会科への興味につながる

社会科は、文字どおり「社会的なつながり」について学ぶ教科です。社会科は、まず自分が住んでいる町など、身近な地域について学ぶことから始まり、徐々に都道府県、地方、日本、世界……と視野を広げていきます。ところが、今は核家族も多く、親戚や地域のつながりも薄いケースが多いので、子どもたちは、なかなか自分と社会との関わりを実感できません。子どもは、実社会から隔離されているような印象さえ受けます。自分との関わりが感じられなければ、興味を持てないのも、ある意味当然です。

ですから、時間に余裕のある4年生のあいだに、ご家庭で地域社会とお子さまとの橋渡しをしてあげてください。保護者が、町内会の役員やボランティアなど、なんらかの地域活動をしていると、子どもも社会に興味を持ちやすいのです。



■お祭りや選挙は、社会を知る絶好のチャンス

たとえば「お祭り」は、社会について身をもって学べる絶好のチャンスです。お祭りの由来となっている言い伝えや歴史が身近なものになりますし、時代行列やお神楽など、昔の衣装や道具などにふれる機会もあります。また、どんな人が顔役になって運営に関わっているかとか、予算はどうなっているかなど、社会のしくみを身近に感じることができるかもしれません。できれば、観光客として見るだけでなく、保護者のかたと一緒に、準備や運営に参加できるといいですね。

また、町内会の活動や選挙なども、社会にふれるよい機会となります。今、この町ではどんな人が活躍していて、どんな人がどんな問題で困っているのか、昔は繁栄していたけれど、今は衰退してしまった産業のこと、町の特産物はどのように作られて、どんなルートで運ばれ、どこで売られているかなど、地域社会には、地理、歴史、公民のさまざまな要素が混ざり合って存在します。たとえば、町で選挙の街頭演説をしていたら、その内容に補足して子どもにわかるように話してあげる、その対立候補はどういう主張をしているかポイントを伝えてあげるなど、考えるきっかけをつくってあげることが大切です。
大人になれば、労働や納税の義務が生じますし、政治や経済とも無縁ではいられなくなります。子どものうちに社会参加の感覚が身に付いていると、学んだ知識を応用して考える力が育つのです。



■地理の食わず嫌いをなくすには「行く・見る」&「食べる」!

地理は、「単なる暗記だからつまらない」と思われやすく、苦手意識を持つ子が多い分野。地理の食わず嫌いをなくすためには、実際に行ってみる、自分の目で見る、そして「食べる」などの実体験が効果的です。

たとえば、私が住んでいる埼玉県の特産物として、川越のさつまいもがあります。元禄(げんろく)時代、柳沢吉保が開墾した広大な三富新田で、川越いもの栽培が行われ、川越街道や水運を通じて江戸との交易が盛んになった……というようなことを、教科書で学んでもなかなか頭に入りませんが、実際に広大な新田に立ち、ついでにそこでいも掘りをすれば、知識がひとつながりの体験として一気に身に付きやすくなります。全国の工業地帯の名前なども、単に暗記させられれば苦痛ですが、近くの工業地帯に実際に足を運んで、巨大な煙突や工場群が立ち並ぶダイナミックな光景を見ることで、鮮やかに記憶に残ります。

また、塾のカリキュラムでは、4年生は全国の都道府県について学ぶことがほとんどです。「旅行に行ったことがある」「親戚や友達が住んでいる」都道府県は覚えやすいけれど、なじみのないところはなかなか覚えられません。都道府県をパズルやクイズ形式で覚えるのもよいでしょう。また、他の地域や県に興味を持たせるには、ご当地グッズや食べ物を絡めるのもよい方法です。たとえば、地方自治体に2000円以上の寄付を行うと、住民税のおよそ一割程度が控除され、かつその地域の特産品がもらえる「ふるさと納税」といった制度を利用するのもよいかもしれません。好きな食べ物のとれる都道府県は、なかなか忘れないのではないでしょうか。
なお、都道府県名や地名は、まちがえて覚えてしまうとあとで直すのが大変です。友達の名前を覚えるように、なるべく正確に漢字で書こう、と指導してあげてください。

4年生の時点で社会は「暗記だから嫌い」となってしまうと、今後の成績が伸びにくくなります。5年生になると、時間がなかなかとれなくなりますので、今こそ、子どもたちにはなるべくたくさんのフィールドワークを経験させ、興味の芽を育ててあげてください。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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