育児生活が10年を超えるころ、気が付くと家族関係がギクシャク!? 原因と対策は?

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子どもが小さいうちは夫婦で子育てをしていても、子どもが小学生になると、子どもに関することは一方の保護者がメインとなっていて、気が付いたら家族関係がギクシャクしているという声は少なくありません。その原因とは何か、改善するためにできる対策について、大阪教育大学の教授であり、ファザーリングジャパン顧問の小崎恭弘先生にお聞きしました。

この記事のポイント

どちらか一方に負担や不満がたまり続けることで夫婦関係がギクシャク

——子どもの年齢が上がるにつれて、気付いたら父親(または母親)だけ知らないことが増えた、夫婦関係や親子関係がギクシャクしだした、というケースをよく聞きます。

そういうケースは多いでしょうね。子どもの成長・発達によって、夫婦・親子・家族関係は変化していくものなのですが、その変化にどちらか一方が気付いていなかったり、夫婦で変化を共有していなかったりすると、一方だけがつらくなっていきますし、子どもとの距離もできてしまいます。

たとえば子どもが未就学児で共働き家庭の場合、親は仕事場以外に1日2回保育園に行かなければなりません。夫婦で協力しないと、そのミッションはクリアできませんし、絶対にしなければいけないことをこなしていく中で、子どもを取り巻く環境にも関わっていくことになるため、自然と子どもの変化に気付けます。

ですが、子どもが小学生になると、親の送り迎えなしに通学するようになるため、肉体的、時間的な拘束は減っていきます。
それと同時に一人の保護者、たいていは父親ですが負担が軽くなった分を仕事に振り分けて、家族の稼ぎ手としての役割を担っていくことが多いので、子育てや家族からちょっと距離ができます

それはある意味家族を回していくうえで合理的でもあるのですが、小学生になると子どもの世界が親の知らないところでどんどん広がっていきます。そのため、折に触れて世界を共有しておかないと、その変化についていけなくなり、わからなくなってしまいます。わからないと、その中に入っていくことが面倒に感じてより子どもとの距離ができてしまうのではないかと思います。

小学校時代は大変な部分を主に母親が担っていることが多いです。
配られたプリントを確認する、必要なものを準備する、宿題を管理する、日中に保護者会に参加する、PTA活動をするなど、夫婦でないと物理的に乗り切れないとは言い切れないかもしれませんが、やはり大変です。
その負担や不満が大きくなった時に、「どうして私ばっかり」となり、夫婦の中でギクシャクしていくのではないかと思います。

もちろん、子どもと積極的に関わりたいと考えている父親も多いです。ですが、小学校は基本的に平日の日中に行事や保護者会、PTA活動が行われることが多いため、仕事を休む必要があります。
少しずつ状況は変わっていますが、今の日本の会社では、父親が休んで学校のことに関わりにくいという状況はあるといえるでしょう。そうなるとなかなかできないということも多いのではないでしょうか。

子どもは成長し、変化していくということを理解して

——そのような夫婦間・親子間のギクシャクはどう改善すればいいのでしょうか?

前提として、子どもは成長し、変化していくものであるということを理解してください。そして、今何が好きなのか、学校でどんなふうに過ごしているのか、友人はどんな子なのかなど、子どもに対して興味・関心を持ち、それを家族で共有することが大切です。

高学年になると、個人差はありますが、第二次性徴期に入ったり、思春期の入り口やど真ん中に入ってきたりして、普段から子どもと意識してかかわっていたとしても扱いにくい時期です。
勉強も難しくなり、住んでいる地域によっては中学受験に向かっていくなど、子どもと親は社会的な大きなタイミングにさらされます。そんなとき、子どもとその周りを取り巻く環境の変化に、父親または母親だけが興味・関心を持たずにいると、夫婦関係、親子関係はズレてしまうことが多いです。

毎日根掘り葉掘り子どもから聞き出す必要はありませんが、やり取りを続けることで、子どもも「私に興味・関心を持ってくれているのだな」「大切に思ってくれているのだな」と実感してくれるのではないかと思います。さらに言えば、父親・母親もお互いに興味・関心を持てるようにできるといいですね。

節目を意識して、行事をうまく活用しよう

——家族の変化をどう意識していけばいいのでしょうか?

実際、家族の変化を毎日意識するというのは大変だと思います。そういう意味では、節目を意識して、行事を装置として活用していくといいでしょう。
学校では、入学式、卒業式、運動会、授業参観といった行事があると思います。3月31日と4月1日で子どもは変化しませんが、そのタイミングに入学式があり、年度が変わって学年が上がるということで、子どもの成長・変化を実感できますよね。
運動会でも、たとえば子どもが6年生になって、組体操をしている姿を見ながら、1年生のときに徒競走で転んで泣いていた姿を思い出して、子どもが成長したのだと実感できます。それらが思い出になり、家族の軌跡になっていくのだと思います。
学校だけでなく、誕生日や季節の行事、お墓参りなどの節目を家庭で意識的に取り入れることで、子どもの、夫婦の、家族の変化と成長を実感し、共有できるのではと考えます。

まとめ & 実践 TIPS

子どもは成長とともに変化していくものです。それに伴い、夫婦関係、親子関係、家族関係も変化していきます。一緒に過ごす家族に対して、毎日興味・関心を持つことは、難しい場合もあるかと思いますから、節目を意識して、行事などで家族みんなの成長や変化を実感し、共有できるといいですね。

取材・文/本間勇気

プロフィール

小崎恭弘

小崎 恭弘

大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育コース(保育学)教授

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリング・ジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信を行う。2014年に出版した『男の子の本当に響く叱り方・ほめ方』(すばる舎)が子育て関連本で大ヒット。そのほかにも『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパルール』(合同出版)など、著書多数。新聞等で連載を執筆。

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