はたして我が子は伸びるのか? [中学受験] 5年生

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。5年生を対象に、成績が伸び悩んでいるお子さまの見守り方について取り上げます。



■見限られた時点で、子どもは伸びなくなる

何度かお伝えしたとおり、5年生の2学期は成績が伸び悩みがちな時期です。
いくらほめても叱っても励ましても、成績が上がらない。偏差値はいい時でも50に届かない……となると、お子さまへの期待が急速にしぼんでいき、「この子はもう伸びないんじゃないか」と考え始める保護者のかたも少なくありません。塾では常に偏差値などの数値で評価されるため、自分の子どもを他の子と比べることが習慣化してしまいがちです。
しかし、保護者が「ここまで」と思ってしまったら、子どもは本当にそこまでしか伸びません。子どもを見限るのは、保護者として絶対にしてはいけないことです。



■偏差値に現れているのは「成長差」

今、偏差値に表れているのは、実力差ではなく、半分以上が「成長差」です。認知力の伸びには個人差がありますが、6年生の1年間、入試の前までには大きく伸び、偏差値でいえば10ポイント以上、上がることも少なくありません。
また、認知力の伸び方は、比例のグラフのように直線的ではありません。二次関数のグラフのように、しばらくはほとんど成長の見えない時期が続き、ある時点を過ぎると急速な伸び方をします。成長が目立たないのは、木が土の中に根を張っている時期だと思ってください。よく根を張っている木ほど、よく育ちます。
成長が見えない時期、保護者に能力がないと判断されるのは、伸びる力を蓄えているところなのに、水や栄養を絶たれてしまうのと同じ。子どもにとってこれ以上つらいことはありません。
この時期、学習内容は基礎に絞り、量も質も「がんばりすぎない」ことを心がけてください。疲れていたら休ませることも大事です。諦めずに、だましだまし続けることです。
なお、スパルタ式に無理やり学習させると、比例のグラフのように直線的に成績が伸びるケースがありますが、スパルタをやめると同時にまったく伸びなくなります。スパルタ式は、条件反射的に答えを出す癖を付けているだけで、自分で考える力は身に付きませんし、子どもを疲弊させるだけなので、おすすめできません。



■考える力を養うには、たくさん「話す」こと

学ぶことは、考える力を養うことです。中学受験においても、知識だけでなく、考える力を重視する学校がほとんどです。そのために重要なのが「話す」ことです。保護者のかたとの日々の会話、おしゃべりが、考える力を養い、認知力を上げるのに役立ちます。言葉は、頭の整理を促し、考える力を育てます。考える力が育っていないのではないか、と思ったら、ぜひお子さまに優しい言葉で、丁寧に語りかけるよう心がけてください。
たとえば、気持ちを言葉にするのは難しいことです。お子さまが何か言いにくそうにしていたら、「あなたは今、こんな気持ちなの?」というふうに、相手の気持ちを想像して、言葉にしてみてください。そうすると、子どものほうにも「自分が考えているのはそういうことだったんだ」とか「いや、違う。そうじゃなくて、今思っているのは……」というふうに、相手の言葉のニュアンスをくみ取りながら、自分の頭の中を整理し、言葉にする習慣が付いてきます。普段から、考えながら話す訓練をしていくと、認知力はしだいに伸びていくのです。



■お手伝いはしたほうが、勉強もできるようになる

自分の着るものを自分で選ぶ、部屋を片付ける、洗濯物を畳むなど、自分の身の回りの世話やお手伝いも、考える力を育て、成長を促すきっかけになります。たとえば食事の準備なら、おうちのかたが作っている献立を見て、「お箸とお皿を用意しよう」「スープがあるから小鉢とスプーンもいるな」というふうに、段取りを考えることが必要になります。段取りを考えられる子は、たいてい勉強もよくできます。
この時期、保護者は「勉強が忙しいのだから」「時間がないから」と、つい先回りして子どもの世話を焼きがちですが、むしろお手伝いや自分のことは進んでさせたほうがよいのです。自分の身の回りのことができるということは、セルフコントロールができるということ。そして、きちんとできたことは、必ずほめてあげてください。「できた!」という実感の積み重ねで、子どもは自信を付けていきます。



■人と比べずに、成長を認めて

成長がゆっくりしたお子さまは、他人と同じ物差しで測ると不利に見えます。しかし、それは決して能力の違いではありません。お子さまが努力して、少しでも伸びた部分があれば一緒に喜び、ほめてあげると同時に、振り返りをさせてください。「あれをがんばったら、こんなにできるようになったね」「すごいね」というふうに。それを繰り返すうちに、お子さまのほうも成績を伸ばすコツがわかってきます。
繰り返しになりますが、「保護者が見限ったらおしまい」です。お子さまの成績が伸び悩んでいる期間は、保護者のかたの我慢のしどころです。どんな子にも、必ず伸びようとする力があります。
辛抱強く、ある意味執念深く、お子さまの成長を見守ってください。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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