長い文章を読み慣れず解答できないので、漢字と語句の理解をがんばらせています[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

海外の現地校に通っており、この夏に帰国しました。こちらでテストを受けるようになってみると、国語の読解で、選択肢問題はともかく、記述問題は解答できません。まだ、長い文章を読み慣れていないのが原因のようです。そこで、せめて漢字と語句の意味を理解することだけでもがんばるように言っていますが、これでよいのでしょうか。

相談者:小5男子(大ざっぱなタイプ)のお母さま



【回答】

語彙力の強化と共に、読む力を5年生のうちに付ける。


■まずは語彙力強化を

語彙(ごい)に関しては確かに国語の基礎・基本ですから、塾での学習はもちろん、ご家庭でも積極的に語彙を増やすことを心がけましょう。熟語はもちろん、慣用句、ことわざ、故事成語など、覚えるべきものはかなりあると思います。「こんな言葉を知らないの」と思える言葉の意味もわからない可能性もありますから、漢字や言葉の問題集を使って、毎日15分程度の勉強をしっかりくり返しましょう。語彙の勉強は毎日のくり返しが重要ですが、3か月ほど集中して勉強すると目に見えて効果が出てくると思います。

それからもう一つ。漢字は書いて覚える(つまり入力する)だけではすぐに忘れます。覚えた漢字を長期に記憶していくためには、覚えた漢字を使う(つまり出力する)ことです。そのためには、文章を書く時にできるだけ漢字を使う、あるいは、漢字の書き取りのテストをくり返し行うとよいでしょう。


■「漢字と語句だけでもがんばる」では足りない

語彙力強化の重要性は既に述べたとおりですが、「せめて漢字と語句だけでもがんばる」というのでは足りないと思います。ご質問の文面の中に、「この夏に海外から戻ってきて」しかも「現地校に通っていた」とありました。小学5年生という年齢から察するに、現地の言葉はかなり堪能になられたと思いますが、日本語のほう、特に読み書きはご苦労されているのではないかと思います。そのために帰国子女入試を考えられたのだと思いますが、帰国子女の国語の入試問題でも、必ずしも易しいものが出題されるわけではありません。中学に入ってからの授業や学習に耐えうる国語力の有無を判断する材料になるわけですから、当然といえば当然でしょう。

中学からの学習内容は量的にも質的にも飛躍的にレベルが上がってきますから、それに耐えうる国語力を付けておかなければならないのです。そのためには、6年生になる前の今がチャンスだといえるでしょう。一般的な中学受験をめざすこの時期の5年生は、算数にかなりの時間を割いていると思いますが、お子さまの場合は算数と同じくらいの時間を国語に割り振ってもよいでしょう。


■読む力やスピードを付けるには時間がかかる

お子さまは「記号を選ぶ問題はまだいい」が「記述問題になると解答できない」とのことでした。確かに、「書く」ことを苦手とする受験生は多いと思います。しかし、何といってもまずは「読む力」を付けることが最優先でしょう。

入試ではある程度のスピードで読むことが求められます。帰国子女のお子さまでなくても、文章を読む速さが他のお子さまに比べて遅いお子さまがいます。書く力や考える力は十分にあるのに、読むスピードが遅いために時間内に答案を仕上げることができません。問題を解消するには読むスピードを速くしていけばよいのですが、これがなかなか難しいのです。記述問題の苦手を解消するよりずっと厄介でしょう。それほど読む力、読むスピードは短期間では身に付けられないものです。

読む力やスピードを付けるにはさまざまな方法があると思いますが、ひとつには「読み慣れる」ということです。具体的な学習方法としては、今のお子さまの読解力によりますが、まずは文章を音読させてどの程度読めるかを確認することから始めるとよいでしょう。読めない熟語や意味がわからない言葉はどのくらいあるのか、読み飛ばしをしたりしていないかなどをチェックしましょう。


■一文にする、さまざまなテーマの文章に慣れる

音読させてそれほど問題がなければ、次は500字~800字程度の短めの文章から始めて、何が書いてあるかまとめるという作業をくり返すとよいでしょう。文章を読んで「○○の物語」とか「○○の話」という具合に一文でまとめられるようにします。この時、文章の大事なところに記号や線をひくなど印を付けながら読む練習をすることも有効です。物語文なら登場人物や心情を表す言葉に印を付けます。特に、気持ちの変化とその原因には注意しましょう。また、説明的文章であればくり返し出てくる言葉、接続語や指示語、中心文に印を付け、その文章の話題や筆者のイイタイコトを理解し、やはり「○○の話」と一文にする練習をくり返しましょう。

物語文の場合はどうしても“あらすじ”になってしまう可能性がありますが、たとえば、「仲が悪かった兄弟が、母の病気をきっかけに、お互いを思いやるようになった話」などと要領よくまとめられるようになることがポイントです。また、文章を読む速さも意識しましょう。最初はゆっくりでもよいですが、だんだん速くして、少なくとも1分間に500字くらいで読んで理解できるようになるようにがんばってください。ちなみに、大人の読む速さは1分間に600字が一般的のようです。

6年生になると文章は、ますます難しくなります。特に説明的文章は、今まで読んだことのないようなテーマ、たとえば芸術や文学の話などが出てくることもあります。抽象的でわかりづらいとは思いますが、それでも、何度も読んでいるとだんだんと慣れてきます。最初はやさしめのものから、徐々に入試で出てくるような難しいテーマを扱ったものまで、読めば読むほど読解力は付いてくることでしょう。
このように、5年生の間は、語彙力の強化や文章に慣れることに、より力を注ぐべきだと思われます。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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