上手に説明して指導することができず、言い合いになってしまうこともあります[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

国語のテストで、説明文ではそれなりに得点できますが、物語文では極端に得点できなくなります。登場人物の気持ちが読み取れない、語彙(ごい)力が不足しているなど、原因はいろいろ思い当たります。けれども、それを上手に説明して指導してやることができず、言い合いになってしまうこともあります。

相談者:小4女子(性格・大ざっぱ・わんぱくなタイプ)のお母さま



【回答】

教えるのではなく「一緒に考えてあげる」という姿勢が大切。


■語彙不足のチェックと対策

まずは、語彙力不足の可能性から考えていきましょう。説明文と物語文とでは、使われる語彙に少なからず違いがあります。説明文では点がとれるのに、物語文になると極端に点がとれないのは、慣用句における語彙不足の可能性が考えられます。慣用句とは、「耳が痛い」などのように、二語以上の単語が固く結び付き、まったく異なる意味を持つものです。大人にとっては常識的で耳慣れた言葉でも、子どもには意味がわからない場合も少なくありません。

慣用句の不足を疑うのであれば、他の語彙不足のチェック方法と同じように、文章を読ませて難しそうな言葉についてその意味を質問してみましょう。慣用句の場合、「こんな言葉がわからないの!?」と思うような言葉を知らないこともありますから、かなり易しめ(すなわち、よく使うような言葉)でも質問すべきでしょう。もし慣用句が苦手とわかったら、慣用句の単語集や問題集を使って、毎日短時間でよいですから勉強していきましょう。3か月もすると、成果が少しずつ形になって出てくると思います。

■気持ちを読み取るチェック

次は、登場人物の気持ちが読み取れない点についてです。物語文になると点がとれなくなるのは、心情が読み取れないことに原因があるかもしれません。こちらもチェックする方法としては、物語文を読ませて登場人物の言葉や行動から、どのような気持ちが推測できるかを答えさせればよいでしょう。気持ちをまったく想像できない場合もあれば、なんとなくわかるが言葉にできない場合、あるいは、幼稚な言葉でしか表現できないなど、“読み取れない”にもいくつかの段階があると思います。しかし、どのレベルであったとしても、動作や言葉から気持ちを想像し、それを適切な言葉で表す練習をくり返していけば、少しずつ心情表現に対する苦手もなくなってくると思います。

■うまく説明ができないなら、あえて教えることは避ける

しかし、どのような言葉が適切なのかを保護者のかたもうまく説明できない場合はどうしたらよいのでしょうか? 上手に説明できなければ、確かに「言い合いになってしまうこと」もあるでしょう。これが親子で勉強する時にいちばん厄介な点です。お子さまとしては保護者のかたに対する甘えがあるでしょうし、保護者のかたは保護者としての権威を気にしたり、そもそも指導のための知識や方法が不足したりしている場合もあるでしょう。保護者のかたがよかれと思って口を出したものの、的確に説明できずについケンカになってしまう。嫌な気持ちになる割には得るものは少ないのですから、このような時間は極力なくしたいものです。

こうした状況に陥らないためには、保護者のかたのほうの考え方を変えるべきだと思います。「保護者なんだから」と保護者の権威を失わないようにしようとすると、つい「説明しなければ、教えなければ」という姿勢が強くなります。しかし、うまく説明することができないなら、あえて教えることは避けるべきです。そのような場合は、教えるのではなく「一緒に考えてあげる」という姿勢がいちばん大切だと思います。

■「わからない」を整理して先生に質問する

「一緒に考える」といっても、主体はもちろんお子さまです。保護者のかたの役割としては、自分がわかるところまで教えてあげて、それ以降は「どこ」が「どのように」わからないかをお子さまに考えさせ、整理させればよいでしょう。そして、どこがどのようにわからないかがわかったら、それを塾の先生などに質問させればよいのです。こうした質問は、質問を受ける先生としても大歓迎でしょう。たとえば、「傍線部における登場人物の気持ちは、解答解説では『うれしい』とあるが、涙ぐんでいるのだから『悲しい』ではないか?」というのが、「どこ」が「どのように」にわからないかが明確な質問の例です。

それからもう一つ大切なことは、質問してお子さまが理解できたら、今度はその内容をお子さまに説明してもらうことです。自分でわかることと、他の人に説明できることとは違います。後者のほうが、より深い理解が必要です。保護者のかたに説明できるくらいになれば、お子さまの理解は本物だということです。このようなことをくり返していくと、やがてお子さまは自分一人で的確な質問ができるようになると思います。そして、そのくらいになれば、テストの成績も数段階レベルが上がっていることでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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