解き方はわかっているようですが、解答に行きつかないことがあります[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子のお母さま


質問

図形が苦手です。それぞれの問題の解き方はわかっているようですが、解答に行きつかないことがあります。


小泉先生のアドバイス

つまずいているステップによって、その解決方法が違ってくる。

「解き方がわかっているようなのに解答に行きつかない」ということですが、解く過程の中のどこでつまずいているかによって解決策が異なります。解く過程とは、問題を考え始めてから答えを出すまでの各ステップを意味しますが、単純なモデルで示せば次のようになります。ここでは、「解法の手順」と呼ぶことにして、それぞれのステップで何を行うのかを説明しましょう。



まず「整理ステップ」とは、問題文を読んだり図を見たりして条件を整理していくステップです。問題を解くためには、隠された条件を含めすべての条件を整える必要があります。たとえば、図形問題で≪問題文にある条件をすべて図に書き写す≫などの作業がこれにあたります。この作業を行うことで、図だけを使って問題が解けるようにするのですが、図形が苦手な生徒さんは、これがしっかりできていないことが少なくありません。また、いわゆる難問とされる問題でも、条件を整理することで問題の本質が初めて明らかになるものも多くあります。簡単そうに見えて、実はなかなか手ごわい重要なステップと言えます。

次は、「着目ステップ」です。ここは問題を解くための「糸口」を見つけるステップですが、同時に、ある程度は解法の方向性が見えてくるステップとも言えます。解法の方向性が決まるということは、使うべき公式がほぼ決まるということで、次の「公式ステップ」では実際に使ってみるということになります。問題が解けてきて、すんなり次の「計算ステップ」に行ける場合もあれば、行きづまって「着目ステップ」に逆戻りする場合もあるでしょう。「着目ステップ」と「公式ステップ」を行ったり来たり、「試行錯誤」を繰り返しながら正しい解法の道すじを探っていくのです。「着目ステップ」では、図形の「特別なところ」(たとえば角ABCが直角である)や「同じところ」(たとえば辺ABと辺ACが等しい)などに注目するのが一般的ですが、場合によっては補助線などが必要なこともあるなど、一番やっかいなステップとも言えます。

「公式ステップ」は、すでに説明した通り、公式にあてはめていくステップです。また、「計算ステップ」では計算して、出た答えを検算して確かめます。計算ミスなどのケアレスミスに注意して、やっと正解にたどり着けることになります。

以上が「解法の手順」であり、算数や数学の解き方を単純化したモデルです。問題によっては、これらの手順を何度か繰り返す必要があるものもあります。難しい問題になればなるほど、手順は複雑になるでしょうが、基本的な手順はこのモデルが示す通りです。そして、つまずいているステップによって、その解決方法が違ってくるのです。

たとえば、最初の「整理ステップ」でしっかり条件を整理してからでないと、次のステップに行ってはいけません。条件がすべてそろっていないので、解けそうに見えても解けないのです。こんな場合は、問題文をもう一度しっかり読ませて、まだ隠れている条件、あるいは読み飛ばした条件をしっかり図に書き写すように指導します。今回のご質問にあった、「問題の解き方はわかっているようですが解答に行きつかない」というケースに当てはまることも少なくないと思います。条件がまだ不足しているのですから、解けるはずがありません。「似たような問題で解けたはずなのに……」と思ったら、まずは条件不足を疑ってみるのが良いと思います。

次は、「着目ステップ」でのつまずきです。すでに説明した通りこのステップが一番難しく、試行錯誤しながら解法の糸口をさぐる作業になります。解法のための着目点がでたらめでは、解答にたどり着くことはありません。以前やったような問題なのに、なぜか解けないというのは、このステップで迷っている場合が最も多いでしょう。解法のための糸口を見だすための一番の方法は、やはり問題数を解くことです。どのような点に着目すれば問題が解けるのかを、経験的に身につけていくことが大切です。問題演習量の多い少ないが、力の差として顕著に現れるステップと言えると思います。

次の「公式ステップ」では、間違わずに公式を使えば良いわけですから、それまでの道すじに間違いがなければあまり問題ないはずです。しかし、次の「計算ステップ」で引っ掛かる人は案外多いかもしれません。ここまで来て正解に行きつけないのはあまりにも残念ですから、ミスをしないような計算力を養うことが大切です。計算力に自信のない生徒さんは、毎日20分程度、計算ドリル演習を行うと良いでしょう。

以上、「解法の手順」から考えると、やはり「整理ステップ」と「着目ステップ」でつまずく場合が多いでしょう。どこでつまずいたかを確認するには、それぞれのステップを考えながら解答・解説をたどっていけば良いと思います。よくつまずくステップがわかったら、上記に挙げた対策を講じるなどして問題点を克服していきましょう。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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