「割合」をほとんど理解できていません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま


質問

算数の文章題で、「問われている意味がわからない」と言うことがよくあります。そのような時は声に出して何度か読ませ、それでも理解できない時は、ポイントになる部分だけを示して読ませるようにしていますが、いまひとつわかっていない時が多いです。「割合」をほとんど理解できていないようで「○円の30%引きはいくらになる?」と聞いてもまったく答えられません。


小泉先生のアドバイス

「割合の理解がほとんどできていない」は緊急事態。

6年生の時点で、「割合の理解がほとんどできていない」というのは、中学受験では緊急事態といってよいでしょう。割合や比の考え方は、文章題はもちろん図形問題でも頻繁に使われます。すぐに割合の基本から復習して、理解を深めましょう。割合や比がネックになって、わからないことが日々増えている状態かもしれません。

●イメージしにくい問題は図を使ってわかりやすく
日常生活でも、割合を使った表現は少なくありません。なかでも、(1)10回打席に入って3回打ったバッターの打率、(2)2500円の20%の金額、などは比較的理解しやすいと思います。しかし、(3)1500円の30%びきの金額、のように少しひねられると、どのようにして求めたらよいのかイメージしにくいのかもしれません。お子さまの言う「問われている意味がわからない」とは、まさにこの「イメージしにくい」ということだと思います。言葉と数字だけでは、いったい何が起こっているのか、何をどうすれば答えが求められるのかわからないのです。

こんな時は、全体を見渡せるように、線分図や絵図を使っての説明が効果的です。たとえば、(3)1500円の30%びきの金額は、図1のように表せます。

求めるものは□円であり、求めるためには1500円から1500円の30%である450円をひけばよいでしょう。あるいは、1500円の70%を求めればよいことが目で見てわかります。式に表すと、1500×(1-0.3)=1050(円)となりますが、式と図をあわせて考えることで、何をどのようにして答えを出したのかが実感としてわかると思います。なお、割合では以下の3つの公式を使いますが、線分図のどの部分が、「割合」「比べられる量」「もとにする量」なのかをしっかり確認しながら理解していきましょう。



割合=比べられる量÷もとにする量
比べられる量=もとにする量×割合
もとにする量=比べられる量÷割合


●イメージしにくい「1あたりの量」
さらにイメージしにくいのは、図2に表したように、(4)欠席が6人で、それが全体の15%の時の全体の人数、といった問題でしょう。式に表すと、(4)6÷0.15=40(人)となります。6人が全体の15%にあたるわけですから、全体を出すためには6を0.15で割る、すなわち「1あたりの量」を出せばよいということになります。しかし、この「1あたりの量」という考え方をすんなり理解するのは小学生にはなかなか難しいようです。恐らく、小数で割ることに違和感を覚えるのでしょう。先に示した3つの公式を暗記して、当てはめてしまえばよいのですが、違和感があると覚えにくいものです。そんな場合は、3公式のうちの覚えやすい式である「比べられる量=もとにする量×割合」を変形して、いつでも「もとにする量=比べられる量÷割合」が出せるようにしておくとよいでしょう。

あるいは今回のような簡単な問題を下のような図と共に覚えておいて、部分から全体を出す時には、部分の数(6人)を、部分を示す割合(0.15)で割れば、全体(40人)が出てくると覚えておくのもよいと思います。

●より具体的な指導を心がける
文章や数字だけでなく、図にして目に見える形にすることは理解を深めます。また、わかりやすい式を変形させて他の公式を導けるようにしたり、具体的な例題を図と共に覚えておいたりすることは、忘れやまちがえを少なくします。小学生は抽象的な概念を理解することがまだまだ苦手ですから、より具体的に、より目で見やすいように、より身近なところから出発するように説明を心がけましょう。割合だけでなく、文章題全体においても理解がグッと深まると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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