本をたくさん読んでいるのに、国語の物語文の問題で「気持ち」を読み取ることが苦手です[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小4男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま
質問
本を読むのが好きでたくさん読んでいますが、その割に国語の物語文の問題で、登場人物の「気持ち」を読み取ることが苦手なようです。普段の生活やテレビを見ている時などにも、「気持ち」を推測するような質問を投げかけたりしてみますが、なかなかすぐに言い当てることができません。
小泉先生のアドバイス
「言動」や「気持ち」と関係性を学ばせ、覚えさせる。
●「言動」と「気持ち」の関係
人の「言動」と「気持ち」には、下図のような関係が考えられます。たとえばお母さんが「叱った」(Bの言動)ことにより、子どもが「悲しくなり」(Aの気持ち)、「泣いた」(Aの言動)という流れです。ここで、「Aの気持ち」については、「悲しくなった」と直接的には表現されない場合も多く、前後のBやAの言動により想像することになります。そして物語文の試験問題では、この「Aの言動」に傍線がひかれて「Aの気持ち」が問われることになります。しかし、なかなか読み取れないお子さんも少なくないようです。そんなお子さんには、「言動」と「気持ち」にはこのような関係があることをまずは説明するとよいでしょう。
●一対一の関係を覚えさせる
次に必要なことは、「Aの気持ち」はそのあとにある「Aの言動」によってある程度読み取れることを理解させることです。たとえば、「こぶしで机をたたく」という動作からは、「腹立ち」が読み取れます。つまり、ある動作は間接的な心情表現として、ある感情を示すということです。このような一対一の関係は、多くの人にとって共有されている約束事であり、これにより我々はコミュニケーションをとっているわけです。しかし、こうした関係があまり理解できていない子どもたちにとっては、気持ちを想像することはかなり難しくなるでしょう。いくつかの代表的な言動と気持ちの関係を覚えさせると共に、言動に隠されている気持ちを常に考えるように指導してあげましょう。
●「気持ち」を言葉に表現できない
言動の隠されている気持ちはなんとなくわかるが、それを言葉に表現できないという場合もあります。子どもたちは語彙(ごい)が少ないために、その気持ちを的確に表現できないのです。また、変なことを言ったら恥ずかしいという子どもなりのプライドが邪魔をして、言葉にできないこともあります。いずれの場合も、そうではないかと思える言葉を、いくつか挙げさせましょう。まちがえていても問題ありません。ポイントは、当てはまりそうな言葉を自分の中にある語彙のストックから抜き出す練習をすることです。最後に適切な言葉を教えてあげることはもちろん必要ですが、その前に、必ずお子さまが自分自身で考えるという過程をつくってあげてください。
●単純な心情から複雑な心情へ
簡単な心情を読み取れるようになってきたら、徐々に複雑なものにも慣れていきましょう。たとえば、人は泣いている時でも「うれしい」場合があります。あるいは「うれしい」だけではなく、同時に「ありがたい」と思っていることもあるでしょう。このように、複雑な気持ちや複数の気持ちを想像するためには、傍線部の心情表現だけではなく、もっと広く文章の流れを読み取る必要があります。紛らわしい場合でも、文脈の流れを丁寧に読めばはっきりとわかるようになると思います。
なお、ご質問の中に「本を読むのが好きでたくさん読んでいますが、その割に~」とありますが、本の種類によっては細かい心情を読み取る必要がないものもあります。また、細かい心情などを気にしないで、展開だけを楽しむという読み方もあるでしょう。“本を読んでいれば国語は安心”とは、決めつけないほうがよいと思います。