辞書引きを面倒がる子ども 興味を持たせるには
- 学習
今は、電子辞書やスマホで簡単に「ことば」の意味を調べられる時代です。そんななか、分厚くて重たく、字がたくさん書いてある国語辞典を使って意味調べをするのは、子どもにとってはおっくうなもの。意味を調べても、ただ書き写すだけの作業になってしまいがちです。
では、どうすれば、興味を持って調べることができ、意味調べが有意義な学習になるのでしょうか。
(赤ペン先生 吉田)
1.子どもがよく知っていることばを調べてみる
国語の宿題では、そもそも、難しいことばを調べるのですから、最初からそれを楽しいと思えるのは少数派、大半の子どもが、面倒くさいと思っているのではないでしょうか。
さて、自分はどうだったか……と振り返ってみたところ、小学校時代のある国語の授業を思い出しました。
意味調べの学習をしていたときだったと思います(私も意味調べは好きではありませんでした)。ひとりの男子がふざけて、その年頃の男の子が好きそうな調べなくてもわかることばを国語辞典で調べ、その内容を大きな声で読み上げました。みんな大爆笑しました。
先生も苦笑していましたが、私も、内心「面白い!」と思いました。「知っていることばを調べる」ことは、まさに、発想の転換でした。ほかのことばも辞書で調べたらどんなふうに書いてあるんだろうと興味をもち、家に帰ってから、いろいろ調べた記憶があります。
今思えば、これが辞書を引くことに興味を持った第一歩だったのでしょう。これをきっかけに、「辞書で調べる」ことが受け身ではなくなったような気がします。
このように、興味があることばやもともと知っていることばなどを、面白おかしく調べていくうちに、だんだん「ことば」そのものに関心を持つようになり、「もっと調べたい」という意欲につながっていけば、国語の意味調べも単なる書き写し作業ではなくなっていくように思います。
お子さまがなかなか自分から辞書を引きたがらない場合は、おうちのかたがまず最初に、お子さまの興味をひくようなことば(サッカーが好きなお子さまなら「サッカー」など)や、「右」や「青」などのような当然みんなが知っていることばだけれど、いざ意味を聞かれたら説明するのに困るようなことばを、辞書で引きます。そして、「見て! こんなふうに書いてあるよ」などと声をかけることから始めてみてはいかがでしょう。
2.辞書と「友達」になろう!
辞書は、何度も引いていると、だんだん使い方にも慣れてきて、引くのが速くなってきます。引き慣れてくれば、辞書を引くことに対して抵抗がなくなります。
辞書に慣れるためには、辞書をお子さまの手に取りやすいところに置き、いつでも調べられるようにしておくとよいと思います。
時には、おうちのかたが、「あなたのほうが調べるのが速いから、ちょっと調べてみて!」などと、ほめながら頼んでみるのもいいですね。子どもは、おうちのかたに頼まれたらうれしいものです。特に、自分の興味に関連のあることなら、率先して調べてくれるでしょう。
家族での会話や、テレビのニュースなどで、意味がわからないことばが出てきたらすぐに調べるという習慣がついたころには、きっと「辞書と友達」になれているはずです。友達的存在の辞書になれば、国語の意味調べも楽しくできそうではありませんか。
3.「しりとり」で調べる意欲を刺激しよう!
辞書には調べたことばだけではなく、ほかのことばも同時に目に入るという利点があります。調べたことば以外のまわりのことばにも関心がいくように、ちょっと変わった「しりとり」をしてみてはいかがでしょう。
辞書を使って調べてもよいルールにします。おうちのかたは、なるべく、ことばの最後の音節が同じになるようなことばを続けて言うようにします。
たとえば、りんご→ゴルフ→笛(ふえ)→SF(エスエフ)……などと、「ふ」攻めにしていくと、お子さまは、「ふ」から始まる言葉を一生懸命探すでしょう。また、「ふ」攻めにされたお子さまは、反撃に転じて、おうちのかたを、たとえば「る」攻めにしようと必死になるかもしれません。これは、自分から進んで調べるという姿勢のもとになるように思います。
遊びを通して、知らず知らずのうちに語彙(ごい)も増え、辞書の引き方にも慣れ、辞書には、ことばの意味だけではなく、用例・用法も書いてあることにも気付けます。
新しいことばの発見は喜びになり、子どもの「もっと知りたい」という気持ちを刺激します。その延長線上に、国語の意味調べも存在してくるのではないでしょうか。
まとめ & 実践 TIPS
辞書を引くことは、手間がかかることですが、苦労が多いほど、達成したときの喜びは大きいものです。そして、辞書を引くという苦労は、形としてしっかり残ります。使い込まれた辞書は、手あかで黒くなり、引いたことばに印をつけておくと、印でいっぱいになります。それは、努力の跡です。
手軽で速い便利なものも魅力的ですが、努力した時間が刻み込まれた跡を自分で確認できるのも、このうえなく心地よいものです。自信が持てます。そういった経験をぜひ多くの子どもたちにしてほしいと願います。
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