「楽しい!」と感じることが、学びのきっかけに 大学研究室を訪ねて
日本大学、文理学部国文学科教授の田中ゆかり氏の研究室を訪ね、これからの未来をになう子どもたちへのメッセージをいただいた。ご自身の学生時代を振り返りながら、高校・大学ではどのような姿勢で学びに向かうべきかについてお話ししていただいた。
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大学時代の私は、文献などに記録された言葉の研究が中心の当時の日本語学に、どこかしっくりこない感覚を持っていました。漠然と「言葉を通じて今を切りとりたい」と考えていたのです。そんな時に出合った「生きた言葉」を取り扱う、当時最新の研究の数々。「こういうのも研究として“アリ”なんだ! 楽しい!」と思えたことがきっかけで、言語研究、とりわけ新しい言語事象についての研究に心をとらわれていきました。
高校時代を振り返ると、勉強や部活をこなしながらも、友達と過ごしたり読書をしたり……と、びっくりするくらい時間があったように思います。だからこそ、いまの高校生の皆さんにも、できるだけ広くアンテナをはり、さまざまなことを吸収してほしいと願います。文系の大学に進学するからと、早い段階で理科や数学を「捨てる」人は少なくありません。保護者の皆さんには、「やってみなはれ」精神で温かく見守っていただきたいところです。大学生や社会人になってから、その経験がきっと、どこかで役に立つ時がくると思います。
学生たちには、恐れず、自身を持って研究に取り組んでほしいと願っています。若い学生の新鮮な目にこそ、見えるものもあると考えているからです。学生が、普段何気なく感じていることや、やっていることの中にこそ、これまでの常識を越えた、何か新しい発見が隠されている可能性があるのです。