図形が苦手で、コンパスを使ったり分度器を使ったりなどができない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4女子(性格:わんぱくなタイプ)のお母さま


質問

算数の図形が、とにかく苦手です。コンパスを使ったり分度器を使ったりがなぜかできません。また、空間で回転したり向きを変えたりするとわからなくなってしまいます。


小泉先生のアドバイス

遊びの中で、体が動作を記憶し、空間把握能力が養われる。

コンパスも最初のうちはなかなか上手に使えないものです。指をうまくねじることができない、描き始めと描き終わりがぴったり合わない、コンパスの脚に触ってしまうなど、悪戦苦闘してしまう子どもも少なくないと思います。あるいは、コンパスを使う時の指の動かし方が、子どもたちの生活の中で少なくなっていることが追い打ちをかけているのかもしれません。

たとえば、コマ回し。ヒモではなく指でクルッと回す動作は、コンパスを使う時の動作そのものです。しかし、最近の子どもたちはコマで遊ぶことは少ないのではないでしょうか。新聞の記事にもありましたが、センサーで水の出る蛇口が増えて蛇口をひねる機会が減ったため、手首をうまくひねることができない子どもがいるそうです。日々の動作を、体が記憶しているのです。いろいろな機械や道具が進歩して便利になるのはよいですが、そのために我々の身体能力が退化していくのは困りものです。

さて、コンパスの話ですが、要はコンパスをクルッと回す動作を体に記憶させればよいのですから、何回も動作をくり返すことです。最初はそれこそコマを回すとか、ボールペンのおしりのほうを親指と人差し指でひねるなどの動作をくり返して慣れさせます。次に、コンパスを使って円を描かせますが、ポイントは下手でも気にしないで何回も描くことです。

また、コンパスの勉強というよりコンパスで遊ぶという感覚が大切です。4年生ですと、コンパスと定規を使って正三角形や二等辺三角形を描く勉強をすると思います。円だけではなく、それらの図形を何回も描いて、その美しさや不思議さを体感するとよいでしょう。これは分度器でも同じです。適当な角度をつくってその角度を測ったり、逆に好きな角度をつくったりして遊んでみましょう。図形が苦手ということは、図形に慣れ親しんでいないことが大きな原因だと思います。

図形に慣れ親しむ大切さは、空間図形でも同じです。空間図形が苦手な子どもは、空間把握能力が普段の生活で養われていないのです。これも、遊びの中で想像する力を養えばよいでしょう。

たとえば、サイコロの展開図を作り、どの目がどこにくるかを想像する(図1)とか、あるいはサイコロを転がして、何回目にはどの数字が上にくるかを予想しましょう(図2)。これらの問題は中学受験でもよく出題されますが、空間把握能力を養うには最適です。もちろん、紙だけで考えるのではなく、実際にサイコロを使って具体的に考えていきましょう。紙だけだと勉強と感じますが、実際にサイコロを使うと遊びのように楽しいと思います。また、展開図もサイコロの目を描き終えたら、ハサミで紙を切ってサイコロの形に戻して確認しましょう。このように道具を使って図形に慣れ親しむことで、体が動作を記憶し、また空間把握能力なども養われていくことと思います。

※サイコロの目の配列には下記のようなきまりがありますから、実際に使うサイコロの目の配列と共に、頭に入れておく必要はあります。

※実際のサイコロと比べてみましょう。

数字「1」の対面の数字は「6」で、数字「2」の対面の数字は「5」、数字「3」の対面の数字は「4」に定まります。

どの数字がどこにくるか考えてみましょう。数字「1」→数字「2」→数字「3」と左回りに数字が配列されています。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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