文章を速く正確に読み取る練習はどうすればいいのでしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

文章を速く正確に読み取る練習はどうすればいいのでしょうか。コミックは好きでよく読んでいるのですが……。小説は横書きの恋愛ものしか読まず、もっと幅広い内容の読書をしてくれればいいのですが、ちょっと残念です。


小泉先生のアドバイス

制約を付けて「集中して読むコツ」を身に付ける。

私の国語の授業で問題文を黙読させても、アっという間に読み終えてしまう生徒と、なかなか読めない生徒がいます。他の生徒の倍の速さで読み終える生徒がいると、「なぜそんなに読むのが速くなったのか」を聞くことにしています。もちろん、読み飛ばしている場合もありますが、しっかり読んでしかも速いお子さまはいます。そのような生徒の答えはさまざまですが、共通点が1つあるように思えます。それは、速く読まなければならない「制約」があったということです。

たとえばある生徒は、寝る前の読書を楽しみにしていたそうですが、夜更かしは禁じられていて、時間になると部屋の電灯を消されてしまったそうです。読書でも“キリのよいところまで読みたい”ということはあります。まして、“主人公の運命は?”といったクライマックスの途中で「ハイ! おやすみ」と電灯を消されてはたまりません。寝るまでにあと5分になると、すごい勢いで文章を読んだそうです。そして、それがクセになり、やがて速く正確に読むという能力を付けたようです。恐らく、「集中して読むコツ」が身に付いたのだと思います。

また、受験勉強が忙しくなり、本を読む時間がなかなかとれなくなってから、急激に読むスピードが速くなったという生徒もいます。6年生にもなるとやるべきことは非常に多くなり、読書をする時間はあまりありません。多くの場合は、勉強と勉強の合間の休み時間に、好きな小説を楽しむことになります。私の国語教室にも、短い休み時間に持参した本を読んでいる生徒がいます。「授業でさんざん文章を読んでいるのに、疲れないのかな?」と思えるのですが、本人は楽しそうに読んでいるのでリラックスできているのでしょう。このように休み時間に読むという「制約」があると、自然と読むスピードが速く、しかも正確になっていくのかもしれません

時間を「制約する」という視点で考えれば、入試問題を読む時に時間を計り、それを少しずつ短くする練習をすることで、読む速さを上げることはできると思います。実際にこの方法で、かなり遅かった読みが他の生徒並みのスピードになった例がいくつもあります。もちろん読み飛ばしはいけませんから、内容をしっかりつかんでいるか、読後は筆者のイイタイコトをお子さまに言わせる必要はあります。なお、これは読みの練習ですから、問題を解かせる必要はありません。内容理解のための選択肢があれば、確認のために解かせる程度はよいと思いますが、ここでの目的はあくまでも文章を速く正確に読むことであることを忘れないようにしましょう。

ところで、お子さまは「小説は横書きの恋愛ものしか読まない」ということですが、これは少々困ります。特に、「横書き」に慣れていると、国語の試験問題の「縦書き」は読みづらいかもしれません。日常的にも、「縦書き」の文章を多く読んで慣れましょう。また、「恋愛もの」でも決して悪いことはありませんが、登場人物の描写が粗いものやストーリーの展開だけで楽しませるような作品はやはり物足りないのでしょう。入試問題に頻出の物語でも、本好きなお子さまが読んで面白いものがきっとあるはずです。たとえば、模擬試験や塾のテキストで出合った問題文の中で、「続きを読みたい」と思えるものはありませんか。もしそのような作品があれば、図書館や書店で出典を見つけて続きを楽しむというのが、読む作品の幅を広げるひとつの方法だと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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