国語の問題文では、恋愛の感情を読み取ることが特に苦手です[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小5男子(性格:感情的・強気なタイプ)のお母さま
質問
登場人物への感情移入が苦手で、特に恋愛の感情は読み取ることができません。そのような感情を問うような設問への回答は悩んでいます。
小泉先生のアドバイス
物語で男の子と女の子が出てきたら、まずは「恋愛感情」を疑う。
恋愛の感情を読み取るのは、特に男の子にとっては難しい場合が多いようです。「そういうことがあるの?」というくらい、別世界のことなのでしょう。もちろん日常的にはクラスの女の子に好意を持つこともあるのでしょうが、物語の世界と現実の世界とはまったく違ったものと考えているのかもしれません。
このような恋愛の感情に弱い男の子に対しては、「物語で男の子と女の子が出てきたら、『恋愛感情』を疑え!」という話をします。男の子がその女の子に冷たいそぶりや、つまらないいたずらをしたとしても、「本当は好きなんじゃないか?」という思いを持ちながら物語を読みなさい、ということです。
もちろん2人の間には恋愛感情がない場合もありますし、そればかりか本当に嫌いであるとか、憎んでいる場合さえあるでしょう。しかし、それは物語を読み進めていけばわかることです。恋愛感情がある場合は、筆者がちゃんとそのように表現してくれます。
たとえば、「いつの間にか彼女を見ている自分に気が付く」、または「授業中にいつもあの子のほうを見ている」主人公は、恥ずかしくなって「むりやり目をそらす」ことになります。あるいは、幼なじみだった彼女が、「近頃急に大人びて近寄りがたくなった」とかそんな彼女が「まぶしかった」などの表現です。さらに、目が合って彼女も赤くなり「つんとそっぽを向く」ことになります。このような表現が出てきたところで、「主人公はその子に好意があるから『いつの間にか彼女を見ている』んだよ」とか、「彼女も恥ずかしいから『赤くなって、そっぽを向く』んだよ」と教えてあげます。男女における恋愛感情を、物語ではそのような書き方で表現するということを実感させるということです。
このようなことを何回か示してあげると、そのような表現に徐々に慣れてきて好きなのかそうではないのかの判断がついてくるようになります。
さて、記述における恋愛感情の表現のしかたですが、子どもたちにはいくつかの種類を示してあげましょう。たとえば、「無関係(好意なし)」「好意がある」「好き」「恋している」「愛している」といったレベル別の感情です。
中学受験の場合は、「恋している」とか「愛している」という強い感情は記述問題でも言い過ぎですから、せいぜい「好き」あるいは「好意がある」が、表現としては適切だと思います。中堅以上の中学校の入試でも、時々、恋愛の感情がみられる物語が出題されます。ほとんどの場合、「恋の予感」レベルの感情ですから、記述問題における登場人物の気持ちを「愛している」とか「恋している」とするのは言い過ぎになります。こういった表現方法も知っておくとよいでしょう。
それからもう一つ。恋愛感情を扱う物語で、よく出てくるのが「嫉妬する心」です。自分が好きな女の子が他の男子と楽しそうに話している光景に接して、主人公の心には「黒いもやもやしたもの」がわいてきます。このような場面があれば必ず問われますから、「2人の仲をうらやむ気持ち」などと教えてあげましょう。あるいは、もう少し難しい言葉である「嫉妬心」という表現もあわせて教えてあげるとよいでしょう。
お子さまに恋愛感情の話をするのが少々恥ずかしい場合は、同性同士で話すのがよいかもしれません。すなわち、男の子の場合はお父さんから話してもらうということです。
また、物語を題材に、知識としてそのような感情を教えるのはどうかと思われることもあるかもしれません。確かに、恋愛感情は頭で考えてもなかなか実感できないでしょう。
しかし、小学生であっても、大なり小なり現実の生活の中でそのような感情は体験していると思います。つまり、かわいい女の子に(あるいはカッコいい男の子に)、ささやかな好意を持つということは日常的にあるということです。しかし、本人はなかなか気が付かないほどささやかな気持ちなので、物語における表現と現実における気持ちを一致させて「そうなんだ」と気付かせるということです。
物語を読む醍醐味(だいごみ)は、自分の体験をそこに重ねることにもあります。恋愛感情の場合も同じで、自分の体験と重ねて、初めてその気持ちを理解することがあってもよいと思います。