第一志望校に進めることになっても…… 高校入学まえの1か月で決まる [高校受験]

 前回とは逆に、お子さまが幸い第一志望校に入学できることになった場合についてです。そうしたかたにはもうアドバイスも必要ないのですが、ひと言だけ付け加えさせてください。

 「C高校に進めてよかったね。D高校になっていたら人生の可能性が縮まっていたでしょう」というようなことを言う保護者のかたが、まれにいます。C高校とD高校の卒業生の進路を比較すれば、そうした意見が出るのは、ある意味当然かと思います。ですが保護者のかたが、「所属先で人生が決まる」というような価値観を持っていると、お子さまにはよくありません。

 新聞やテレビのニュースでは、大卒者の就職事情が極めて厳しいことがしばしば報じられています。そのため、我が子の将来が不安でしかたがない保護者のかたが、増加していることはよくわかります。そうした不安から「安全確実な所属先」探しに保護者のかたが向かっていることが危惧されます。
 本来なら、先行きが不透明だったら、どんな境遇になってもやっていけるように実力を付けておいてやろうという方向に向かうべきでしょう。それが、より安全・確実なところに所属させてやりたいという方向にばかり、保護者のかたの関心が向いてしまっています。「大学はどこなら、どういう学部が大企業の正社員になれる確率が高いか」、そうしたことまでが保護者のかたの会話に上る状況です。
 が、その安全とにらんだ所属先がどうなるかは、新聞やテレビのニュースでおわかりではないでしょうか。大企業といえども、倒産やM&Aの増加などを見れば、絶対安全ではありません。
 所属先で人生が、幸せが、決まるような考え方は捨てたほうがいいし、所属先に依存するような生き方はしないほうがいいと思います。

 今回はたまたまいい所属先に加入できました。ですが今後も常にいい所属先に加入できるとは限りません。そんな時に人生をあきらめてしまってはどうしようもありません。これからの日本で必要なのは、恵まれた環境を求める姿勢ではなく、どんな境遇に陥っても、そこで立ち上がり、自分で将来を切り開いていける力です。保護者のかたが所属先に頼る価値観を持っている限り、お子さま自身も、肉体的にも精神的にもタフになろうとしません。
 少し話が広がりましたが、間違いなくこれからの日本は停滞を避けられないでしょう。だからこそ男子でも女子でもたくましく育てなければなりません。

 今回の結果が第一志望校合格であったからこそ、所属先に頼るのではなく、お子さま自身の「個」の力を付けることを意識していただきたいと思います。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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