「問題に関わる文章の部分のみを読んで解く」という解き方をさせてもよいものか?[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小6男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま
質問
国語のテスト対策で、「先に問題を見て、それに関わる文章の部分のみを読むと速く問題が解ける」と目にしますが、子どものころからそういう解き方をさせてもよいものでしょうか?
小泉先生のアドバイス
問題文の読みの手抜きは、「50%の得点をあきらめる」と同じこと。
「問題に関わる文章の部分のみを読む」ということが可能であれば、確かに問題を解くスピードは速くなると思います。しかし、問題文全体を読まずに、「問題に関わる文章の部分」をどのように探すのでしょうか? 特に説明的文章では、どこに何が書いてあるかがわかれば、記述問題にしても選択肢問題にしても、正しい答えを得ることはそんなに難しいことではありません。文章を読んで、筆者のイイタイコトは何なのか? 文章の構造や展開はどのようになっているのか?を把握するのがまずは難しいのです。
もっとも、「問題に関わる文章の部分のみを読む」という解答方式は、問題文の構造や設問がかなり易しい場合は可能かもしれません。易しい設問の場合は、問われている箇所である傍線部のすぐ近くに答えがある場合が多いからです。しかも、接続語を読むだけで自然に答えがわかってしまうような書き方であればなおさらでしょう。たとえば、「理由を問う問題」であれば、傍線部の前に「~のため」とか「~だから」とあれば、「~」の部分が傍線部の「理由」になりますから、すぐに答えはわかってしまいます。あるいは、物語文で気持ちを問われる問題の時でも、傍線部のすぐ近くに心情表現があったらそんなに難しくはないでしょう。
おそらく、低学年から中学年の国語では、このレベルの問題が出題されている場合が少なくないと思います。しかし、入試ではそんなに安易な問題はあまり出題されることはありません。抜き出し問題でも穴埋め問題でも、問われている箇所からある程度は離れたところに答えがある場合が少なくないのです。また、選択肢問題でも、正解の選択肢はかなり言い換えられていることがありますから、ますますわかりにくいと思います。
さらに、最近の入試問題文は文章の内容が非常に高度になっています。説明的文章では、部分だけを読んでも、何について述べているのかわかりづらいでしょう。また、物語文でも複雑な心情や展開をとらえなければならないような難しい問題であれば、部分読みではとても無理だと思います。
国語では、「問題文がしっかり読めたら50%は得点できたと同じ」という考え方があります。つまり、国語はそれだけ問題文を読んで理解することが大切であり、設問は「読めたかどうか」を確かめるためにあるもの、ということなのです。そのように大切な問題文の読みの手抜きをするということは、はなから「50%の得点をあきらめる」と同じことになりかねません。文章が難しくなればなるほど、この手抜きは得点を悪化させます。問題文を読み飛ばすことなく、しっかりと読むということは国語力をアップさせ、得点力を向上させるための大前提であると考えるべきでしょう。
そして、もし「読むのが遅いので」という理由で「問題に関わる文章の部分のみを読んで解く」方法を考えるのであれば、読みの速度を上げるような練習をしたほうが、合格への道のりは結果的に近くなると思います。