私立高校選びのポイント (1) 私立高校受験への対策と保護者の役割[高校受験]

 今回は、最近の受験校選択の一般的な傾向を見ていて気が付いたことをいくつか取り上げましょう。
 私は仕事上、高校受験の志望者数データを扱っているのですが、志望者の多い学校の共通項を挙げていくと、「高校単独校」「共学校」「進学校」が挙げられます。そこで、まずはこれらについて、志望動機というポジティブな面からではなく、「○○だから志望しない」というネガティブな視点に立って考えてみましょう。

1 中学校が併設されている高校を敬遠
 受験生の心理としては、次のようなことがあるようです。

A. 付設の中学校からの生徒がいる環境にあとから入っていって、人間関係になじめるのか心配
B. 先取りしていると考えられる学習に、ついていけるか不安
C. 先生も内部進学生を大切にしているのではないか
D. 中学からの進学者がいる分、募集定員が少ないので受けにくい


 中学校を併設している高校の先生に話を聞くと、友達関係は1か月もすると、内進生も高入生もグチャグチャになるし、学習についても、高校からの募集をしているからには、カリキュラム上でもキチンと配慮しているので、何ら心配はないということです。もちろん、「内部進学生のほうを大切にしている」などということも一切ないそうです。
 ですから、A~Cについては、安心してよいでしょう。Dの「募集定員が少ないので受けにくい」は確かにそうかもしれません。が、その学校がお子さまにとって望ましい学校であるならば、その他の、募集定員の多い安全校を確保したうえで、挑戦されてはいかがでしょうか。

2 男女別学を敬遠
 公立高校は、北関東などごく一部の県の少数の学校を除いてほとんどが共学校です。公立高校を第一志望としている受験生が併願校を探すと、その流れでどうしても共学校に目が向きます。ですから高校受験では共学校志向が強く出ます。
 しかし、学校を個別に見ていくと、男女別学校は歴史の古い学校が多く、長い歴史の中で培(つちか)われたどっしりした精神的風土、代々受け継がれてきた独特な行事の数々、優れた多くの先輩たち……そうした無形の財産があったりします。
 それに、長い人生の中で3年間を男子だけ、女子だけで過ごすというのも、男女別学の大学に進まない限り、大学でも、社会でも経験できない貴重な時間なのではないでしょうか。

3 付属校を敬遠
 ごくひと握りの超難関校は別として、今、進学校の多くは大学受験を意識して、高校2年くらいからは受験科目に応じた国公立文系・私立文系・国公立理系・私立理系といった具合にコース分けをしています。一方、付属校はこうした文理分けをする必要がありません。すべての科目をオールラウンドに学ぶことになります。
 進学校がどうしても大学に入るための勉強になってしまうのに対し、付属校では大学に入ってから、将来社会に出てから、伸びる本質的な勉強ができる環境になっています。このことは、最近増えている学際的な勉強にも向いていますし、将来どのような進路を選んでもどんな部署にも対応できる、どんな分野にも転職しやすい、ということにもつながります。これは大学受験科目に左右されない大きなメリットです。付属校にはこうした面もあることを知っておいてください。

 ここまで、全体的な「行きたい」志望動向とはあえて逆の、ネガティブな面をお話ししてきました。こうした視点もあることを頭に入れて受験校を選ばれてはどうでしょう。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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