不登校児童生徒が6年ぶり増加 懸念される今後の動向-斎藤剛史-

最近5年間は減少傾向にあった小中学校の不登校が2013(平成25)年度に6年ぶりに増加したことが、文部科学省の14(同26)年度「学校基本調査」(速報)の結果からわかりました。人数的には中学校での不登校の増加が目立ちますが、全児童生徒に占める不登校児の割合では小学校も0.36%と過去最高水準に戻ってしまいました。なぜ不登校が増えたのか、今後の分析とその対策が待たれるところです。

文科省は、「病気」と「経済的理由」以外の原因で「年間30日以上」の長期欠席をした児童生徒を「不登校」と定義しています。2013(平成25)年度中に不登校だった小中学校(中等教育学校前期課程を含む)の児童生徒は11万9,617人(前年度比6,928人増)で、全児童生徒数に占める割合は1.17%(同0.08ポイント増)となっています。小中学生の86人に1人が不登校という計算です。最近の小中学校の不登校の割合は、2007(平成19)年度の1.20%をピークに5年連続で減少していましたが、それが6年ぶりに増加に転じたことになります。
学校段階別に見ると、小学生が2万4,175人(同2,932人増)、全児童に占める割合は0.36%(同0.05ポイント増)で児童276人に1人、中学校が9万5,181人(同3,932人増)、2.69%(同0.12ポイント増)で生徒37人に1人、中等教育学校前期課程が261人(同64人増)、1.60%(同0.39ポイント増)で生徒62人に1人となっています。

小学校と中学校の両方で不登校が増加したこと、特に中学校での増加幅が大きいのが特徴です。中学校では40人学級の場合、クラスに1人は不登校の生徒がいる計算になります。また、小学校は中学校に比べると人数・割合ともに低いものの、少子化により児童の全体数が減少していることもあって、全児童数に占める不登校の割合は、これまで最高だった2000~02(平成12~14)年度の0.36%に並んで過去最高の水準に戻りました。
不登校の増加について教育関係者などの間では、いじめ自殺事件や体罰自殺事件などが相次いだことにより、子どもの安全のため不登校を容認する保護者が増えたことが原因の一つと見る向きもあるようです。これに対して文科省は、「調査は不登校の理由まで聞いていないので、なぜ増えたかはわからない」と困惑しており、今後発表予定で不登校の理由まで調べている「問題行動調査」の結果を持って、詳しい対策を打ち出す方針です。

これまで不登校は何度も社会的問題となっていましたが、ここ5年間は連続して減少していたため、全国的な話題になることは少なくなっていました。しかし、6年ぶりに不登校が増加したことで、再び対策の強化などが求められることになりそうです。
また、中学校での不登校の増加では、小学校から中学校進学時の急激な変化になじめない「中1ギャップ」なども原因の一つと指摘されており、今後、学制改革の一環として検討されている「小中一貫教育学校」(仮称)の創設などの議論に大きな影響を及ぼすことも予想されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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