苦手な算数も興味を持つ教科も伸ばしてやりたい【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学5年生の息子は、小さい時からマイペースで生き物好きでした。学校の勉強の中で特に興味を持つのも理科や図工です。存分にやらせてあげたい気持ちはあるのですが、算数に関しては宿題をやらない、授業中わからなくて固まる、計算をやろうとするだけで涙ポロポロになる……というようになってきました。本人はなんとか避けてとおりたいようですが、中学校に行っても数学は必須です。苦手意識を克服するためにいろいろ試しましたが、親が相手だと甘えが出たり、親も「なんでわからないんだ」と熱くなりすぎたりしたので、塾に10カ月通って3年までの復習ができました。算数が好きにはなっていませんが、計算の間違いやスピードはよくなってきました。勉強の仕方や対応を見直す時期のようにも思うのですが、決断できません。(ひだまり5884 さん)

 

【親野先生のアドバイス】

ひだまり5884さん、拝読いたしました。

「算数・数学ができない」というご相談を、他にもたくさんいただいています。
私が教師だったころにも、クラスの子どもの親たちからよく相談されました。
今回は、そのような悩みを持つ多くの方々にお答えする良い機会だと思います。

数ある教科の中で、親にとって一番気になるのが算数・数学です。
テストの点で真っ先に気になるのも算数・数学ですし、問題集で一番売れるのも算数・数学だと聞いたことがあります。

子どもが学校を休んだ時にも、親が一番気になるのが算数・数学の進度です。
他の勉強はそれほどでなくても、こと算数・数学については、学校で進んだ分をやらないままにしておくのが不安になります。

算数・数学はブロックを積み上げるような知識体系なので、どこかでつまずくとその後の内容がわからなくなる、ということもよく言われます。
算数・数学は、できる・できないがはっきりしてしまう、ということもよく言われます。


ある男の子の親が「勉強ができなくて困る」と言うので、話を聞いたことがあります。

そうしたら、ずっと算数のことを話していました。
その人の頭の中には、「勉強=算数」という図式があるように感じられました。

その子は、国語の授業では登場人物の心情を深く読み取って良い発表をする子でした。

物語の感想文も、他の子には書けないような感性豊かなものでした。
四季の変化に敏感で、秋には紅葉した木の葉を真っ先に持ってきたり、2月に桜の木の蕾(つぼみ)を見つけて大喜びしたりする子でした。

私は、その子のそういう面を高く評価していましたので、親にも話しました。
でも、親は、そういうことにはあまり興味がないような感じでした。
もちろんそういう面があるのは良いことでうれしいんだけど、でも算数ができないのではどうしようもない、といった感じでした。
程度の差はあっても、かなり多くの親がこのような価値観を持っているようです。

それで、算数・数学ができない子は、子ども時代かなり苦しめられることになります。

これは、他の教科の比ではありません。
親が「子どものため」ということで一生懸命になればなるほど、苦しめられます。
親子で算数・数学ノイローゼになって、毎日毎日苦しんでいる人たちがどれだけいるかわかりません。
そのことで親子共々頭の中がいっぱいになり、生活のすべてが灰色になってしまっているのです。

特に、中学受験を控えている子で算数が苦手な場合、本当につらい状況になっていることが多いのです。

親は、その子の他の良い面がまったく見えなくなってしまいます。
そのことが親子共々必要以上に大きくなり、本来はもっともっと楽しいはずの子ども時代が、つらくて重苦しい毎日になってしまいます。
親がたった一つのことにこだわるせいで、子どもは大きな犠牲を払わされるのです。

生まれてまだわずか10年前後、たった一度の子ども時代、本来は明るく伸びやかに過ごすべき日々、それなのに、現実はつらく悲しい鬱々(うつうつ)とした日々。
子どもの払う犠牲は、あまりにも大きいと言わざるを得ません。

でも、親がいくらムキになっても、そんなに簡単にできるようにはならないのです。
子どもに算数を教えていると、親はイライラしてきます。
なぜ、こんなに簡単な問題ができないのか?
ついさっき、教えたばかりじゃないか。
数字がちょっと変わっただけで、同じ問題なのに、なぜできないんだ?

それで、つい口に出して言ってしまいます。
「こんな問題が、なぜできないの?」
「さっきやったばかりでしょ!」
「さっきと同じにやればいいんだよ! わからないの?」
「これは先に単位を揃えるんでしょ! 何度言ったらできるの!」

このような暴言を浴びせられて、子どもは余計に萎縮(いしゅく)してしまいます。
自信もなくなり、算数が嫌いになり、そして勉強全部が嫌いになっていきます。

私も教師時代に、算数のわからない子を教えながら、このような暴言を吐いたことがあります。
でも、ある時、ある女の子を教えながら気が付きました。

この子は一生懸命やっている。
横で先生がイライラしているのも感じながら、それでも一生懸命考えている。
それでも、できないものはできないのだ。
そういう子に対して、どうしてひどい言葉をぶつけることができるだろう?

今その子に向かって「なんでこんな問題ができないんだ」と思っている自分にだって、できないことはいろいろある。
もっと高次のレベルから見たら、自分なんて本当に愚かな存在に過ぎない。
明日の朝から5分早く起きようと思っても、いつまで経っても起きられない自分。
そんな簡単なことすらできるようにならない自分。
そんな自分が、今一生懸命考えているこの子に暴言を浴びせることが、どうしてできるだろう?

この子の日頃の努力が足りないんだと言っても、それは無理な話だ。
本当に苦手でどうしようもないものを、誰がそんなに進んで努力などできるだろう?
そんなに立派な人間がどれだけいるだろう?
苦手なものには努力せよと簡単に言っても、それこそが一番難しいことではないのか?

自分もいろいろ苦手なことがあるけど、大して努力などしていない。
そんな自分が、どうしてこの子を責められるだろう?

前々から、ぼんやりとそう思ってはいたのです。
でも、その時、その子を教えながら、本当にはっきりそう感じました。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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