記述問題で漠然と解答のイメージは持てるが、文章として組み立てることができない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま


質問

選択問題は比較的正解できるのですが、記述問題で、漠然と解答のイメージは持てても、それを文章として組み立てたり的確な言葉を選んだりすることができません。


小泉先生のアドバイス

「傍線部とその前後にも注目」とくり返し唱えながら問題を解くようにする。

 「漠然と解答のイメージは持てる」のだが、「文章として組み立てられない」というのは、お子さまの「大ざっぱ」で「感情的」な性格にも原因があるかと思います。「大ざっぱ」なため、細かいところまでを考えようとせず、しかも直感的に感覚で物事をとらえようとします。もちろんこれがまったくダメというわけではありません。逆に、「神経質」なタイプのお子さまは、細かいところに注目しすぎて、物語の大きな展開や筆者のイイタイコトがつかめない場合が多いようです。国語の問題は「大ざっぱ」でしかも「神経質=繊細」な目で問題文や問いを考える必要があるということです。
このように、お子さまの場合は性格から考えて“精密に読む”ことが不足しているように思われます。精密に文脈を読むとはどういうことか、次の例文で説明しましょう。


□次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

〔千春ちゃんは恵美子やミサトたちにいじめられています。今日の学級会では、二人は生き物が苦手な千春ちゃんをわざと“金魚の飼育係”に推薦しました。〕


気の弱い千春ちゃんは、「いや」とも言えずにうつむいている。
教室の雰囲気は「千春が飼育係で決まり」になりかけている。
少し涙ぐんでいる様子の千春ちゃんを見て、私はのどの奥がヒリヒリするのを感じた。
「飼育係、私やります」
静かな声とともに手をあげた私を、驚いたような顔で千春ちゃんが見る。
エリ子は私の方をちらっと見て、ぷいっと顔をそらした。


 問    線部「私はのどの奥がヒリヒリするのを感じた」には「私」のどういう気持ちが表れていますか。35字以内で説明しなさい。


気持ちを答えさせる問題です。傍線部の「私はのどの奥がヒリヒリするのを感じた」だけに注目すると、「のどの奥がヒリヒリ」するのだから、何か緊張しているように思われます。あるいは、意地悪な恵美子やミサトたちに対する怒りでしょうか。しかし、いずれにしても「根拠」と呼べるものに乏しく、漠然と直感的にとらえた気持ちといわれてもしかたありません。
さて、ここでもう少し細かく、文脈でとらえてみましょう。傍線部の前では、私は涙ぐんでいる千春ちゃんを見ています。そして、傍線部のあとでは千春ちゃんの代わりに自分が飼育係に立候補しています。これらを根拠に考えると、「千春ちゃんがかわいそう⇒助けてあげたい⇒飼育係に立候補」という気持ちの推移がとらえられます。これにより答案をまとめると、「恵美子たちに意地悪されている千春ちゃんを、助けてあげたいという気持ち。」であるとか、「恵美子にいじめられてかわいそうな千春を、助けてあげたいという気持ち。」になるでしょう。

このように「文脈」の流れでとらえることは、読解問題の基本中の基本ではあります。しかし、傍線部にだけ注目してしまう人や、漠然と全体を読んでいる人には意外に難しいようです。最初はつい忘れてしまうかもしれませんから、「傍線部とその前後にも注目」とくり返し唱えながら問題を解くようにしましょう。少しずつ精密に文脈をとらえる読み方ができるようになると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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